第1回 数多くあるテクニカル指標を体系的に解説

資産運用で成功するためには3つのポイントがあります。第一は「運用スタイルの確立」です。これは投資家一人一人が自分の経験を活かしながら、築き上げていくものです。100人いれば100人のスタイルがあっていいのです。イチローのような打撃フォームがあったり、タイガーウッズのようなスイングがあるように、自分の投資スタイルにも独自のフォームがあっていいのです。実は、自分の運用スタイルを持っている投資家の方が投資家として長生きしていると言えます。

一つの理由としては何か迷いが生じた時に考えの拠り所となる柱があるのとないのとでは、その後の投資行動に大きな差が生じてしまうことでしょう。

第二は「リスク管理」です。どのような局面でも起こり得るシナリオの中でどのような対応が考えられるか、その時自分はどのような行動をとればいいのかなどを日頃から意識しておくべきです。

三番目は「メンタル」です。その場その場で右往左往していたのでは一人前の投資家とはいえません。どんな局面でも冷静に対応できるような、強い精神が欲しいものです。

私は1986年から1996年までの11年間、ファンドマネージャーというお金を運用する仕事に従事していました。当時の上司からは「3年間は頑張れ」と励まされ、また「3年もてば“普通”、5年もてば“上手”、10年もてば“神様”」と言われたりもしました。運良く11年間もファンドマネージャーの仕事を続けることが出来たので、神様とまでは言いませんが、自分なりに頑張れたな、と思っています。

では、何故11年間も続けることが出来たのか、と考えると自分の運用スタイルがあったからだと思います。そして、そのスタイルの1つがここで勉強する「テクニカル分析」なのです。

さて、テクニカル分析と一口に言っても、いろいろな種類が存在します。本屋さんに行ったときにでもテクニカル分析の本を開いてみてください。記号、アルファベット、数式いろいろなものが飛び出してきます。ただ、私たちが日頃使っているテクニカル分析はといえばせいぜい30種類ぐらいではないでしょうか。もちろん、全部を覚えなくてはいけないということではありません。その中から自分に合った武器を見つけ出せばいいのです。

とは言うものの、自分に合っているかいないかを判断する前にそもそもそれらのテクニカル分析をどう使えばいいのかがわからなければ、判断のしようもありません。

そこで、ここではそのテクニカル分析から「何がわかるのか」を中心にテクニカル分析の勉強をしていきましょう。

まず初めは、数あるテクニカル分析をいくつかのカテゴリーに分けてみましょう。
分け方ですが、「時系列と非時系列」「トレンド系、オシレーター系」で考えてみます。

時系列とは 分析をする際に時間を分析の要素にいれるモノです。
(グラフの横軸に時間が記入されるものは時系列です)
非時系列とは 分析をする際に時間を分析の要素に入れないモノです。
(グラフの横軸に時間の記入がされません)
トレンド系とは 株価の方向性を分析するモノです。
オシレーター系 価格変動を通じて相場の強弱を分析するモノです。
時系列 非時系列
  • ローソク足(トレンド系)
  • 時系列新値足
  • 移動平均
  • ボリンジャーバンド
  • パラボリック
  • エンベロープ
  • 移動平均乖離率
  • 一目均衡表
  • 新値足
  • カギ足
  • ポイント&フィギュア
  • 逆ウォッチ曲線
  • RSI(オシレーター系)
  • ストキャスティックス
  • サイコロジカルライン
  • MACD
  • RCI
  • DMI
  • モメンタム
  • ROC
  • レシオケータ

大まかに分類すると上記のようになります。

さて今回はこの他にも順張り系、逆張り系に大別して、家系図のように表してみたいと思います。

テクニカル分析家系図

この家系図は分かりやすさを目的に分類したもので、利用する人によっては、若干見方が変わってきます。あくまで、筆者の個人的見解で分けさせてもらいました。

工夫した点といえば、乖離率やエンベロープは順張り系の移動平均から派生したものでしょうが、使い方としては「どれくらい離れたか」→「そろそろ方向が変わるのでは」といった逆張り系の発想で使うケースが多いと考えられるので、移動平均から派生した逆張り系としています。

また、MACDも通常であれば逆張り系なのでしょうが、指数平滑移動平均とその計算の基礎に移動平均がある以上移動平均からの派生ということにしました。

モメンタムはいろいろなテクニカル分析に応用できる考え方で時として逆張り的な発想もできましょうが、順張りに入れておきます。

このようにテクニカル指標はたくさん種類があり、カタカナばかりで難しそうに感じる人も多いと思います。でもこうして関連づけてみると使い方も覚えやすいし、全部使えるようになる必要がないことがわかります。

皆さんの整理に役立てればと思います。

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