株式アナリストの鈴木一之です。
「HOTな銘柄、COOLな銘柄」の2024年12月号をお届けします。
全体相場の振り返り
12月の日経平均の月間騰落率は+4.41%でした。
2か月ぶりに上昇に転じました。
11月の米大統領選の結果を受けて、次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏政策を意識する状況が世界中で見られました。
米国はインフレの再燃を警戒するモードに入ったと見られます
トランプ政権下では「米国一強」の状況がますます強化されると見られており、米国の株式市場は史上最高値更新に沸いています。
その恩恵のいくばくかが日本のマーケットにも及ぶと見られ、12月の東京株式市場は堅調に推移しました。
2024年、年間での日経平均騰落率は+19.21%となりました。
2年連続での大幅な上昇を記録しています。
TOPIXは12月相場では+3.88%の上昇でした。
年間の騰落率は+17.67%となり、こちらも大幅な上昇が見られました。
一方で小型株市場はまだ本調子ではなく、東証グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)の月間上昇率は+0.15%にとどまりました。
年間の騰落率は▲8.78%にとどまり4年連続での下落を余儀なくされました。

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NASDAQ指数は史上初の2万ポイントの大台超え
12月相場で注目すべきは何と言っても米国市場です。
NYダウ工業株、S&P500、NASDAQがそろって史上最高値を更新しました。
先行したのはNYダウ工業株ですが、遅れてNASDAQにも上昇が広がりました。
しかも史上初めて2万ポイントの大台超えまで買い進まれました。
12月11日(水)に発表された米国の11月・CPIが前年同月比+2.7%の上昇となり、2か月連続して伸び率は加速しています。
米国の金融政策が果たして市場の予想通りにハト派的な方向に向かってゆくのか、それが心配されますがトランプ政権下での景気と企業業績の拡大を当て込んで株価は堅調です。
物色の中心はここでも大手テクノロジー株です。
テスラが3年ぶりに上場来高値を更新し、アップル、アマゾン、グーグルなどのビッグテックも総じて堅調です。
1年を通じて注目され続けたエヌビディアなどの半導体関連株は、12月初旬から中ごろにかけては一進一退の動きが目立ちましたが、月末に向けて次第に上昇基調を取り戻しました。
FOMCを受けて再びインフレ警戒モードへ
12月相場における市場の最大の関心は米国のFOMCでした。
12月17-18日に開催され、事前の予想通りに政策金利の▲0.25%ポイントの引き下げが決定されました。
FFレートは4.25-4.50%となりました。
3会合連続での政策金利の引き下げは予想の範囲内の決定です。
FOMC構成メンバーによる来年の政策金利の見通しも上方修正され、これも予想通りと言えます。
一方で長期的な政策金利の水準、いわゆる中立金利の水準や来年以降のインフレ見通しは引き上げられています。
パウエル議長は記者会見において、トランプ政権下での政策効果を考慮して、今後の経済への影響を注視するスタンスを強調しています。
政策金利は引き下げられたものの、むしろタカ派的な決定と言えるでしょう。
さっそく米国の長期金利は上昇しています。
米10年国債金利はFOMC前の12月17日の4.40%から12月27日には4.62%まで上昇しました。
マーケットは再びインフレ警戒モードに変わっています。
トランプ政権で不安視される関税引き上げの影響
その根底となっているのがトランプ次期政権での経済政策です。
金融政策と並ぶもうひとつの注目ポイントと言えるでしょう。
トランプ政権では「関税引き上げ、減税、移民規制」が3大政策とされています。
このすべてが実施されると米国では確実にインフレが高進し、財政赤字が増大すると予想されます。
中でも最大の不安材料が関税の引き上げです。
日本経済新聞とジェトロの分析によれば、関税の引き上げは米国自身への影響が大きく、引き上げなかった場合と比べて米国のGDPは▲1.1%のマイナスの影響が生じると見られます。
トマトやアボカドなどの野菜、果物の輸入価格への影響が大きく、物価上昇が米国の消費を押し下げ、それが労働者の就労機会の減少につながると見ています。
中国には▲0.3%のマイナスの影響が生じる見通しです。
関税の引き上げで工場での生産や物流が中国から他のアジア諸国に移ることが最大の要因です。
「トランプ1.0」では中国に高い関税が課されたため、メキシコやカナダは輸出を伸ばすことができました。
今回は逆に、関税の引き上げられるメキシコ、カナダのGDPが押し下げられます。
影響がどこまで広がるのか、企業も投資家もそれを見定めようとしています。
設備投資に影響が広がるのか、ここからの精査が必要です。
史上初10万ドル突破のビットコイン
株式市場よりもさらに注目を集めたのがビットコインです。
史上初めて10万ドルの大台に到達しました。
