現物(げんぶつ)とは、実際に受け渡しできる有価証券(株式)を意味し、その売買を現物取引と呼びます。簡単に言うと「現金で株式を売買すること」です。
現物取引とは
1. 株式とは
株式とは、企業が資金を調達するために発行する有価証券のことです。イメージとしては、企業に期待して出資してくれた人に対する証明書のようなものと考えてよいでしょう。
株式を買ってもらった企業は、さらに事業を成長させ利益を追求するために、出資してもらったお金を使います。
その一方、株式を買った側(株主)には出資額に応じたメリットや権利が与えられます。
2. 株主が得られるメリットや権利
株主の主なメリットや権利4つ
メリットや権利 | 内容 |
---|---|
値上がり益 | 株価が値上がりした状態で売却した場合、その値上がり益を得ることができる。値下がりした状態で売却すると損が発生するのでデメリットとなることもある。 |
配当 | 年に1,2回で配当金を受け取ることができる。 |
株主優待 | 企業が展開するサービスの割引券や自社製品の他、お米やQUOカードなどの優待品がもらえる。 |
議決権 | 株主総会の決議に参加できるなど、企業の経営に参加することができる。 |
一定数の株式を保有しなければ行使できない権利もありますが、配当金を受け取る権利や、株主総会の議決権は1株でも保有していると発生する場合があります。
3. 株式投資の仕組み
株式の取引には証券会社の口座が必要
株式は一般的に証券取引所で売買が行われていますが、私たちのような個人投資家は直接証券取引所で売買できるわけではありません。
証券会社を介して株式を買ったり売ったりするので、株式投資を始めるにはまず証券会社の口座が必要です。
取引所で売買できるのは上場企業のみ
日本の全ての株式会社の株式を購入できるわけではありません。証券取引所で株式の売買が行われるようになることを「上場」といいますが、上場している企業の株式のみ証券会社で売買が可能です。
一方で、「未公開株」というものがあります。これは上場していない企業の株式のことで、証券取引所で売買されていません。
上場株式 | 証券取引所で売買されている株式。 一般の投資家でも資金さえあれば証券会社から購入できる |
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未公開株式 | 証券取引所で取引されていない株式で、当事者間やクラウドファンディングなどで取引されるケースが多い。IPO(新規上場株式)を除いて証券会社で購入できる場合はほとんどない。 |
株価の変動要因
株価を決める要因は様々ですが、簡単に言うと需要と供給の関係です。
例えば、業績が良い企業は株価が上がると思い買う人多くなり、株価は上がりやすくなります。
一方で、景気が悪く政治も不安定な時期であれば、株価の値下がりが心配となり売る人が増え、株価は下がりやすくなります。
主な株価の変動要因と関係
要因 | 項目 | 値動き | 説明 |
---|---|---|---|
個別の企業による要因 | 企業業績 | 業績好調↑ 業績不調↓ |
業績が良い企業の株価は上がりやすく、業績が悪い企業の株価は下がりやすい。 |
経済環境による要因 | 国内景気 | 景気回復↑ 景気後退↓ |
景気回復期には個人の消費活動が活性化し、企業の売り上げや設備投資も活発化します。そして、企業の売り上げ増加期待も高まります。 |
為替 | 輸出企業 円安↑円高↓ 輸入企業 円安↓円高↑ |
輸出企業にとって円安は、海外での売り上げ増加につながり上昇要因です。 逆に輸入企業にとっては、商品の輸入コストが上がる為に下落要因となります。 |
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海外情勢による要因 | 海外市場 国際政治 |
主要国の経済や政治の安定 |
主要国の景気が好調な際は、日本への投資も増える傾向にあるため、株価の上昇要因です。 景気の悪化や政権不安、地政学的リスクなどが起きると投資意欲が低くなり、下落要因となります。 |
株式は電子化されている
2009年までは「株券」という紙の証明書が発行されていましたが、現在は上場している株式は全て電子化されており、証券会社などで管理されています。複雑な手続きが省力化され、紛失や盗難などのリスクもありません。
4. 上場企業の数
日本の証券取引所は4つあり、各証券取引所に上場している企業を合計すると、約3,900社あります。これらの企業の株式を証券会社から購入可能です。
市場区分 | 上場企業数 | |
---|---|---|
東京証券取引所 | プライム | 約1,830 |
スタンダート | 約1,450 | |
グロース | 約500 | |
Tokyo Pro Market | 約60 | |
名古屋証券取引所 | プレミア | 約180 |
メイン | 約80 | |
ネクスト | 約15 | |
札幌証券取引所 | 本則市場 | 約50 |
アンビシャス市場 | 約10 | |
福岡証券取引所 | 本則市場 | 約90 |
Q‐Board(新興市場) | 約20 |
5. 各証券取引所について
ニュースなどで耳にすることがある東京証券取引所が最も有名ですが、日本にはそれ以外にも3つの証券取引所があります。
東京証券取引所 | 日本最大の証券取引所。 上場している会社は約3,800社と非常に多く、取引量も大きい。2013年に大阪証券取引所と統合した。 |
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名古屋証券取引所 | かつては東京証券取引所、大阪証券取引所と共に日本3大取引所に数えられていた。
愛知県を地盤とする企業が多い。 |
札幌証券取引所 | 単独上場会社は北海道を地盤とする企業が多い。 |
福岡証券取引所 | 単独上場会社は福岡や九州を地盤とする企業が多い。 |
その地域で活動している地元の企業が上場しているほか、東京証券取引所と重複して上場している企業もあります。
現物取引の基本についてまとめ
- 投資家は証券会社を介して、証券取引所に上場された株式を売買できる
- 株式を保有すると、配当金、株主優待、値上がり益を得られることも
- インターネット上での口座開設や取引が簡単