石破政権の行方に注目高まる日本株市場 HOTな銘柄、COOLな銘柄 石破政権の行方に注目高まる日本株市場 HOTな銘柄、COOLな銘柄

石破政権の行方に注目高まる日本株市場 HOTな銘柄、COOLな銘柄

株式アナリストの鈴木一之です。
「HOTな銘柄、COOLな銘柄」の2024年9月号をお届けします。

大荒れとなった8月に続いて、東京株式市場は9月も激しい値動きが見られました。

9月上旬の相場は半導体株を中心に需要不振との見方が広がり、株価は軟調な状態が続きました。
しかし中旬から下旬にかけては、米国の金融政策と日本の自民党総裁選を巡って上昇含みの動きに転じました。

日経平均は1か月間で大きく下がって上がって、結果的に9月末は4万円の大台目前まで上昇しています。
ボラティリティ(変動性)のきわめて高い、荒っぽい値動きが続いています。

9月は記録づくめの月となりました。
この夏の世界の気温は2年連続で史上最高を更新しました。
ロサンゼルス・ドジャーズの大谷翔平選手は史上初めて、1シーズンで50本塁打・50盗塁を達成しました。
世界最高の米メジャーリーグの歴史でも誰も達成したことのない偉業です。

大相撲秋場所(9月場所)では、二所ノ関部屋の関脇、大の里関が14日目に13勝1敗で2度目の優勝を決め、新入幕から9場所目の優勝を成し遂げました。
場所後には大関昇進が決まり、史上最速のスピード出世を果たしました。

スポーツ界の目覚ましい活躍とは裏腹に、日経平均の9月の騰落率は▲1.89%でした。
8月初旬に1日の値幅で史上最大の下げを記録して以来上下の値動きが大きくない、これで3か月連続での下落となりました。

TOPIXも同様に9月は▲2.47%で、こちらも3か月連続で下落しました。
日経平均以上に下げ幅が大きくなっています。

下げの中心は大型株です。
東証グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)は8月に逆行高を示しましたが、9月は▲2.54%と反落しました。
大型株からの資金シフトが期待されたものの、そのような期待は空振りに終わりました。
株式市場は8月の大きなショック安の直後だけに警戒感が強く残っています。
9月相場の関心は次の3つに集中しました。

(1)半導体株の動向(生成AIを巡って)
(2)米国の金融政策(9月FOMC、インフレと景気動向)
(3)自民党総裁選

9月相場も話題は米国経済の動向に集中しました。
9月中旬のFOMCを控えて月初から神経質な動きとなりました。

9月4日(水)に日経平均は▲1639円という大きめの下げを演じました。
8月に史上最大の下げ幅(▲4451円)を経験しているので、下げ幅に慣れてしまっているところもありますが、この日は今年3番目に下落幅を記録しています。

きっかけは3連休明けの米国市場でNYダウ工業株が▲627ドルの下げ、NASDAQも▲577ポイントの大幅安を記録したことです。

月初恒例の経済データのうち、ISM景況感指数・製造業が47.2となり、市場予想を下回ったことから米国のリセッション懸念が再び台頭してきました。

景況感の悪化以上に、市場の心理を冷え込ませたのが半導体セクターの大幅安です。
フィラデルフィア・SOX指数はこの日、▲7.7%も下げました。エヌビディアが▲9.5%も下落し市場心理を冷え込ませました。

TOPIX、日経平均、グロース250

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エヌビディアは前週に決算発表を行い、5-7月期の着地は予想を上回りましたが、株価は弱い反応にとどまりました。
株式市場では、巨額の資金が投じられるAI投資が回収できないのではないかという懐疑的な見方が強まっています。

折しもエヌビディアには、司法省から反トラスト法違反の疑いで質問状が発せられたことも重なり、これも半導体セクター全体の株価を軟化させました。

生成AIに関連する銘柄は、米国だけでなく世界中で苦戦を余儀なくされています。
セコイア・キャピタルによれば、エヌビディアのGPU(画像処理半導体)の購入額をペイするためには、クライアント各社が合計で6000億ドル(87兆円)の売上高を挙げる必要があるそうです。

それに対して実際の売上高は1000億ドルにとどまっており、不足分の5000億ドル(72兆円)が目下のところ過大評価となるわけです。
果たして今後の生成AIの成長でこのギャップが埋められるのかどうか、それともバブルなのか、その点がマーケットでは大きな疑問として突きつけられています。

