市場の関心は「好業績銘柄」に! HOTな銘柄、COOLな銘柄 市場の関心は「好業績銘柄」に! HOTな銘柄、COOLな銘柄

市場の関心は「好業績銘柄」に! HOTな銘柄、COOLな銘柄

株式アナリストの鈴木一之です。
2022年11月の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」をお届けします。

11月相場で日経平均は月間の騰落率が+1.38%と続伸しました。終値ベースでは2か月連続での上昇となりましたが、上昇率は10月相場の+6.36%と比べて大きく低下しています。

TOPIXの上昇率は日経平均を上回って+2.90%に達しました。それでも10月相場の+5.12%の上昇率よりも鈍化しています。東証マザーズ指数は10月の+7.19%の上昇に続いて、11月相場も+6.44%と堅調でした。

2022年12月 全体相場 日経平均 TOPIX 東証マザーズ

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米国市場はNYダウ工業株が10月の+13.95%に続いて、11月も+5.67%と堅調でした。米国では9月にNYダウが▲8.84%も値下がりし、2010年以降では月間で3番目に大きな下げを記録した反動高が続いています。NASDAQは10月の+3.90%から、11月は+6.44%と上昇幅が拡大しています。

11月10日(木)に10月の米国・消費者物価指数が発表され、前年比+7.7%の上昇となりました。市場が事前に予想していた+7.9%を下回っています。

1か月前の10月13日(木)にも9月の米・消費者物価指数が+8.2%と発表され、市場の予想(+8.1%)をわずかに上回ったものの、株価はここから底入れ反転に向かうという経緯がありました。

2か月続けてマーケットは物価統計にポジティブな反応を示したうえ、NYダウ工業株は11月10日の1日だけで+1201ドルも上昇し、今年最大の上げ幅を記録するに至りました。テクノロジー株から大型の景気敏感株まで広範囲に上昇しましたが、中でもテクノロジー企業の株価上昇が目を引きました。

半導体のエヌビディア、AMDがこの日だけで+14%もの上昇を遂げ、アマゾン・ドットコムも+12%の上昇となりました。マイクロソフト、インテルが+8%、アップルも+7%の上昇と、主だったテクノロジー企業が軒並み大幅高を記録しています。

インフレのピークアウト観測、長期金利の低下に敏感に反応するのはやはりテクノロジー企業を中心とした成長株です。そのことが改めて強く認識させられたのが11月相場の大きな特徴です。

FRBのパウエル議長は8月末に行われたジャクソンホールでの講演で、インフレを鎮静化させるまでは政策金利の引き上げを続けると明言しています。それであれば物価は安定しますが、景気の後退は避けられません。FRB首脳がその点にはっきりと言及して以来、米国と世界はリセッション入りを懸念し続けてきました。

その後、旧フェイスブックのメタが1万人規模の人員削減を計画していることが伝わり、年末商戦を控えるアマゾンも数か月間の採用凍結を明らかにしています。イーロン・マスク氏は買収したばかりのツイッター社員の半数をレイオフすると宣言しています。

景気後退と物価抑制のどちらを選択するべきかと問われて、FRBおよびマーケットは明確に物価の抑制を選んだことが明確になりました。11月相場の特徴はインフレが鎮静化しつつあり、景気の大幅な後退も避けられるという安堵感が前面に出たという点に集約されると見られます。

11月8日(火)に米国の中間選挙の投票が行われ、バイデン大統領率いる民主党が予想を覆す善戦を演じました。

選挙前の大方の見通しは民主党の苦戦となっていましたが、全米規模で多くの無党派層が投票に出向き、民主党に票を投じたと見られます。環境意識や人権意識の高い20~30代の若い世代が民主党を支持していることが明らかとなり、実質的に選挙戦を仕切ったトランプ前大統領の求心力は急速に低下することとなりました。

中間選挙の投票前までは、「共和党が優勢であれば、株式は買い」と見られていました。それが予想されたほど共和党の優位が盤石でないことが判明し、2年後の大統領選挙の見通しはますます混沌としてきた模様です。

その中間選挙の直後、11月14日(月)にはインドネシアで開催された「G20」の場で、米中首脳会談と日韓首脳会談が一度に開催されました。どちらもコロナ禍をはさんで3年ぶりのことです。

この3年間は各国とも首脳クラスでさえ海外渡航が止められていた時期です。首脳会談が実施されないのは仕方ないとして、米国の中間選挙の直後、中国でも共産党大会の終了直後に、米中首脳会談が実施された点は大きなサプライズです。

日本と韓国の首脳会談も同様です。政治的にきわめてむずかしい状況にある米中、日韓の動きは今後のロシア、北朝鮮問題を見てゆく上で、ひとつの転換点に差しかかったことが示されていると感じられます。

