引き締め姿勢を明確にするFRB 小型成長株は底入れ反転!?HOTな銘柄、COOLな銘柄 引き締め姿勢を明確にするFRB 小型成長株は底入れ反転!?HOTな銘柄、COOLな銘柄

引き締め姿勢を明確にするFRB 小型成長株は底入れ反転!?HOTな銘柄、COOLな銘柄

株式アナリストの鈴木一之です。2022年3月の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」をお届けします。

全体相場の振り返り

3月4日、ロシア軍はウクライナ南部にある欧州最大のザポリージャ原子力発電所に砲撃を加えました。幸いにも被害は小さな火災にとどまりましたが、原発への砲撃などテロ行為そのもので、戦争行為と言え許されない暴挙として国際社会はロシアに対する非難の声を強めました。

事態の深刻さに驚き、この日から米国、欧州、日本の株式市場は4日間にわたって大きく下落しました。東京株式市場は3月10日に下げ止まりましたが、4日間の下落幅は日経平均で▲1,800円近くに達しました。

あらゆる一次産品価格が急上昇し、中でも原油はロシアの主要産出物であるだけに、3月8日にWTI先物価格で1バレル=125ドルまで急伸し、2008年7月以来の高値を記録しました。欧米諸国が経済制裁としてロシア産原油の輸入禁止措置を講じると伝わったことが主因です。ロシア産原油が西側社会に出てこないことで需給関係が壊れ、経済制裁によって西側先進国が苦しむという皮肉な見通しが先行しました。

結果的に、この時に記録した1バレル=125ドルという価格が、ここまでの原油市況の高値となりました。投機的な買いを巻き込んで急騰したものの、価格が上昇することで米国のシェールオイルが増産に向かい、核合意が妥結した後はイラン産原油も市場に流入し、OPEC諸国も増産余地が生じることで、ロシア産原油の禁輸による不足分を穴埋めすることができるメドが立ったとされます。ここから株式市場は底入れ反転に向かい始めました。

引き締め姿勢を明確にするFRB

米国の金融政策も市場反転のきっかけを提供しました。3月15~16日にFOMC(公開市場委員会)が開催され、FFレートの誘導目標の0.25%引き上げが決定されました。これによって米国では2年ぶりにゼロ金利が解除され、コロナ危機への緊急対応策は終止符を打つこととなりました。新しい誘導目標は0.25~0.50%となります。

今年はスタート時点から「3月開催のFOMC」が大きな節目とみなされてきました。昨年11月から一貫して市場の話題を独占してきた米国の金融政策の行方がいよいよ明らかになります。FOMCで示されるドットチャートの形状や高官発言などによって、利上げの回数、スピード、量的引き締め(バランスシートの圧縮)のスケジュールなどを本格的に探る動きが開始されます。

3月のFOMCではゼロ金利解除のほかにも、今年中に7回の利上げを行う旨がドットチャートの形状によって示されました。さらに量的引き締めは「早ければ次回5月の会合で決定」される可能性も出ています。FRBは急激に進むインフレを抑制するスタンスを明確に打ち出したこととなります。

ゼロ金利の解除、および0.25%の利上げ幅は、パウエル議長が事前に示したとおりの内容でした。この決定を受けて世界の株式市場は大きく上昇に転じました。

3月9日に日経平均はボトムを形成し、FOMCを受けて3月14日から25日にかけて9日続伸となりました。祝日をはさんで丸2週間にわたり1日も下がらず上昇を続け、25,000円割れからあっという間に28,000円台を回復しています。ウクライナ戦争の勃発によってリスク市場から逃避した投資マネーが、一斉に元の市場に戻っている模様です。

ただし戻り歩調はそこまでです。首都キーフ(キエフ)近郊の街・ブチャで多くの民間人の犠牲者が発見されたことで、西側諸国の間ではロシアの戦争犯罪を問う姿勢が一段と強まっています。追加の経済制裁が相次いで講じられ、ウクライナ戦争は数年に及ぶ長期化の様相を示しつつあります。それに伴って世界経済に対する下押し圧力もじわじわと強まっているように感じられます。

