債券の基礎知識
1. 債券とは
債券とは、資金を集めたい発行体(国・地方公共団体や企業)がお金を借りるために発行する有証証券です。その見返りとして、満期まで利子を受け取りつづけることができます。
新発債と既発債
債券とは、公共機関(国、地方政府、国際機関など)、銀行、一般事業会社などの債券発行体が、資本市場において投資家から資金を借入れる場合に発行される証券証書です。通常の借入と違って、発行された債券は、内外資本市場において売買されます。新規に発行される債券を新発債、その後資本市場で売買される債券を既発債といいます。
国内債券、外国債券、外貨建債券
日本国内において、国内発行体により、円建てで発行される債券を『国内債券』、それ以外を『外国債券』と言います。債券の中で、外貨建で発行されるものを「外貨建債券」といいます。
債券の基本用語
2. 投資のポイント
内外金利差を享受する(外貨建債券の場合)
円は歴史的な低金利状態が継続しており、外貨建債券に投資することにより内外金利差を享受することができます。
ただし、投資債券の通貨に対し円高となった場合には、円換算による利回りが低下、円利回りを下回ったり、場合によってはマイナス利回りになります。逆に、円安になった場合には、投資債券の外貨利回り以上の円換算利回りを享受できます。
各国の10年国債利回り(2015年7月23日現在)
BRICS諸国など新興国の通貨では、上記先進国通貨よりも一層高い利回りを享受することができますが、為替変動性(リスク)も一般的に先進国通貨に比べ高くなりますので、余裕をもった資金で投資を行うなど留意が必要です。
各国の最新の金利情報は、債券のお取引画面の右側にチャートとともに表示しております。
なお、当社の外国債券のお取引ページでは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のストラテジストやアナリストが作成する最新のマクロ経済動向に関するレポートを口座開設済のお客さまに無料で配信しております。
長短金利差を享受する
同じ通貨、同じ発行体の場合、債券の満期が長くなるほど、通常利回りは高くなります(短期政策金利が高く、今後継続的に下がり続けると想定される場合など稀なケースでは満期が長い債券ほど利回りが低くなることもあります)。
同じ外貨投資商品でも、外貨預金の利子、外貨建MMFの分配金、FX証拠金取引のスワップポイントは、全て市中短期金利に連動しますので、同じ通貨であれば通常、中長期の債券の方が最終満期まで保有した場合の利回りは高くなります。
信用利回り格差を享受する
債券の利回りは発行体の信用リスクによっても変わります。同じ通貨建て債券の場合、一般的には、Moody'sやS&Pなどによる格付の高い(信用力が高い)発行体による債券の利回りは、格付の低い(信用力の低い)発行体の債券利回りよりも低くなります。
先進国の債券の場合、一般的には国債利回りが最も低く、比較的高い格付の発行体であっても国債より高い利回りを享受することができます。ただし、相対的に利回りの高い低格付の債券ほどデフォルトリスク(元利金の支払が遅延したり減額されたりするリスク)も高まりますので留意が必要です。
なお、高格付の先進国企業や国際機関などが、低格付の新興国の通貨建で債券を発行する場合、当該新興国の国債よりも利回りが低くなることが一般的です。
為替差益を享受する(外貨建債券の場合)
外貨建債券購入時より売却/償還時の為替レートが円安になれば円換算での利回りは一層高くなります。逆に円高になった場合には円換算利回りは低下、大きな円高の場合にはマイナス利回りとなることもあります。金利が高い通貨、銘柄ほど、また保有期間が長いほど、マイナス利回りとなる為替水準は低く(円高)なります。
auカブコムの外貨建債券は、クーポン受取り、償還金ともに、円貨での受取りのほかに外貨または外貨建MMF(一部通貨を除く)での受取りができます(通貨、銘柄によっては円貨受取のみの場合があります)ので、円高時には外貨のままプールし、為替レートの変動を待ち後から円に交換することや、同じ外貨の債券に外貨のまま再投資することも可能です。
たとえば、以下の表にて示す通り、クーポン4.20%の豪ドル建債券を3年間保有した場合、為替レートが1豪ドル=100円の円安であれば、12.5%の利回りとなりますが、為替レートが1豪ドル=60円の円高となった場合、-5.8%(マイナス利回り)となります。このような場合、受渡方法を外貨または外貨建MMFでの受取をお選びいただくことで為替差損を確定せず、円に交換するタイミングを検討する余裕を持つことができます。(受渡方法は、外貨建債券の購入後においても利払時点、償還時点までのタイミングでいつでも選択することが可能です。)
(例)クーポン4.20%/年の豪ドル建債券を、単価100%、為替レート80円で購入した場合の円換算年率利回り※