昨年暮れの4万ドルから1年でほぼ2倍に上昇しています。
ビットコインは今年1月にETFの上場が承認されました。
既成社会から逸脱することを好むトランプ次期大統領は、以前からビットコインを称賛してやみません。
次期SEC委員長に仮想通貨の推進派であるポール・アトキンス氏を指名したたことも、ビットコインの10万ドル突破をサポートしていると見られます。
日銀の姿勢に見え隠れする株価急落の負の影響
日本で注目すべきニュースは、日銀の金融政策決定会合です。
FOMCの結果判明とほぼ同時に行われた今回の決定会合において、金融政策は変更なし。0.25%に据え置かれました。
ほぼ市場の予想通りの結果でしたが発表直後のドル円相場は円安方向に反応し、1ドル=155円台で推移しました。
日本の景気実勢や物価見通しは日銀の予想通りに推移しています。
そのため7月の利上げ以降、日銀は慎重なスタンスを維持しています。
FRBは金融を緩和しながらも「予想以上にタカ派」と称されました。
反対に日銀は「予想以上にハト派」と見られます。
7月末から8月にかけて株価が急落した負の影響を避けようという姿勢も見え隠れします。
そのため2025年に利上げが行われたとしても、2回程度にとどまるとの見方が市場では支配的です。
期待と不安の混在で保つ均衡
理由のひとつが12月の日銀短観です。
12月13日(金)に発表され、大企業・製造業の業況判断DIは、前回の「プラス13」から「プラス14」に小幅ながら改善しました。
先行きは▲1ポイント悪化の「プラス13」です。
改善は2四半期ぶりのことで、景況感はまずまずというところです。
エコノミストの事前の予想は「マイナス3」あたりに絞られていました。
企業の想定為替レートは2024年度で1ドル=146円88銭です。
前回調査の145円15銭からわずかに円安方向に振れました。
2024年度の設備投資計画は、全規模・全産業で前年度比+9.7%の増加で、前回調査(+8.9%)から上方修正されています。
年央を軸に株式市場は激しく上下しましたが、総じて国内外での堅調な景気動向と企業業績、為替市場での円安、企業から発せられる大規模な自社株買い、事業構造改革の進展などが重なって、12月の株式市場は安定的に推移しました。
年末ぎりぎりになって日経平均が4万円の大台にタッチする場面も見られるほど、先行きに対して期待と不安が混在する均衡を保っているように見えます。
HOTな銘柄
続いて12月相場で上昇が目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。
年の締めくくりにふさわしく、12月の株式市場では実に多彩な物色テーマに沿った上昇銘柄が次々と登場しました。
自動車セクター
その中でも飛び抜けた存在が自動車セクターです。
年末近くになって日産自動車、ホンダ、三菱自動車の3社が経営統合に向けて協議に入ったというビッグニュースが12月18日付の日本経済新聞1面に大きく報じられました。
日産自動車(72017201、第14位、359円→480円、+33.7%)
ホンダ(72677267、第47位、1,292円→1,535円、+18.9%)
三菱自動車(72117211、第11位、392円→533円、+35.9%)
これをきっかけに3社の株価が大きく上昇しましたが、中でもインパクトの大きかったのが日産自動車です。
この報道に先立つ1か月前に日産自動車が発表した2025年3月期・第2四半期の決算では、営業利益が前年比▲90%減の329億円となりました。
日産自に限らずあらゆる自動車メーカーが足元の金利上昇とEV不振によって販売減少に直面しており、中でも日産自は米国における販売奨励金(インセンティブ)の負担が重くのしかかっています。
中間決算での業績不振を反映して、これまでの今通期見通しをいったん取り下げ、期末の最終損益と支払い配当金を「未定」に変更しました。
今期末に大幅な最終赤字に転落する可能性が早くも取りざたされ、株価はここから大幅安となりました。
市場の一部では早くも日産自が再び経営危機に直面するとの見方もささやかれ始めていたタイミングで報じられたのが今回の「日産自ーホンダー三菱自」による3社経営統合の協議入りです。
会社側はすぐさま否定のコメントを発表しましたが、翌週の12月23日には正式に経営統合に向けて検討を始める基本合意を締結したことを発表しました。
三菱自もそこに加わります。
形式は経営統合ですが、その実態は市場ではホンダによる日産自の救済合併と受け止めています。
このようなケースでは企業買収と同様に、救済される側の企業の株価は上昇し、救済する側の企業の株価は下落します。
したがって日産自と三菱自の株価は大幅に上昇しました。
ホンダの株価は本来であれば下落しても不思議ではないのですが、この基本合意に合わせてホンダは発行株式総数の23.7%にのぼる11億株、金額で1.1兆円にものぼる巨額の自社株買いを発表したことから、株価は急伸しました。
日本でも「勝者一人勝ち」の様相がますます強まる市場原理の浸透する中で、ホンダ、日産自、三菱自がそろって上昇するスキームが年の押し迫る最後の最後に動き出した一件です。

