投資情報室

旬なテーマを深堀り♪「増配」から読み取る自信、高パフォーマンスを上げる日本版配当貴族指数

2017年2月9日(木)
投資情報室 藤井明代

増配は業績への自信、株価への影響も鮮明

 3月決算期企業の第3四半期決算発表が相次ぐ中、期末配当の増額を発表する銘柄が目立っています。第3四半期の時点で増配を発表する背景には、3月期末へ向けた業績への自信を投資家にアピールする意思表示と捉えることができます。企業側のこのような動きに投資家の反応も敏感になっています。前日(2月8日)引け後に業績と併せて配当の上方修正を発表した三井住友建設(1821/1部)や遠藤製作所(7841/JQS)が指数に逆行高したほか、増配を発表した朝日放送(9405/1部)、九州リースサービス(8596/2部)なども買い進まれました。日米首脳会談を控えてマーケット全体に様子見ムードが高まる中、好業績かつ株主還元に積極的な企業への資金流入が鮮明になっています。

米国版に続き、日本版配当貴族指数もパフォーマンス良好

 増配に焦点を当てると、特に連続で増配を続ける企業において良好なパフォーマンスは顕著に表れています。2015年10月のレポート「連続増配が新たなスマートベータに!配当貴族指数に注目」で取り上げた日本版配当貴族指数について、算出後の推移を日経平均と比較してみます。

【図1:日本版配当貴族指数(S&P/JPX 配当貴族指数)と日経平均の比較】

図1:日本版配当貴族指数(S&P/JPX 配当貴族指数)と日経平均の比較

  • Bloombergデータを基に作成
  • 2015年12月21日を100とした相対チャート
  • 2017年2月7日までのデータを表示

 図1は日本版配当貴族指数(S&P/JPX 配当貴族指数)の算出開始日である2015年12月21日を100として日経平均株価と比較した相対チャートです。2017年2月7日までの推移では、日本版配当貴族指数が105.23と上昇しているのに対し、日経平均株価は99.97とほぼ変わらずの水準です。また、算出開始後から現在に至るまでのパフォーマンス差も歴然で、日本版配当貴族がほとんどの期間で日経平均の上回る推移を続けています。
 日本版配当貴族指数はTOPIXの中で10年以上にわたり毎年増配をしているか、または安定して配当を維持する銘柄を対象とする指数です。長期に渡り増配を続ける企業からは、強固な財務基盤、安定した業績、積極的な株主還元姿勢のほか、投資家に対する経営者の意志を感じ取ることができます。投資家もそれに応えるように、株価に良好なパフォーマンスが反映されていると考えられます。
 では実際にどのような企業が配当貴族指数の対象銘柄となっているのか、指数組み入れ上位10銘柄をご紹介いたします。加えて、10期以上連続増配実績がある銘柄についてもご参考に紹介していきます。

S&P/JPX 配当貴族指数 ウエイト上位10銘柄
コード 銘柄名 市場 業種 予想配当
利回り(%)
PER(倍) PBR(倍) 時価総額
(百万円)
8308 りそなホールディングス 1部 銀行業 3.16 8.5 0.85 1,395,633
8377 ほくほくフィナンシャルグループ 1部 銀行業 2.08 10.6 0.51 268,820
8697 日本取引所グループ 1部 その他金融業 2.57 23.1 3.49 894,983
8136 サンリオ 1部 卸売業 3.51 24.1 4.00 202,980
6412 平和 1部 機械 2.96 8.8 1.27 269,385
8593 三菱UFJリース 1部 その他金融業 2.15 10.0 0.84 518,688
8078 阪和興業 1部 卸売業 2.32 12.1 1.01 164,039
4272 日本化薬 1部 化学 1.64 21.0 1.37 277,405
8331 千葉銀行 1部 銀行業 1.90 12.0 0.70 688,160
4739 伊藤忠テクノソリューションズ 1部 情報・通信業 2.34 18.9 2.06 384,000
  • 出典:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス
  • 株価データはQUICKより、2017年2月8日現在
  • PER・PBRは連結優先
10期以上連続増配実績企業
コード 銘柄名 市場 業種 予想配当
利回り(%)
PER(倍) PBR(倍) 時価総額
(百万円)
2449 プラップジャパン JQS サービス業 2.97 10.9 1.36 5,189
4452 花王 1部 化学 1.85 20.7 4.21 2,932,776
4521 科研製薬 1部 医薬品 2.72 10.8 2.27 266,903
4544 みらかホールディングス 1部 サービス業 2.20 98.0 1.95 295,499
4668 明光ネットワークジャパン 1部 サービス業 3.26 21.5 2.49 34,032
5947 リンナイ 1部 金属製品 0.94 22.1 1.79 473,603
6269 三井海洋開発 1部 機械 2.01 4.9 1.18 104,806
6370 栗田工業 1部 機械 1.85 25.9 1.39 320,434
7466 SPK 1部 卸売業 2.57 10.5 0.86 12,769
7504 高速 1部 卸売業 2.47 9.5 0.90 22,841
8028 ユニー・ファミリーマートホールディングス 1部 小売業 1.54 41.9 1.78 919,931
8227 しまむら 1部 小売業 1.36 17.2 1.62 530,075
8424 芙蓉総合リース 1部 その他金融業 2.33 7.9 0.71 155,376
8425 興銀リース 1部 その他金融業 2.52 8.7 0.80 104,789
8439 東京センチュリー 1部 その他金融業 2.55 9.2 1.19 396,110
8566 リコーリース 1部 その他金融業 1.75 9.2 0.69 106,539
8876 リログループ 1部 サービス業 1.01 30.6 7.11 257,111
8976 大和証券オフィス投資法人 投資証券 REIT その他 3.51 28.4 1.18 302,704
9058 トランコム 1部 倉庫運輸関連 1.43 12.3 1.97 56,060
  • QUICKデータより、銘柄コード順
  • 2017年2月8日現在

 上記連続増配企業の内、2月2日に花王(4452)が16年12月期の決算発表で27期連連続増配を発表しました。そして17年12月期の配当についても増配予想とし、28期連続増配となる計画としました。28期連続増配は上場企業で最長となり、花王のこだわりを持った高レベルの還元は外部機関からも高い評価を受けています。今回の決算発表の内容はマーケットでも話題となったことから、今後はこうした積極的な還元姿勢がほかの銘柄へも波及する動きが見られそうです。
 昨年の8月には日本版配当貴族指数をカバーする投資信託が設定され、また12月には同指数のETNが上場しています(コード:2065)。投資先の選択肢も広がっており、連続増配を意識する投資家も徐々に拡大する動きがみられそうです。



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藤井明代

藤井明代

auカブコム証券 投資情報室 投資アナリスト

東京都出身。大手ネット金融グループを経て、2013年10月よりauカブコム証券。
売買手法や相場解説などを初心者の方にも分かりやすく解説することに定評あり。株主優待にも詳しく、マルチスキルを持つメンバーとして人気上昇中。

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