当社ストラテジスト河合達憲による市況解説!
『特殊月の3月と新年度入りの4月相場をどう読む?』
~日経平均2万円の攻防はどこで起こるか!?~
読みづらい3月期末相場
3月は日本特有の決算月であり、全上場企業4,086社のうち約6割にあたる2,411社が3月期決算である。ちなみに12月期が442社で約11%、次いで2月期が212社で約5%、9月期170社、6月期135社と続く。
よって、全上場企業の約6割が期末月という特殊な3月と新年度にあたる4月。それらの期間を予測するにあたって、まず念頭におきたいことは、3月という日本特有の期末月が非常に読みづらいということだ。
結論は、3月末にかけて、マイナス要因とプラス要因の差し引きによって、日経平均2万円台を維持するかどうかがポイントである。また、4月は下旬からの決算発表を睨んでマーケットは慎重になり易いということを見通しておく必要があるだろう。
マイナス要因とプラス要因を整理しておくと、まず、マイナス要因としては3月特有の要因であるレパトリ(日本企業の海外からの本国送金)によって円買い需要が起こり「円高リスク」が控えているため、3月中旬辺りから下旬まで円高リスクは介在するだろう。
また、米中貿易協議もクライマックスを迎え、昨12月の関税引き上げ期限90日間の期日が3月1日であったが、それをさらに30日猶予を与える期限が3月下旬に到来する。これは正義のカウボーイ風のウエスタン劇によくあるケース。「90日の期日を与えそれを待ち、さらに30日猶予を与え、ここまで我々は我慢した。最後に正義のガンを撃ちっぱなすゾ」というヤツだ。米中首脳会談はまだ模索ながら3月下旬の調整を探っている。この米中協議の再猶予の期限と米中首脳会談が3月下旬というのも、なんとも不気味に符号の合う日程ではないか。3月下旬にかけての米中協議のもつれは即座に米国株安や債券買い→金利急落→ドル安・円高という構図が連想される。
米長期金利については、3月8日の米雇用統計を経て、19・20日がFOMCだ。現状では、金融政策は据え置きが観測されているが、利上げが見送られたことで、マーケットは米景気の停滞懸念が起こる可能性がある。よって、FOMC後の3月下旬は米国株の乱れに要注意だ。
需給面では3月8日のメジャーSQはまず最大の難関であろう。先物の限月交代は難しく考える必要はない。期近物の3月物から期先物の6月物に限月交代が起こる際に、先高感があれば期近物(3月物)から期先物(6月物)にスムーズに乗り換え(ロールオーバー)が進み、先安感があれば期近物を売却してキャッシュポジションか債券に資金を移すだけだ。つまり、先安感があれば買建てのポジションが解消され大きな売りが出ることで市場が調整に入るということになる。その需給を先読みした売買が最終売買日(木曜)の前日である水曜に出易いので「魔の水曜日」などと呼ばれる所以となる。加えて、決済が終わった翌週の水曜日も同様に新たなポジションの構築が起こり易く、「メジャーSQの揺り戻し」などと呼ばれる。つまり、メジャーSQの前後の水曜日は要注意ということを覚えておけば良いだろう。
次にプラス要因も検討しておきたい。3月期末月は国内機関投資家にとっては度の〆の月だ。ファンドマネージャーは昨年10月からの調整におよび腰となり、1月の反発には乗れなかったことで、下期のパフォーマンスは吐き出しとなっているケースが散見される。となると、3月の前半は最後の一稼ぎを狙いたいところだろう。特に、インデックス系のファンドはさておき、アクティブ系は期末にかけて一勝負はかけたいのではないか。つまり、3月前半は買い意欲が高まり、後半は売却という時間軸ではないだろうか。さらに、個人では配当狙いの買いが中旬辺りから始まるだろう。最後に、月末にかけては日本独特のドレッシング買いにより、日経平均の基準値を上げておきたいという買い意欲が高まるのは例年通りだ。
こうみると、プラス要因よりもマイナス要因のほうが多いように見受けられる。それが日経平均2万円の攻防という解に至った背景である。
新年度入りの4月相場は?
