トランプ発言と景気後退懸念で揺れるマーケットで資金が向かった先は!? HOTな銘柄、COOLな銘柄 トランプ発言と景気後退懸念で揺れるマーケットで資金が向かった先は!? HOTな銘柄、COOLな銘柄

トランプ発言と景気後退懸念で揺れるマーケットで資金が向かった先は!? HOTな銘柄、COOLな銘柄

株式アナリストの鈴木一之です。
「HOTな銘柄、COOLな銘柄」の2025年2月号をお届けします。

2月の日経平均は▲6.11%と大きく値下がりしました。
2か月連続の下落です。
世界が注視するトランプ政権の2期目が本格的にスタートし、毎日のように世界全体がその言動に翻弄されています。

日経平均ほどではありませんが、TOPIXも2月相場では▲3.80%の下落となりました。
こちらは3か月ぶりに反落しています。

それでもTOPIXは日経平均と比べて値を保っています。
それだけ日経平均の下げが大きくなっています。

両者の差がここまで開いているのは、ひとえに値がさのテクノロジー株が軟調な動きをたどっていることが原因です。
よりカバー範囲の広いTOPIXは下げが比較的小さなものにとどまっていると見られます。

軟調だった小型株市場は昨年暮れの時点から少しずつ投資資金が戻っている模様です。
東証グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)は年末年始をはさんで、4か月連続で上昇しました。
2月の上昇率はわずか+0.46%にとどまっており、まだ本調子とは言えませんが、1月に続いて少しずつ明るさが戻っているようです。

TOPIX、日経平均、グロース250

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1月20日に行われた米国の大統領就任式を経て、全世界が注視する中でトランプ政権の2期目の政策運営が始まりました。

政権発足直後は比較的穏やかなムードでしたが、しかしすぐにトランプ政権の本性が現れ、関税の発動を中心に既存の世界秩序を揺るがす過激な政策が次々と繰り出されています。
そのたびにマーケットは大きく揺さぶられています。

カナダ、メキシコに対する25%の関税に始まり、中国への+10%、さらにもう+10%の追加関税、米国と貿易上の取引を行うすべての国への25%関税の予告と、対象はどんどん広がる一方です。

おひざ元の米国市場でも関税によるインフレへの警戒感からか、マクロ経済統計が相次いで弱含むようになってきました。
このことをインフレ抑制に向けたよい兆候と見るか、あるいは景気後退の兆しと見るのか、判断の分かれるところです。

トランプ関税に先立って、1月末の株式市場は「ディープシーク・ショック」なるテクノロジー株のショック安に直面していました。

「ディープシーク・ショック」は、従来の生成AIの製造コストに比べてコストが10分の1程度という破格に安いAIが中国発のスタートアップ企業によって開発された、という一件です。
警戒感がぬぐえないまま迎えたトランプ政権の幕開けです。

目下のところ市場は景気の鈍化をネガティブに受け止めています。
S&P500は2月19日に史上最高値を更新した後に、その後は一転して軟調な動きをたどっています。

具合の悪いことに2月26日のエヌビディアの決算からは、米国でも半導体株が大きく下落するようになりました。
マーケット全体がリスクオフモードに傾きつつあります。

米国市場の下押し圧力と連動して、日経平均も2月中旬からは下落に転じ、2月28日(金)には▲1,100円もの下げ幅から37,000円の大台を割り込むに至りました。
昨年10月以降、半年間にわたって続いた「上値40,000円~下値37,000円」の保ち合い相場の下限をついに割り込んで推移しています。

2月相場で上昇が目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。

半導体関連株が久しぶりに物色の中心に踊り出た感があります。
相場が上げても下げても物色の中心は依然として半導体関連株に集中しています。

キオクシアHD(285A、第2位、1,807円→2,670円、+47.8%)

ただし人気化する銘柄は常に同じとは限りません。
2月相場では上場して日の浅いキオクシアHD(285A)が物色の中心となりました。
東京エレクトロン(80358035) やアドバンテスト(68576857)、 ディスコ(61466146)は上値の重い展開が続いています。

キオクシアに関しては、昨年12月にIPOで登場して以来、2月相場を含めて3か月連続で月足陽線を記録しました。

2月14日に上場後初めての決算を発表し、2025年3月期・第3四半期の決算は売上高が1兆3,593億円(+80.2%)、営業利益が4,146億円(前年は▲2,965億円の赤字)と大幅に伸長していたことが好感されました。

キオクシアが得意とするフラッシュメモリ市場は出荷が数量ベースで回復しているものの、販売価格の低下が続いていることが明らかになりました。
それでもデータセンター向けの出荷量が伸び、収益の伸びを牽引しています。

KOKUSAI(65256525 、第13位、2,439円→3,047円、+24.9%)
ルネサスエレクトロニクス(6723 6723 、第43位、2,108円→2,465円、+16.9%)

上場して日の浅い半導体製造装置のKOKUSAI(65256525)も底入れからようやく反発に転じました。
ルネサスエレクトロニクス(67236723)も決算発表をきっかけに株価が急騰し、それまでの底練り状態から脱することができました。

両社も最近は株価に目だった動きがなく、それがかえって今の株価上昇につながっているようにも見られます。
他の半導体株への広がりは見られませんでした。

株式

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株式市場全体に不透明感が強く漂っていることから、ゲーム関連株が広範囲に人気化しました。
ここでの中心はディーエヌエー(24322432)です。

ディーエヌエー(24322432 、第3位、2,740円→3,985円、+45.4%)

2024年10月にリリースしたスマホゲーム「Pokemon Trading Card Game Pocket」(通称・ポケポケ)がスタート当初から大きな話題を集めており、それによって業績も好転しています。