日本株は今年初めての上昇

3月の月間パフォーマンスは、日経平均は2月末の26,526円から3月末は27,821円へ、1か月で+4.88%の上昇となりました。今年初めての上昇を記録しています。TOPIXも2月末の1,886から3月末は1,946へ+3.18%の上昇となりました。

厳しい下落基調が続いたマザーズ市場は大きく反発しています。マザーズは3月相場で+8.97%の大幅な上昇を記録しました。4月からは60年ぶりという東証の市場再編によってマザーズ市場は新たに「グロース」に変わります。マザーズ指数は当面、算出が続けられますが、市場としてのマザーズは存在しなくなります。

3月相場はマザーズ市場としての最後の取引となりました。東証マザーズ指数が7か月ぶりに月間でプラスを保ったことで、区切りの役目を終えたマザーズの面目を保ったと安堵しています。

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「HOTな銘柄」

3月相場で上昇の目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。ここでは以下の3つの切り口からグループにまとめることができます。

  • 小型成長株の底入れ反転
  • 資源エネルギー関連株

(1)小型成長株の底入れ反転

3月相場の大きな特徴は、小型成長株がようやく底入れ反転のタイミングを迎えた点です。マザーズ市場に上場する銘柄が2月から3月にかけて相次いで底入れし、株価が大きく上昇しています。東証1部(現在はプイラム市場)に上場する小型成長株も反発する銘柄が数多く見られました。

その代表格がギフティ(4449、第4位、846円→1,286円、+52.0%)です。

ギフティはスターバックスコーヒーのような小売店で商品に交換できる電子チケット「eギフト」を発行しています。個人で「eギフト」を購入して、同僚や友人にちょっとしたプレゼントとしてメールで送ったり、法人が販促用グッズとしてまとめて「eギフト」を購入し顧客に配ったりと利用シーンが増えています。

コロナ禍でリモートワークが増え、ビジネスマンがオフィスに出社するケースは減っていますが、「eギフト」の需要は根強く業績は好調です。売上高は過去3年間で3倍に増えました。会社としては需要好調の波をとらえて積極的な投資を行っているため、売上高の伸びほどには営業利益は伸びていません。しかし徐々に収穫期が近づいているとの予想も強まっています。

株価は昨年10月の4,340円をピークに「グロース株売り、バリュー株買い」の流れとともに大幅に下落しました。ロシアがウクライナに侵攻を開始した2月24日に、753円の底値をつけたところが大底となり反発に転じました。現在では1,300円を超えて底値からは2倍近くに上昇しています。

このような銘柄が3月相場の値上がり銘柄のランキングには多数見つけることができます。

  • メドピア(6095、第23位、3,150円→4,000円、+27.0%)
  • Sansan(4443、第9位、998円→1,391円、+39.4%)
  • MonotaRO(3064、第40位、2,150円→2,634円、+22.5%)
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メドピアは医師向けの情報サイト「MedPeer」を運営しています。医家向け情報提供が評価され、コロナウイルス流行の第1波~第3波で株価が大きく上昇した代表的な銘柄です。業績は好調が続いており最終利益は2年で2倍に増える見通しですが、株価は昨年1年間にわたって「グロース株売り」の下落基調に巻き込まれ、ほぼ一本調子の下げとなりました。それが2月半ばの2,355円をボトムに反発に転じ、現在では4,000円を超えています。

作業現場のネット通販で急成長しているMonotaRO(3064)や、クラウドによる名刺管理ソフトのSansan(4443)、電子サインのGMOグローバルサイン(3788)など、2020年から2021年にかけて株価が大幅高となった小型成長株の代表格、スター的存在の銘柄がいずれも同じタイミングで底入れし、株価が再び上昇基調に向かっています。

(2)資源エネルギー関連株

先月と同様、ウクライナ危機によって資源エネルギー価格が急騰している影響が株式市場には色濃く見られます。

鉄スクラップ、アルミニウム、銅など金属資源のリサイクルを行うエンビプロHD(5698、第2位、1,340円→2,078円、+55.1%)が急騰しました。金属市況が高騰することによってスクラップ需要が底堅く推移しており、3月28日には今期(2022年6月期)の業績見通しを上方修正しました。