上表の計算は下記を前提にしています。
- ※クーポン収入は税引後(20%源泉徴収後の税引き)、再運用利回りは加味せず
- ※保有期間終了時の売却/償還価格は100%
- ※想定為替レートは、クーポン利払い、売却/償還時の両方に適用
債券価格差益を享受する
債券の利回り/価格は、保有期間中の市中金利や発行体信用リスクの動向によって変動します。従い、購入時より利回りが低下(価格が上昇)した場合には、中途売却により債券売却益を享受することができます。利付債の場合、債券売却益は非課税となります(償還益の場合には総合課税/雑所得)ので税務上も有利となります。ただし、債券には売値と買値との間にはスプレッド(価格差)がありますので、ご留意ください。
満期5年、クーポン2%を利回り2%で購入、3年目に価格上昇により中途売却
3年目の途中、価格が上昇(利回りが低下)したため売却(売却価格102)。価格差益(利付債の場合は非課税)を含む売却代金と経過利子を受け取ります。(経過利子については、下記、「債券の経過利子」をご参照下さい。)
利払と売却益の合計が投資元本に対し年率何%になるかを示す所有期間利回りは下記の計算となります。
年あたりクーポン2%+(売却価格102円-購入価格100円)/所有期間2.x年}/購入価格100円×100≒3%
なお、同様の例で売却価格が98円となったケースでは、
年あたりクーポン2%+(売却価格98円-購入価格100円)/所有期間2.x年}/購入価格100円×100≒0.5%
となり所有期間利回りが低下いたしました。
3. 利回りと経過利子
債券の利回り(単利ベース・税引き前)
下記の具体的な利回り計算例は、クーポン利払金の再投資効果を加味しない「単利」ベースとなります。
債券の利回り(年率)はクーポンと売買価格により計算されます。
債券の償還価格は通常100%ですので、一般的な利付債券の新規発行時のように売買価格が100%の場合、償還差損益が発生しないため、年あたりクーポン=利回り(年率)となります。
一方、売買価格が100%未満(アンダーパー)の場合には、満期償還時に償還差益が発生するため、その年率分、利回り(年率)は上昇します。逆に、売買価格が100%超(オーバーパー)の場合には、償還差損が発生するので利回り(年率)は低下することになります。
既発市場(セカンダリーマーケット)で売買される債券の利回りは、市中金利や発行体の信用力などによって変動します。利回りが変化すると債券売買価格も変化します。
一般的な債券の場合、クーポンと償還価格は一定のため、利回りが上がる(下がる)と売買価格は下がり(上がり)ます。
債券価格は期間が長いほど価格の変動率(リスク)は高くなります。
下記のように、クーポンが同じ2%の債券が利回り5%の場合、満期5年の債券の価格の方が満期2年よりも大きく価格が低下します(利回りが低下する場合には、満期の長い債券の方が価格の上昇幅は大きくなります)。
債券シミュレーター
「債券シミュレーター」は、保有期間や償還・中途売却時の想定為替水準に応じた投資パフォーマンスのシミュレートができるだけでなく、損益分岐点となる為替レートの水準の確認や同一通貨の外貨建MMFとの利回り比較が簡単に可能となっており、外国債券投資を検討されるお客さまの投資判断をサポートいたします。
債券シミュレーターのポイント
- auカブコム証券に口座があればどなたでも無料でご利用可能
- 売却日を任意に指定し、損益分岐点為替レートや為替水準ごとの損益がシミュレーション可能
- マウスオンにより同一通貨の外貨建MMFとの収支比較が一目でわかり外貨運用における比較検討が可能
- シミュレーション項目
- 損益分岐点為替レート(外国債券、外貨建MMF)、円ベースでの損益金額、損益率、利金、分配金、約定金額、経過利子、受渡金額、元利金合計(償還時、中途売却時)
シミュレーション例
国際復興開発銀行(2020年/11満期)豪ドル建債券を満期まで保有・償還された場合の収支シミュレーション
債券の経過利子
既発債を売買する際、受渡日がクーポン利払日と異なる場合には、債券価額(額面x価格)に加え、買い手は前回利払い日から受渡日までの日数(経過日数)について、日割計算(片端)した利息相当分を売り手に支払います。これを経過利子または経過利息と言います。既発債の受渡金額は、「債券価額+経過利子」となります。
経過利子の計算方法には発行する市場等により計算方法が異なります。基本的な計算方法例は下表のとおりです。
発行市場 | 経過利子の計算方法 |
---|---|
ユーロ債※ | 経過利子=額面×クーポン年利率×[経過日数(1ヶ月を30日で計算)/360] |
米国債 | 経過利子=額面×クーポン年利率×[経過日数(実日数)/基準日数(前回利払日から次回利払日までの実日数)の2倍] |