最後に、4月新年度入りは、いよいよ翌月5月に新元号を控え、なにかと新年ムードだ。しかし、注意すべきは4月下旬からの決算発表であり、2019年度の企業業績はかなり見通しが暗いことが事前から想定される。2018年度が3期ぶりの減益での着地だったことは現段階から予想できる。そうそうに新年ムードでご祝儀買いなどと浮かれた新年度ではないだろう。つまり、4月は下値への懸念を持つ必要があるということだ。
特に、注意しておかねばならないことは、先の2月15日に終了した第3Q算(3月期決算企業)において、通期経常利益見通しの上方修正と下方修正、そして据え置きの割合を記憶に留めておいてほしい。決算を終了した2,617社(2月・3月期決算企業の合計)のうち、上方修正は534社(占有率20%)・下方修正629社(同24%)・据え置き1,454社(同56%)である。下方修正が上方修正を上回ったことは、第3Q決算がかつてないほどに業績悪化を示したことが顕著であるが、それだけではない。通期見通しを据え置いた1,454社の進捗率のウエイトにまで深く掘り下げると、4月下旬からスタートする期初段階での決算発表がいかに悪化した数字がでるかを「先読み」することができる。
据え置き企業1,454社の進捗率のウエイトは、進捗75%以上が649社と全体(2,617社)のうち25%、進捗75%未満が805社と同31%だ。これが重要な先読みポイントである。第3Q 4月~12月までの9ヵ月の決算、つまり一期の全体の75%の終了時点で、業績進捗率が未達ということは、期末の着地においてさらなる下方修正となる可能性が高い。その予備軍が全体の3割強に達しているということだ。第3Qおいて先んじて下方修正を発表した24%の企業と、期末の着地において下方修正する予備軍を合わせると、なんと55%の企業が下方修正したことになる。
ことの重大さは、この業績悪化がまだ株価に織り込まれていない可能性が充分にあるということだ。
但し、投資戦略においては、この新年度の決算発表の業績が慎重であった場合は、完全逆張りのスタンスを推奨する。
なぜなら、下方修正が全体の約55%に達するという大幅な業績悪化はあくまでも2018年度決算のことだ。新しい2019年度決算は、その延長線上で慎重な業績予想となった場合は、前年度2018年度の業績のハードルは低下しており、期初段階で慎重な見通しを報じたとしても、逆に前期のハードルが下がっていることから、四半期を追うごとに上方修正していく可能性が期待できるからだ。よって「完全逆張り」というストラテジーが重要な意味合いをもつことになりえるのではないか。
(執筆・文責 河合達憲 拝)
株価 | 経常利益伸び率[%] | ||||||||||||
[市場] | [決算] | [3/12] | (今期予) | (伸び率) | (期初予) | (修正率) | (3Q累計) | (進捗率) | (期初予) | (修正率) | |||
1 | 2395 | 新日本科学 | 東証1 | 3月期 | 803 | 489 | 160.1% | -700 | 黒転 | 1,015 | 207.6% | 923 | 149.5% |
2 | 6549 | DMソリュ | 東証6 | 3月期 | 1,390 | 298 | 78.4% | 150 | 98.7% | 245 | 82.2% | 250 | 53.4% |
3 | 5480 | 冶金工 | 東証1 | 3月期 | 249 | 8,300 | 145.1% | 6,800 | 22.1% | 6,594 | 79.4% | 11,800 | 38.8% |
4 | 3923 | ラクス | 東証3 | 3月期 | 1,931 | 1,472 | 18.0% | 1,376 | 7.0% | 1,242 | 84.4% | 1,880 | 29.7% |
5 | 7554 | 幸楽苑HD | 東証1 | 3月期 | 2,587 | 1,498 | 1414.0% | 585 | 156.1% | 1,498 | 100.0% | 2,345 | 27.1% |
6 | 6788 | 日本トリム | 東証1 | 3月期 | 5,990 | 2,345 | 39.5% | 2,030 | 15.5% | 1,804 | 76.9% | 3,000 | 26.3% |
7 | 3254 | プレサンス | 東証1 | 3月期 | 1,384 | 26,248 | 32.2% | 23,661 | 10.9% | 26,447 | 100.8% | 32,108 | 25.9% |
8 | 6930 | 日本アンテナ | 東証6 | 3月期 | 1,515 | 650 | 319.4% | 270 | 140.7% | 511 | 78.6% | 1,000 | 25.0% |
9 | 9828 | 元気寿司 | 東証1 | 3月期 | 4,380 | 2,590 | 48.4% | 1,800 | 43.9% | 1,996 | 77.1% | 3,530 | 24.7% |
10 | 3550 | ATAO | 東証3 | 2月期 | 2,106 | 690 | 24.8% | 600 | 15.0% | 686 | 99.4% | 890 | 23.6% |
11 | 6976 | 太陽誘電 | 東証1 | 3月期 | 2,179 | 30,000 | 46.0% | 20,000 | 50.0% | 26,789 | 89.3% | 36,562 | 23.4% |
12 | 6626 | SEMTEC | 東証6 | 3月期 | 5,070 | 1,480 | 65.0% | 1,140 | 29.8% | 1,359 | 91.8% | 1,850 | 23.3% |
13 | 2004 | 昭和産 | 東証1 | 3月期 | 2,996 | 9,100 | 17.6% | 8,500 | 7.1% | 8,511 | 93.5% | 11,500 | 22.3% |
14 | 7752 | リコー | 東証1 | 3月期 | 1,157 | 82,000 | 166.0% | 77,000 | 6.5% | 76,897 | 93.8% | 107,964 | 19.0% |
15 | 6981 | 村田製 | 東証1 | 3月期 | 17,185 | 280,000 | 66.9% | 242,000 | 15.7% | 222,462 | 79.5% | 330,441 | 18.6% |
(注)母集団:全上場4081社、うち2月・3月期決算予想対象。【抽出条件】18年12月1日~19年2月15日発表2617社。3Q決算において、上方修正534社、うち今期増益予想399社。うち第3Q進捗率75%以上285社、来期経常増益予想119社。来期経常増益率ランキング。経常利益今期予想は日経予想ベース、来期予想はQC予想ベース。株価3月12日現在。(カブドットコム証券 作成)