それによれば今期の売上高は従来の540億円から560億円に、営業利益は23.9億円から27.2億円に会社側がそれぞれ引き上げています。合わせて通期の配当金を増額しており、修正の発表前から強含みで推移していた株価は、決算修正をきっかけに一段高となりました。

同じように、インドネシアで天然ガスを開発するINPEX(1605、第48位、1,185円→1,440円、+21.5%)、豪州産石炭の輸入を手がける三井松島HD(1518、第55位、1,594円→1,911円、+19.9%)、天然ガスプラントでは世界トップ企業の日揮HD(1963、第22位、1,152円→1,464円、+27.1%)が一貫して買い進まれました。

西側諸国の禁輸措置によって、ロシア産原油、石炭、天然ガスの需給ひっ迫が懸念される見通しが一段と強まったことが背景にあります。

2月相場と同様に、ロシアがチタンとニッケルの世界的な産出国であることから需給ひっ迫の見通しが強まり、東邦チタニウム(5727、第13位、1,091円→1,455円、+33.4%)、大阪チタニウムテクノロジーズ(5726、第29位、1,143円→1,438円、+25.8%)、大平洋金属(5541、第41位、3,380円→4,130円、+22.2%)の株価も人気化しました。

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「COOLな銘柄」

続いて「COOLな銘柄」は、3月相場で下落基調の続いた銘柄です。ここでは自動車関連株の値下がりが特に目立ちました。ここにもウクライナ戦争の長期化が影響していると見られます。

下落率のトップとなった日野自動車(7205、第1位、1,077円→720円、▲33.1%)は3月4日に、中型・大型トラック、バスのディーゼルエンジンの排ガスのデータを改ざんしていた事実を公表しました。

評価試験を行っている最中に浄化装置を交換して基準値をクリアするという手口で、影響は最大で日野自動車の1年間の国内販売台数の2倍となる11万台に広がる可能性があります。国土交通省は日野自動車のエンジンの型式指定を取り消すという行政処分を下し、大型トラックに関しては当分の間、出荷のメドがたたない状況です。日野自動車の業績には長期的に影響が出そうです。

日野自動車の事例は例外的なものとしても、このほかに自動車用コネクター大手のイリソ電子工業(6908、第6位、4,090円→3,340円、▲18.3%)の株価が大きく値下がりしています。

同様に、自動車用ヘッドライトの御三家とされる、市光工業(7244、第7位、504円→412円、▲18.3%)、小糸製作所(7276、第12位、5,920円→4,975円、▲16.0%)、スタンレー電気(6923、第23位、2,727円→2,324円、▲14.8%)がそろって値下がりし、ホンダ向けに基幹部品であるシャフトを製造する武蔵精密(7220、第19位、1,785円→1,512円、▲15.3%)も大きく値下がりしました。

自動車向けの比率の大きな人材派遣の日総工産(6569、第22位、889円→757円、▲14.8%)や、自動車用の塗装用ペンキのウェートの高い関西ペイント(4613、第27位、2,299円→1,973円、▲14.2%)も軟調です。

自動車メーカーは工場の操業度を高められないという厳しい経営環境が続いています。長期化する半導体不足、物流費、材料費の高騰、原油高、賃上げを求めるストライキ、クラスター発生や停電による工場の稼働停止、などが噴出しています。

そこに加えてウクライナ戦争の勃発で、主要市場である欧州経済がしばらく減速するとの見通しが強まっています。上海市ではコロナウイルスの感染拡大で外出制限が実施され、中国でも工場稼働率を高めることがむずかしくなっています。

コロナ禍以降続いている自動車メーカーの苦境が、ウクライナ戦争の勃発でさらに厳しさを増しており、日本および世界経済にじわじわと下押し圧力をもたらしつつあるようにも見えます。

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値上がり率上位・下位(東証1部)

当コラムは投資の参考となる情報提供を目的としており、特定の銘柄等の勧誘、売買の推奨、相場動向等の保証等をおこなうものではありません。

また将来の株価または価値を保証するものではありません。
投資の最終決定はご自身のご判断と責任で行ってください。
詳しくは「ご注意事項」をご確認ください。

鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
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