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この事例に突き動かされたことでもないのでしょうが、トヨタ自動車の株価も大きく上昇しています。
トヨタ自動車(72037203、第27位、2,552円→3,146円、+23.3%)
12月25日の日本経済新聞1面には、トヨタが2030年ごろに向けてROE(自己資本利益率)を20%まで引き上げる方針であることが報じられました。
トヨタの現在のROEは11%強です。 日本の上場企業の平均は8-9%台と見られており、それから見れば平均以上になりますが、しかしそれでも世界のメジャープレーヤーと比較すれば見劣りします。
報道ベースではありますが、グローバル規模で事業を展開するトヨタだからこそ、世界標準のROEまで引き上げる気構えを示したことから株価は年末に向けて大きく上昇し、日経平均が年の瀬ぎりぎりに4万円の大台乗せを果たす原動力となりました。
トヨタにつられて日野自動車(72057205、第6位、396円→566円、+42.8%)、 愛三工業(72837283、第15位、1,330円→1,764円、+32.6%)、 カヤバ(72427242、第37位、2,443円→2,939円、+20.3%)など他の割安な水準にある自動車セクターも一斉に動意づいています。

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防衛、データセンターなど先端技術
2024年の総まとめの月として、年間を通して物色人気の高まった銘柄群をあらためて評価する動きも見られました。
造船・重機では川崎重工、IHI、三井E&Sがそれまでの上昇基調を12月もしっかりと維持しました。
川崎重工(70127012、第17位、5,536円→7,280円、+31.5%)
IHI(70137013、第35位、7,717円→9,311円、+20.7%)
三井E&S(70037003、第36位、1,528円→1,842円、+20.5%)
防衛関連株として川崎重工、IHIが高値をうかがう展開となっています。
この分野では三菱重工業(70117011)が圧倒的な存在として君臨していますが、先駆していただけに三菱重工の株価は12月を通じて上値の重い展開となりました。
その分、物色の勢いが出遅れ気味の両社に広がっています。
川崎重工は防衛関連株としての位置づけとともに、環境関連株としても評価する動きも強まっています。
EVに搭載した使用済みリチウムイオン電池から炭酸リチウムを99%以上の高い純度で回収するリサイクル技術を開発したことも評価されています。
三井E&Sは、ベトナムにおいて港湾クレーンの受注拡大の期待が強まっています。
東南アジアのハブとなりつつあるベトナムでの港湾整備の需要増、それとともに安全保障の観点からも中国製以外のクレーンを採用する動きが強まると見られます。
生成AI向けにデータセンター建造の需要も強く、引き続きフジクラ(58035803、第30位、5,322円→6,548円、+23.0%)の株価も12月を通じて堅調でした。
年明け早々の1月3日に米国のマイクロソフトは、800億ドル(12兆円)ものAI向けデータセンターの建設を発表しました。
しかもその巨額投資を今年6月までに実施する計画です。
フジクラをはじめデータ伝送のための光通信用部品のニーズは一段と高まることが予想されます。
データセンター内での蓄電システムを手がける武蔵精密工業(72207220、第39位、3,305円→3,960円、+19.8%)や、 データを格納するクラウドの構築に定評のあるテラスカイ(39153915、第40位、1,924円→2,304円、+19.8%)も根強い人気を保っています。

