企業経営者の景況感を読み取ろう!
投資をする上で参考となる景気指標の一つに「日銀短観」(全国企業短期経済観測調査)があります。
景気の現状や先行き、業績や雇用などについて全国の大企業や中小企業、製造業や非製造業約1万社の経営者に直接アンケート調査(3、6、9、12月)をして、日本銀行から年4回(4、7、10月の初めと12月中頃)発表されます。
この調査のため日本銀行から選ばれた企業はいわばステータスであることから、回答率が約99%と非常に高くなっています。海外では「Tankan」の名称で認識されています。
このアンケート調査は「業況判断DI」といい、調査対象企業の「最近」と「先行き」の景況感(「良い」、「さほど良くない」、「悪い」)を集計して、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いて求めます。
2022年9月の調査(大企業、製造業)によると、「良い」が21%、「さほど良くない」が66%、「悪い」が13%で、業況判断DIは21-13=8ポイントでした。前回6月の調査が9ポイントであったため、1ポイントの「悪化」となりました。仮に前回が7ポイントなら、1ポイントの「改善」となります。
<業況判断DI(大企業・製造業)2022年9月調査と2022年6月調査>
大企業と中堅・中小企業で数字は異なりますが、とくに景気や経済に大きな影響力がある大企業の業況判断DIを確認しましょう。また、業種別でも確認ができます。株式投資をしている方にとっては、経営者が回答した景気の状況や業績、雇用などに関する生の声を数値で簡単に確認することができるため、投資判断の有効な手段であるといえます。
日銀短観を利用した株式投資のタイミングと注意点
日銀短観の「業況判断DI」は、回答期間から公表まで約1カ月と、数ある景気指標の中でも速報性が高いものです。株式投資のタイミングとして景況感の先行きが「良い」と回答している経営者の割合が高ければ、その後、株価が上昇する可能性があります。株式の購入を考えている場合には、株価が上昇する前に購入しておきたいところです。すでに保有している場合は、上昇した後に売却を考えるとよいでしょう。
逆に「悪い」と回答した経営者の割合が高い場合は、その後株価が下落する可能性もあるので、株価が下落してある程度底をついたと感じたら購入するとよいでしょう。投資の格言にもあるとおり、落ちてくるナイフはつかむと危険ですが、床に落ちたナイフは上手に拾いましょう。
業況判断DIの注意点として、アンケート調査の回答項目には「良い」、「悪い」のほかに「さほど良くない」という回答があります。あくまで報道や経済ニュースで公表されている数値は、「良い」から「悪い」の割合を差し引いた数値のみです。そのため、前回よりプラス「改善」と公表されていてもその情報だけを鵜呑みにしないように気をつけましょう。「さほど良くない」ということは、少なくとも悪いと感じています。また、前回より「改善」と公表されても、業種別では異なる回答の場合もあります。
詳細は日本銀行のホームページに掲載されていますので、しっかり確認して投資判断の参考にしましょう。
短観(概要)
第194回(2022年9月)全国企業短期経済観測調査
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2209.pdf
第193回(2022年6月)全国企業短期経済観測調査
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2206.pdf