配当と自社株買い~日米の株主還元の違いは~

配当と自社株買い~日米の株主還元の違いは~ 配当と自社株買い~日米の株主還元の違いは~

2025年8月28日更新

米国株式市場には、高配当銘柄や自社株買いを頻繁に行う企業が多く存在しています。
特に近年は、インフレや金利の上昇が続く経済環境の中で、企業のキャッシュフローや財務の健全性に対する関心が高まっているともいわれており、その一環として配当や自社株買いなどの株主還元策が企業評価の指標として注目されているようです。

株主還元に積極的な米国企業

米国企業は、株主還元の意識が非常に高く、配当や自社株買いを戦略的に活用しています。
注目される株主還元の指標のひとつに「総還元性向(=配当+自社株買い ÷ 純利益)」があります。
総還元性向とは、当期純利益に対してどれだけ株主還元を行っているかを測る指標です。
総還元性向が高いほど、株主還元を行っている企業といえますが、米国企業の総還元性向は日本企業と比較しても高水準である事がわかります

米国企業の総還元性向:約86%
日本企業の総還元性向:約50%
※2023年度時点データ
(出典:日本経済新聞_株価上昇、王道は成長投資増大_2024年11月8日

また、2025年にはS&P500種指数に採用されている米国企業による自社株買い総額が、過去最高の1兆ドル超になるとの見通しも示されており、米国企業による株主還元が大規模かつ継続的なものであることが分かります(出典:ロイター通信_S&P500社の自社株買い、25年に初の1兆ドル超えへ=ゴールドマン_2024年3月8日)。

米国企業が高配当・自社株買いを行う背景

1. 配当の魅力と安定性

米国では、日本のような「株主優待制度」はほとんどなく、配当での現金還元が一般的です。

  • 配当は通常「四半期ごと(年4回)」に支払われるため、定期的なインカムを狙う投資家にとって大きな魅力です。
  • 一部の優良企業は「連続増配」を数十年にわたって継続しており、将来の配当成長への期待も投資行動に影響を与えています。
2. 自社株買いの効果と戦略的意義

自社株買いは企業の収益力を示す指標の1つであり、株価の下支えや株主価値向上を意識した重要な手段です。

  • 自社株を買い戻すことで発行済株式数が減少し、1株あたり利益(EPS)や株主資本利益率(ROE)が上昇します。
  • 配当と異なり、自社株買いは柔軟なタイミングで行えるため、企業のキャッシュフロー状況やマーケット環境に応じた戦略的調整が可能です。

さらに、株式報酬制度(ストックオプション等)を採用している企業では、自社株買いを通じて経営陣や従業員とのインセンティブ整合性を図るケースも増えています。

配当貴族指数とは?

配当貴族指数」は、一定期間連続して増配を行っている優良企業群のパフォーマンスを測定する指標です。

構成要件
  • S&P500に採用。
  • 浮動株調整後時価総額30億ドル以上。
  • 1日当たり平均売買代金500万ドル以上。
  • 過去25年以上連続して配当を増やしている実績のある企業。

この指数に組み込まれた企業は、景気に左右されにくい安定的キャッシュフローを持ち、株主重視の経営を実践している企業と位置づけられています。

まとめ

米国企業が積極的に配当金・自社株買いを通じた株主還元を行っているのは、株主との信頼関係を重視した経営文化と、資本コストを意識した効率的な財務戦略が根本にあります。
こうした企業姿勢は、米国株市場の長期的上昇を支える重要な構造的要因であり、高配当・増配志向の投資家にとって米国株の魅力をより一層高めているかもしれません。
米国株投資において、「株主還元」の視点を意識してみてはいかがでしょうか。

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