来年以降の各社のAI投資が伸び悩む可能性も指摘されており、それらが重なって東京市場でも東京エレクトロン(80358035)、ディスコ(61466146)、レーザーテック(69206920)などの半導体関連株が軟調な動きを余儀なくされました。
これが日経平均の軟調な動きに直結しています。

続いて米国の金融政策です。
FRBは9月17-18日に開催されたFOMCにて、ついに政策金利の引き下げを決定しました。

FFレートの引き下げ幅は通常の2回分となる▲0.5%で決着しました。
2022年3月(あるいは2021年11月)から続けられた米国の金融引き締め局面はとうとう終止符が打たれ、NYダウ工業株はさっそく史上最高値を更新しました。

記者会見に臨んだパウエル議長は、市場の予想を上回る利下げに踏み切ったことを「後手に回らないための決意の表れ」と説明しました。
景気後退のリスクに備える予防的な利下げだと位置づけています。

この決定に関してはFRBの内部でも様々な意見があったようです。
引き下げ幅を0.25%にとどめるよう主張したメンバーが7人、逆に0.75%まで引き下げ幅を広げるよう主張したメンバーも1人いました。
引き下げゼロとする人も2人いて、これまでになく意見が分かれたFOMC会合でした。

あわせて公表された今後の経済見通しは、2025年以降も米国の景気は失速せずインフレも沈静化する「ソフトランディング」が、これまでと同様に想定されています。
2025年末の失業率は中央値で4.4%、6月の見通し(4.2%)から引き上げられました。

FFレートの見通しは2024年末には4.5%です。
今年残り2回のFOMCで、それぞれ▲0.25%ずつの利下げが行われることを示しています。

さらに2025年末は3.5%へと、6月時点の4.25%から大きく引き下げられています。
この見通しに沿って進めば、来年の利下げ幅は▲1.0%に達することになります。
FRBの金融政策は一段とハト派に傾いたという印象が強くなっています。

ただしより長期にわたる将来の見通しは3.0%まで引き上げられました。
これがいわゆる「中立金利」です。
この辺になると政策への評価が市場でも微妙に分かれており、為替市場ではFOMCの結果判明の直後にはドル安・円高に振れたものの、すぐにドル高・円安に転じています。

年内のFOMCは2回残されており、次回は大統領選の直後となる11月6-7日に開催されます。
その時に米国経済と金融市場はどのような動きをたどっているのか、興味深い展開がここでも待ち受けているように思います。

確かなことはこれからも従来と同じように、毎月の経済統計データに目を凝らす展開が続くことになるということです。

そして自民党総裁選です。

9月27日(金)に投開票が実施され、その前後で株式市場では目まぐるしい動きが見られました。

9月23日(月):(秋分の日で休場)
9月24日(火):37,940円△217円
9月25日(水):37,870円▲70円
9月26日(木):38,925円△1,055円
9月27日(金):39,829円△904円(←総裁選当日)
9月30日(月):37,919円▲1910円

投開票日の前日、9月26日(木)に△1,055円もの大幅高を記録した時点で、マーケットは米国のFOMCでの利下げ決定(▲0.5%)がいまだにプラスの効果をもたらしていると楽観的に見ていました。

あるいは週前半の思いもかけないタイミングで、中国が預金準備率の引き下げを中心とする景気刺激策を打ち出してきた効果が大きいと見る向きもありました。
半導体セクターの急反発や、9月末恒例の配当金の再投資(1.2兆円ほど)への期待があったのも事実です。

それが金曜日も、配当落ち分を即日に埋めて実質的に△1000円を越える大幅高を記録したところから、徐々に冷静ではいられなくなってきました。
日経平均はあっという間に4万円の大台回復に迫るまで上昇しています。

ここに至ってようやく自民党総裁選をにらんだ思惑という株価上昇理由が後講釈的に浮上してきました。

結果的に石破茂・元幹事長が5度目の挑戦で勝利を収めましたが、9月27日(金)の第1回目の投票の時点では、高市早苗・経済安全保障相がトップでした。
結果が判明した金曜日の13時過ぎからは、株価の上昇スピードが一段と加速しました。