それは企業サイドも同じです。11月は3月決算企業にとって中間決算の発表シーズンでもあり、それに合わせて企業の在り方を根本的に見直す動きも各方面から相次いで明らかになっています。

セブン&アイHDは傘下の百貨店子会社「そごう・西武」を投資ファンドのフォートレス・インベストメントへの売却を決定しました。買収側の陣営にはヨドバシカメラが加わることになります。

オリックスは未上場の化粧品大手「DHC」を買収します。金額は3000億円にのぼると見られ、実現すれば事業承継として過去最大となる見通しです。

ほかにも東京特殊電線、住友精密工業、ササクラ、ユーザベースなど、TOBが矢継ぎ早に発表されています。経営再建に向けた東芝へのファンドからの提案も大詰めを迎えています。

11月相場で上昇の目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。

11月相場で株価の上昇が目立った銘柄は、企業業績の好調だったものに集中しています。いわゆる「好業績銘柄」に市場の関心がはっきりと向いています。

それらの好業績銘柄も次のふたつのグループに分かれます。

(1)構造改革の進んでいる銘柄
(2)市況上昇の恩恵を受ける銘柄

以下にそれぞれを見ていきます。

単に業績が好調というだけでなく、事業構造の改革が進んでいる銘柄が値上がり上位に目立ちました。代表的な存在がJVCケンウッド(6632、第1位、216円→370円、+71.30%)です。
10月31日にJVCケンウッドが発表した2023年3月期の第2四半期決算は、売上高が1581億円(前年同期比+27.1%)、営業利益は57.6億円(+178.1%)と大幅な伸びとなりました。

業績好調の要因として、上海地区のロックダウンが解除されて上海工場の稼働率が大幅に改善したこと、および同社が戦略商品としている車載ドライブレコーダーが好調に推移していることが挙げられます。

それ以上に、米国市場で主に警察・公共向けを中心に新製品の3チャンネル対応トランシーバーが順調に受注を獲得していることがあります。

銃乱射事件が各地で多発する米国では、公共の場の安全を守るという観点から政府予算が引き上げられています。トランシーバーでは米国でトップシェアを持つモトローラの牙城に少しずつ食い込んでおり、それが近年待ち望んでいたヒット製品の出現につながっています。

JVCケンウッドは、家庭用ビデオデッキで「VHS」の規格を世に送り出した日本ビクターと、オーディオ機器の名門・ケンウッドが2008年に統合して誕生した企業です。マーケットは名門復活を待ち望んでいましたが、成熟製品のビデオデッキやオーディオではかつての栄光は取り戻せず、低空飛行のまま10年の月日が流れました。

そしてようやく待ち望んでいたヒット商品が、ドライブレコーダーと新型トランシーバーとして生まれつつあります。今回のヒット商品と高収益復活によって、昨年5月に策定した中期経営計画「VISION2023」の目標(売上高3200億円以上、コア営業利益120億円以上)を1年も前倒しで達成することとなりました。

3チャンネル対応トランシーバーというヒット商品も大きいのですが、それ以上に事業ポートフォリオを定め直して、収益基盤を根本から強化したことが何よりも威力を発揮しています。

JVCケンウッドはここで改革の手を緩めることなく、来年3月をメドに新たな3か年の中期経営計画「VISION2025」を策定することとしました。そこで事業ポートフォリオの見直し、キャッシュフロー・アロケーション、株主還元策を図ることになります。株価は企業の構造改革の成功を評価して一貫して上昇基調を続けています。

同じように電子部品メーカーのスミダコーポレーション(6817、第4位、985円→1,462円、+48.43%)も堅調な業績を背景に大きく上昇しました。

スミダコーポの得意とするのは、電子部品の中でも電流を流すコイルとトランスです。元々はオーディオ製品向けに強い製品群を有していたのですが、音響市場の縮小から近年は自動車の電動化向け製品にシフトしています。

直流と交流を切り替えるコンバーターやインバーター、チョークモジュール、センサーの需要が著しく伸びており、売上高の6割近くを車載関連製品が占めるまでに変貌を遂げました。上半期はこの車載分野が前年比で+26.7%も伸びており、スミダコーポの業績の急回復を牽引しています。

同じように売上高の20%ずつを占める家電製品向け(スマホ市場)とインダストリー向け(再エネ向け)も好調を維持しており、それも収益の好調な伸びを支えています。

第3四半期を終えた時点で進捗率の高さから、通期の業績見通しを上方修正しました。売上高は1190→1360億円、営業利益は55→72億円に増額されます。

自動車メーカーは半導体調達不足による生産計画の遅れを取り戻すべく、生産活動を活発化させています。その恩恵からスミダコーポの年度計画の着地点は会社側の想定数字を上回る可能性も出ています。株価は決算後も堅調な上昇基調に乗って推移しています。