2月7日に発表した2025年3月期・第3四半期の決算では、売上高が1,167億円(+12.1%)、営業利益が209億円(前年は▲276億円の赤字)と黒字転換を果たしています。

ゲーム関連株では同様にバンダイナムコ(78327832)、コナミグループ(97669766)も株価が急上昇しています。

バンダイナムコ(78327832 、第8位、3,861円→5,000円、+29.5%)
コナミグループ(97669766 、第9位、14,320円→18,295円、+27.8%)

バンダイナムコは「ドラゴンボール」シリーズや「ワンピース」、「学園アイドルマスター」などコンテンツビジネスが好調で、「機動戦士ガンダム」のプラモデルも引き続き人気を集めています。
2月初旬に発表した第3四半期の決算では営業利益が前年比2.3倍の1,792億円まで拡大しました。

コナミグループも大谷翔平選手をアンバサダーに起用した「eBaseball・MLB」、「実況パワフルプロ野球」の野球ゲームや「eFootball」のサッカーゲームが人気を呼んでいます。
第3四半期の決算は前年比5割近い増益となっています。

ゲーム業界の頂点に位置する任天堂(79747974)は、すでに1月相場の中盤から連日のように上場来高値を更新し、コンテンツ関連株の流れを形作りました。

トランプ関税によるインフレ高進のリスク、景気減速の懸念が強まって株式市場ではリスクオフの流れが強まっています。
そうなればなるほど、不景気に強いこれらのコンテンツ関連銘柄の人気が高まるという図式が2月相場では一段と鮮明になりました。

株式

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ミダックHD(65646564、第7位、1,659円→2,154円、+29.8%)
エムスリー(24132413、第15位、1,420円→1,762円、+24.1%)
メルカリ(43854385、第16位、1,889円→2,339円、+23.9%)
メンバーズ(21302130、第17位、994円→1,224円、+23.1%)

グロース市場に人気が戻り始めており、プライム市場でも小型成長株の上昇が目立ちました。

ミダックHD(65646564)は浜松市に本社を置く産業廃棄物処理の大手です。
関東圏にも進出し、産業廃棄物や再開発に伴う建築廃棄物の処理で収益が大きく伸びています。株価は2年近い底練りの後に好決算を反映して急反発しています。

決算発表をきっかけにボトム圏から株価が急上昇、というパターンでは、エムスリー(24132413)、メルカリ(43854385)、メンバーズ(21302130)も同じです。
ミダックHDとよく似た展開で、株価はコロナ過の後の2年近い下落と底練りを経た後に、好決算に素直に反応して大きく上昇しています。

米国でも「マグニフィセント7だけが物色される」という流れに変化が生じています。
この辺の展開に「弱かった銘柄が買われ、強かった銘柄が売られる」という「天底逆転」の地合いの変化が感じられます。

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続いて2月相場で値下がりの目立った銘柄、COOLな銘柄をご紹介します。


メドレー(44804480 、第2位、4,080円→2,775円、▲32.0%)
エス・エム・エス(21752175 、第4位、1,669円→1,153円、▲30.9%)
JMDC(44834483 、第8位、3,970円→2,970円、▲25.2%)
MDV(39023902 、第13位、526円→406円、▲22.8%)

「COOLな銘柄」にも小型成長株が目につきました。

メドレー(44804480)は医師、歯科医師、介護職、理学療法士など医療系の人材紹介ビジネスを手がけています。
コロナ過で収益と株価を大幅に伸ばした典型的な小型成長株です。

人材プラットフォームの「ジョブメドレー」は好調を維持していますが、もうひとつの柱である医療プラットフォームは引き続き苦戦を強いられています。
2025年12月期の着地は、売上高が4割増えたのに対して、営業利益は2割も減少する厳しい内容でした。

底値を固めつつあったメドレーの株価は決算発表をきっかけに急落し、2年半ぶりの安値に到達しました。

看護士・介護士に特化した人材紹介のエス・エム・エス(21752175)も同様です。
1月末に発表した第3四半期の決算では、売上高が+14%増えたのに対して営業利益は▲27%も減少しています。

看護士・介護士は共に人手不足感が最も強い業種であるため、人材の採用とそのための広告出稿を集中的に行ったことが収益の悪化につながっています。

JMDC(44834483)は健康保険の医療データ活用、メディカル・データ・ビジョン(39023902)は病院向け経営支援ソフト開発と、どちらも医療分野のベンチャー企業です。
やはり専門人材の募集を含めた経営コストの上昇が痛手となって利益の伸び悩みが顕著です。
決算発表をきっかけにいずれも株価が急落しました。

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半導体関連株は「HOTな銘柄」で取り上げましたが、「COOLな銘柄」にも登場しています。

TOWA(63156315 、第6位、2,071円→1,521円、▲26.6%)
Jマテリアル(60556055 、第21位、1,746円→1,393円、▲20.2%)
日東紡(31103110 、第23位、5,770円→4,620円、▲19.9%)

TOWA(63156315)は精密金型の製造に強く、半導体製造の後工程で活躍するモールディング装置を手がけています。
ジャパンマテリアル(60556055)は半導体の製造工程で欠かせない洗浄用の特殊ガス、超純水、薬液を管理するサプライヤーです。

日東紡(31103110)は半導体のパッケージ基板に用いられるガラス繊維を供給しています。
これらの中堅クラスの半導体周辺の部材メーカーが総じて軟調でした。

半導体市場を長期的な側面から見れば、生成AIに代表される産業革命規模の構造的な需要増加が十分に期待されています。

しかしそれよりももっと短期的な、目の前で展開されているシリコンサイクルなど半導体の景気サイクルは、現在もネガティブな話題がより多く見聞きする状況にあります。
それが半導体関連株の周辺に下落基調が継続している最大の理由と見られます。

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以上

東証プライム市場
鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
「きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
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