高市氏は「アベノミクスの継承」を経済政策の柱として据えています。
サイバーセキュリティなど危機管理や成長分野への積極財政を支持しており、金融政策に関してもアベノミクスと同様に金融緩和の継続を前面に打ち出しています。

したがって7月末に決定された日銀の金融政策(政策金利の引き上げ)に対して、強いトーンで日銀を批判する見解を明らかにしています。

株式市場にはいまだに2012年暮れに登場した「アベノミクス」の記憶が鮮明に残っています。
今回もマーケットは「アベノミクスの再来」をことのほか評価している様子で、為替市場では円安・ドル高が進み、それが株価の上昇を一段と刺激して、金曜日の大引けまで「高市総裁」の誕生を、両手を挙げて歓迎するという動きとなりました。

結果的にそれはぬか喜びに終わりました。
局面が変わったのは9月27日の15時過ぎです。
第1回目トップの高市氏と第2位の石破氏による決戦投票は、石破氏が215票、高市氏が194票で石破氏が逆転勝利を収めました。

石破氏が自民党第28代総裁に選ばれ、10月1日に召集される臨時国会で第102代首相に指名されます。

この結果が伝わったのが金曜日の15時過ぎです。
すでに現物市場の取引は終了しており、オープンしている先物市場やCFD市場に売りが集中しました。
先物市場は急落し、大阪取引所の先物価格は▲2410円の37,440円、CFD市場の日経平均は▲2422円の37,337円で明け方まで推移しました。

この相場急変は石破氏への評価が低いというよりも、高市氏が掲げた「アベノミクスの再現」への期待が剥落した、いわば「高市トレードの巻き戻し」の側面が主因です。
「高市首相」誕生、アベノミクス再来への理想買いは、「石破首相」で現実売りに変わりました。

これだけの変化、期待の剥落はすべて金曜日の現物取引の終了後に起こっています。
実際に週明けの9月30日(月)は日経平均が▲1910円も下落する激しい下落となりました。

石破氏が実際に総裁選で掲げた経済政策は以下のようなものです。

・経済成長:3年でデフレ脱却、最低賃金1500円(2020年代、全国平均)
・エネルギー:原発、再エネの活用(岸田政権の政策を踏襲)
・財政・金融:法人増税、「1億円の壁」是正、日銀の独立性を尊重
・地方創生・人口減:婚姻率の上昇、東京一極集中を是正

石破氏の政策を論じる上で、マーケットが焦点とするのは金融所得課税の扱いです。
総裁選の討論会でも再三取り上げられました。

前任の岸田首相の経済政策を踏襲するのであれば、新NISA導入で沸き上がる「貯蓄から投資」への流れに水を差すことは避けなくてはなりません。
海外投資家も岸田政権のこの政策を高く評価しています。

総裁選での訴えかけと、現実に自民党総裁に就いてから実施する政策には違いがあって当然と言えます。
防衛費の増額に関連する財源確保も含めて財政政策をどのように扱っていくのか。
石破氏は極端な「財政再建論者」とは見られてはおりません。
この点が今後の石破政権の行方と株式市場の動向を占う上で大きな争点となりそうです。

続いて9月相場で上昇が目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。

9月相場は揺れに揺れた1か月間だったために、株式市場の物色の方向性がほとんど定まりませんでした。
テーマらしいテーマが存在せず、大半が個別銘柄の材料を個々に評価する動きに終始しました。

引き続き「電力設備投資」に関連する銘柄は堅調さが目立ちました。
筆頭格は8月に続いてフジクラ(58035803)です。

フジクラ(58035803、第36位、4,207円→4,818円、+14.5%)

フジクラは8月8日に第1四半期の決算を発表し、そこで営業利益が244億円(+94.5%)も大幅に伸びたことから、通期の業績見通しを早くも引き上げました(売上高:8300→8700億円、営業利益:700→890億円)。
生成AIの拡大に関連してデータセンターの需要が急増しており、そこでのコネクタの拡大に期待が寄せられています。

さくらインターネット(37783778、第5位、3,435円→4,290円、+24.9%)も大きく上昇しました。
クラウドサービスの受注が好調で、9月20日に2025年3月期の業績見通しを、売上高は290億円(+33%)、純利益は15億円(2.4倍)へと増額修正しています。