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株主優待、配当金の拡充
12月に新たな物色テーマとして浮上したのが株主還元です。
株主優待の新設や拡充、配当金を手厚くする銘柄の株価が急騰しました。
中でも目を引いたのがマーケットエンタープライズ(31353135)です。
12月19日に「株主優待制度の拡充」を発表し、そこから株価が急騰しました。
マーケットエンタープライズ(31353135、第2位、848円→1,425円、+68.0%)
従来は6月末日の株主に対して、100株以上保有していれば500円分のクオ・カードを進呈するというものでした。
それを2025年6月末以降は、6月末と12月末の年2回、 500株以上を保有する株主に対して25,000円分のデジタルギフト(クオカードペイ、Amazonギフトカード、PayPayマネーライトなど)を進呈すると内容を大幅に引き上げました。
株主優待が得られる要件を100株から500株に引き上げていますが、変更前の10倍もの特典が得られるとあって市場での人気が急上昇しています。
ほかにも同じような事例が相次いで見られました。
エイチーム(36623662、第4位、660円→997円、+51.1%)は株主優待を新設しました。
2025年1月末を基準として1月末、7月末に500株以上を保有する株主に対して、クオカード10,000円を進呈するとしています。
ミガロHD(55355535、第5位、1,719円→2,574円、+49.7%)は持株会社に移行して1周年を記念して、3月末の株主に対して100株につき1,000円分のクオ・カード進呈を、今期末に限り100株で5,000円分のクオ・カードと5倍に引き上げました。
好調な企業業績を背景に、配当金を引き上げる企業も堅調です。
サイボウズ(47764776、第9位、2,118円→2,897円、+36.8%)はグループウエア「キントーン」が好調で、今期と来期の配当金を大幅に引き上げる見通しを発表して株価が高騰しました。
ブイチューバーのエニーカラー(50325032、第16位、2,141円→2,816円、+31.5%)も初の配当金実施を公表して株価が連日の大幅高となりました。
NISAを通じて個人投資家のすそ野が拡大しています。
それとともに株主への分配を手厚くする企業への評価がかつてなく高まっているように感じられます。

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業績好調な銘柄
業績の好調な銘柄に投資することは株式投資の基本中の基本です。
12月相場でも好業績が確認された銘柄には引き続き買いが集中しています。
WNIウェザーニューズ(48254825、第7位、2,783円→3,870円、+39.1%)
代表的な事例は気象情報サービスのウェザーニューズです。
12月27日に2024年5月期の第2四半期の決算を発表し、売上高は116億円(+4%)、営業利益は16億円(+33%)と好調でした。
船舶向け気象情報サービスに加えて、近年力を入れていたクラウド経由のSaaS型サービスのニーズが軌道に乗り始めています。
異常気象が続く状況で気象情報サービスの需要が高まっています。
コイン駐車場「タイムズ」を展開するパーク24(46664666)も業績好調で大きく上昇しました。
パーク24(46664666、第28位、1,796円→2,214円、+23.3%)
12月16日に発表した2024年10月期の本決算は、売上高が3,709億円(+12.4%)、営業利益は386億円(+21.0%)でした。
海外駐車場が営業利益段階で苦戦しているものの、引き続き国内の駐車場事業が伸びており、さらにカーシェアリング、レンタカーを扱うモビリティ事業も堅調です。
過去最高益を大幅に上回りました。
続く2025年10月期の見通しも、売上高で4,040億円(+8.9%)、営業利益で390億円(+0.8%)と慎重ながらも順調な伸びを見込んでいます。
商業ディスプレイの丹青社(97439743、第29位、808円→996円、+23.3%)は、2025年1月期の第1四半期決算で営業利益が35.7億円(+83.4%)も増加したことが好感されて年末に急騰しています。
百貨店を中心にインバウンド消費の拡大が続いており、あらゆる商業施設が店頭のディスプレイや店舗構成、改築、レイアウト変更などを活発化させていることがプラスに作用しています。
百貨店業界からもJ.フロント リテイリング(30863086、第42位、1,780円→2,128円、+19.6%)は2025年2月期の第3四半期に、営業利益が511億円(+66.7%)も大幅に拡大しました。
J.フロントに連動して、三越伊勢丹(30993099、第20位、2,131円→2,753円、+29.2%)、 松屋(82378237、第50位、869円→1,032円、+18.8%)などの百官店株があらためて物色されています。