独国債 | 経過利子=額面×クーポン年利率×[経過日数(実日数)/365] |
豪州国債 | 経過利子=額面×クーポン年利率×1/2×[経過日数(実日数)/基準日数(前回利払日から次回利払日までの実日数)] |
日本国内債 | 経過利子=額面×クーポン年利率×[経過日数(実日数)/365]
|
- ※ユーロ債とは、特定の国を発行地としない国際資本市場で発行される債券
経過利子の計算例
- ユーロ債(年利率2.5%)を前回利払い日から90日経過後に単価100%で1万ユーロ購入した場合
- 経過利子は、以下の計算により求められ、買い手側の支払いとなります。
€1000×2.5%×90÷360×10単位≒€62
個人のお客様がユーロ債を含む外国債券をお取引する場合、経過利子は非課税計算となります。実際のクーポン利払額は20%(平成25年~令和19年は所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が加算され、20.315%)の源泉徴収課税後となりますので、次回利払日に近い日にお買付をしますと、買付日に支払った経過利子額が次回クーポン受取額(税引後)よりも大きくなることがありますのでご留意ください。
4. 債券の税金
平成27年まで | 平成28年から | ||||
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債券の種類 | クーポン(利金) | 償還差益 | 中途売却益 | クーポン(利金) 償還差益 中途売却益 |
|
利付債 | 20.315%源泉分離課税(差額徴収方式※2) | 雑所得として総合課税 | 非課税 | ![]() |
20.315%申告分離課税 |
低クーポン債※1 | 20.315%源泉分離課税(差額徴収方式※2) | 雑所得として総合課税 | 譲渡所得として総合課税 | ||
ゼロクーポン債 | - | 雑所得として総合課税 | 譲渡所得として総合課税 |
平成27年まで | 平成28年から | |
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特定口座への組み入れ | × 不可 | ○ 可 |
上場株式等、株式投資信託、公社債投資信託との損益通算 | × 不可 | ○ 可 |
損失の翌年以降3年間の繰越 | × 不可 | ○ 可 |
- ※1低クーポン債とは、「著しく低いクーポン」により100%未満の割引価格で発行された債券を言います。「著しく低いクーポン」とは、債券の発行時期と償還期限の区分に応じて下表に定めるクーポン年利率を下回るものとなります。
- ※2差額徴収方式とは、国外で源泉徴収されている外国所得税額がある場合には、その外国所得税額と国内源泉徴収税額(所得税・住民税)とを合わせて20.315%となるように、国内の源泉徴収税額が調整される方式をいいます。
償還期限 | クーポン年利率 |
---|---|
15年以上 | 0.5% |
10年以上15年未満 | 0.4% |
8年以上10年未満 | 0.3% |
7年以上8年未満 | 0.2% |
7年未満 | 0.1% |
償還期限 | クーポン年利率 |
---|---|
7年以上 | 0.5% |
6年以上7年未満 | 0.4% |
5年以上6年未満 | 0.2% |
5年未満 | 0.1% |
5. 割引債の償還時源泉徴収
外国債券が償還した際の償還差益は「譲渡所得」として申告分離課税(20.315%)となります。
償還差損益は上場株式等の譲渡損益や配当等との損益通算が可能です。
一般口座で保有の割引債が償還した場合、源泉徴収が実施されます
一般口座で管理される割引債が償還を迎える場合、償還金にみなし割引率を乗じて計算された「みなし償還差益」に対して、20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収されます。
特定口座 | 一般口座 | ||
---|---|---|---|
源泉徴収あり | 源泉徴収なし | ||
償還差損益 (譲渡所得) |
償還金額 - 取得価額 (自動的に計算される) |
償還金額 - 取得価額 (自分で計算する) |
|
償還時源泉徴収 | 特定口座で計算された償還差益に対して源泉徴収 (所得税15.315%・住民税5%) |
されない | みなし償還差益※に対して源泉徴収 (所得税15.315%・住民税5%) |
確定申告 | 不要(申告も可) | 原則必要 | 原則必要 確定申告時に実際の償還差損益を申告して精算可能 |
確定申告時の税率 | 申告分離課税(所得税15.315%・住民税5%) | ||
交付書類 | 年間取引報告書 | 支払通知書 |
※みなし償還差益
発行から償還までの期限が1年以内 : 償還金額×0.2%
発行から償還までの期限が1年超 : 償還金額×25%