2022年11月 JVCケンウッド、スミダコーポレーション

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最近は「値上げ」、「物価上昇」のニュースを耳にしない日はありません。世の中にはすっかりインフレ・モードが定着しています。

好業績企業の中には素材セクターを中心に、インフレによる利益を享受する企業も目立つようになりました。代表格が日本冶金工業(5480、第2位、2,832円→4,305円、+52.01%)です。

日本冶金工業が10月31日に発表した第2四半期の決算は、売上高は963億円(+50.2%)、営業利益は126.5億円(+91.0%)と大幅な増益となりました。

原材料価格や電力料金などのコストの増加も激しいのですが、コスト増に見合ったロールマージンを確保するために、得意先に対して製品価格の引き上げに成功しています。とりわけ太陽光発電や水電解装置など、環境分野で使用される高機能ステンレスの価格引き上げが奏功して大幅な増収・増益につながりました。

中間期の好調な業績を反映して、日本冶金工は通期の業績を売上高で1900億円→1980億円、営業利益を200億円→270億円に増額修正しました。これに合わせて期末配当金も従来見通しの70円から130円に引き上げています(中間配当は70円)。

半導体市場や再生可能エネルギー向けに、高機能ステンレス鋼材の需要は一段と高まると見られています。業績の好調は一過性のものではないと見ることができそうです。

同じように市況関連銘柄では、不定期船・タンカーの飯野海運(9119、第27位、741円→933円、+25.91%)、マンガンなど合金鉄の新日本電工(5563、第36位、340円→422円、+24.12%)、スポンジチタンの東邦チタニウム(5727、第43位、2,247円→2,748円、+22.30%)らの株価も顕著な上昇を遂げました。

2022年11月 日本冶金工業、飯野海運、新日本電工、東邦チタニウム

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ここからは11月相場の「COOLな銘柄」です。

11月相場で下落の目立った銘柄は、好業績が期待されていたにもかかわらず、それが裏切られてしまった銘柄が多く見られます。

ゼネコン大手の五洋建設(1893、第35位、740円→647円、▲12.57%)は、好決算の見通しが反対に失望に転じた銘柄のひとつと言えます。

11月10日に発表された2023年3月期の第2四半期の決算では、売上高は2276億円(+8.3%)と大型工事の進捗で増収を維持したものの、営業利益は66.7億円(▲43.6%)と大幅な減益となりました。

前年比で営業利益がほぼ半減した理由として、上半期の国内受注の遅れ、前年に利益率の高い工事が完成してしまったこと、加えて海外案件が労務費・建設資材の高騰で営業赤字に転落したことが大きいようです。

上半期の不振によって、五洋建設は2023年3月・通期の業績も下方修正しました。売上高は5150億円→4850億円、営業利益は315億円→225億円に引き下げられています。増収・増益は維持するものの、伸び率は大幅にダウンすることとなります。

同じようにブイキューブ(3681、第7位、1,010円→795円、▲21.29%)も軟調です。Web会議用のテレビ電話システムを提供するブイキューブは、11月1日に2022年12月・通期の業績下方修正を発表しました。

そこでは通期の売上高を139億円(+20.9%)→123億円(+7.0%)に、営業利益を20.0億円(+48.0%)→8.0億円(▲40.0%)にそれぞれ引き下げられました。テレビ会議システム「V-CUBEミーティング」で期初時点に想定していた以上の解約が発生したこと、コロナ感染症の行動規制が解除されてイベントがWebからリアルに回帰していること、営業人員を強化していることによる人件費の増加、などが影響しています。

11月相場では大型株から小型株まで、バリュー株からグロース株まで、業績の伸びによって銘柄間の格差が開くようになっています。個々の企業の業績見通しに対する判断・評価が一段と重みを増す地合いになってきたように思います。

2022年11月 五洋建設、ブイキューブ

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2022年11月 東証プライム市場 値上がり率・値下がり率上位表

当コラムは投資の参考となる情報提供を目的としており、特定の銘柄等の勧誘、売買の推奨、相場動向等の保証等をおこなうものではありません。

また将来の株価または価値を保証するものではありません。
投資の最終決定はご自身のご判断と責任で行ってください。
詳しくは「ご注意事項」をご確認ください。

鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
「きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
Twitterアカウント
@suzukazu_tokyo

呼びかける時は「スズカズ」、「スズカズさん」と呼んでください。

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