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1年の総まとめにふさわしく、12月相場は幅広い銘柄と物色テーマが混在しながら活躍したことが見てとれます。
COOLな銘柄
続いて12月相場で値下がりの目立った銘柄、COOLな銘柄です。
12月相場では業績の悪化した銘柄、あるいは不祥事の表面化した銘柄の下落が際立ちました。
業績悪化
東邦亜鉛(57075707、第1位、795円→548円、▲31.1%)
非鉄精錬の大手、東邦亜鉛は亜鉛と鉛の製錬が中心です。
鉛は自動車用バッテリーとして、亜鉛は自動車ボディのメッキや鋼板に用いられます。
前2024年3月期の決算において、最終損失が▲464億円に達する厳しい業績となったことを明らかにしました。
そこから事業再生計画の策定にとりかかり、今期の業績見通しは「未定」としていました。
12月18日に今2025年3月期の売上高が1,162億円(▲11%)、最終損益が▲54億円の赤字になると発表し、同時に投資ファンドのアドバンテッジパートナーズなどに対して第三者割当増資を実施し、合計で75億円を調達する事業再生計画を公表しました。
オーストラリアの2か所の鉱山売却、亜鉛製錬設備の操業停止、160人規模の希望退職の募集なども併せて発表しています。
ここから経営建て直しを図ります。
近年は非鉄市況の変動が激しく、同時に環境保全に対する社会の選択肢も厳格になっています。
高コスト体質の東邦亜鉛にとって厳しい経営環境が続いており、外部からの資本注入をテコとして事業のスリム化、合理化を進めます。
通期の赤字継続と希薄化を嫌気して株価は大幅に下落しました。
ユニチカ(31033103、第6位、194円→142円、▲26.8)
繊維の名門、ユニチカも11月28日に不振をきわめる繊維事業から撤退を含む構造改革案を発表して株価が下落しました。
今回撤退するのは衣料用の繊維事業、不織布、産業用繊維の一部です。
トータルで売上げの4割にもなります。取引銀行に対しても430億円の債権放棄を要請し、その上で地域経済活性化支援機構に第三者割当増資を行って350億円を調達します。
今2025年3月期は最終損益で▲103億円の赤字を見込んでいますが、食品包装用フィルムなど次なる収益源も育っており、今回の改革によって2030年3月期に営業利益で65億円を目指す計画です。
ユニチカはこれまでに何度も構造改革を実施して事業の立て直しを図ってきました。
それらの方策が実を結ぶことなく、またもや新たな改革案を模索することとなります。
計画が発表されても株価は下げ止まらず、12月相場を通じて下落基調をたどりました。

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不祥事の表面化
アドバンクリエイト(8798 8798、第2位、640円→450円、▲29.7%)
生損保の代理店をつとめるアドバンスクリエイトは、12月半ばに監査法人からの指摘で2020年9月期~2023年9月期までの4期に及ぶ不適切会計(売上高の過大計上)があった事実を公表しました。
会社側は第三者による調査委員会を設置し、調査を進めた結果、1月10日に不適切会計が疑われる会計上の問題があったことを発表しました。 2024年9月期の有価証券報告書の提出は現時点では延期されたままです。
FPパートナー(73887388、第4位、2,855円→2,058円、▲27.9%)は、販売する保険契約の比較推奨販売について、保険会社から便宜供与を受けていた点に金融庁が調査に入りました。
それを嫌気して株価は急落しています。
サンウェルズ(92299229、第10位、892円→710円、▲20.4%)は、運営するパーキンソン病の専門介護施設で過剰な診療報酬の請求があったとの疑いから、特別調査委員会を設置して調査を続けています。
そのため2024年4-9月期の中間決算の発表は、現時点も延期されたままとなっています。
エイチ・アイ・エス(96039603、第16位、1,775円→1,444円、▲18.6%)は傘下企業がコロナ対策の雇用調整助成金を不正に受給した疑いから、第三者による特別調査委員会が調査を進めています。
これによって決算発表を延期し、2024年10月期の最終損益の黒字見通しを「未定」に変更しました。年間配当も「無配」に変更したため、株価は一本調子に下落しています。
年末ぎりぎりにはこのような銘柄には処分売りが集中して出てきます。
いつとはわからないまま売り物が途切れるまで下落基調が続きます。

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以上

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