さくらインターネットは2030年度までにデータセンター用サーバーに1000億円投資する計画も発表しており、そこには経済産業省が補助金を出します。
外国企業に頼らず政府クラウドを構築する先兵となる活動が好感されています。

電設工事の住友電設(19491949、第8位、3,575円→4,400円、+23.1%)も大きく上昇しました。

住友電設は電力会社向けの受注をはじめ、空調、プラントなど電気設備工事を幅広く手がけています。
筆頭株主が住友電気工業(58025802)で発行株数の50%を保有しており、親会社による吸収合併、あるいは分離独立など再編期待も株価を後押ししています。

株式

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石破政権が誕生し防衛・軍事関連株も引き続き堅調でした。

三菱重工(70117011、第87位、1,943円→2,118円、+9.0%)
IHI(70137013、第21位、6,338円→7,443円、+17.4%)
川崎重工(70127012、第44位、5,151円→5,805円、+12.7%)

シンフォニアテクノロジー(65076507、第28位、4,375円→5,050円、+15.4%)
日本製鋼所(56315631、第61位、4,538円→5,024円、+10.7%)

石破氏と言えば防衛政策が持論です。
東西分断は一段と強まり、台湾を巡る中国の軍事圧力の緊張が日々高まっている状況です。
自民党総裁に誰が就任したとしても日本の防衛力強化の方針は緩むことはないと見られます。

先駆した三菱重工の上昇力が鈍ると、すかさず川崎重工や日本製鋼所などの出遅れ銘柄に資金シフトが始まり、物色対象が一段と広がっています。

同じようにサイバーセキュリティ強化の要請からNTTデータG(96139613、第25位、2,213円→2,575円、+16.3%)の株価が上昇しました。
富士通(67026702、第74位、2,678円→2,936円、+9.6%)も堅調です。

能登半島は元旦の大地震の傷跡が癒える間もなく台風の被害に遭遇しています。
一刻も早い復旧が望まれます。
世界有数の災害多発国である日本において、石破新政権は新たに「防災庁」を設置する方針です。

能美防災(67446744、第4位、2,318円→2,916円、+25.8%)は火災報知機で知られていますが、それだけでなくガス漏れ警報設備や高感度の煙監視システムなど、法人向けに防災設備の製造から修復工事まで手がけています。

帝国繊維(33023302、第14位、2,564円→3,075円、+19.9%)は災害時の緊急エアーテント、組立式シャワー、救助・捜索活動に用いる有線ドローンを供給しています。
モリタHD(64556455、第19位、1,859円→2,203円、+18.5%)も自走式トイレを被災地に提供しています(能登半島地震の際にも活躍しています。)

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中国関連株の一角も物色されました。
中国がついに経済対策を発動したことを受けて、資生堂(49114911、第18位、3,261円→3,875円、+18.8%)、サイゼリヤ(75817581、第48位、5,090円→5,710円、+12.2%)が久しぶりに動意づきました。

9月相場でプライム市場の値上がりトップとなったトランコム(90589058、第1位、7,030円→10,660円、+51.6%)は、トラック輸送の大手です。
米国のベインキャピタルと組んでMBOによる非公開化する道を選択しました。 プレミアムは+41%となる13,000円で、経営の自由度を高めて新規事業に取り組みます。

入院セットサービスを展開するエラン(60996099、第10位、819円→996円、+21.6%)は、エムスリー(24132413)の資本参加を発表しました。
TOBによってエムスリーがエランの発行株数の50%強を取得します。
エランはエムスリーの子会社として上場を維持することとなります。

トヨタ系鉄鋼メーカーの愛知製鋼(54825482、第13位、3,270円→3,925円、+20.0%)には、村上世彰氏の長女である野村絢氏が大量保有報告書を提出し、同社株を5%強取得したことが明らかとなりました。

トヨタグループのように強固な資本構成を持っていても、今やアクティビストは株式の取得を躊躇することはありません。
経営効率の向上を狙っています。

続いて9月相場で下落が目立った銘柄、「COOLな銘柄」です。

9月で下落の目立った銘柄は、やはり業績の悪化が予想されるグループで、代表格が半導体セクターです。
8月の株式市場でも半導体関連株は軟調な値動きでしたが、9月も総じて弱い動きが見られました。

レーザーテック(69206920、第20位、28,080円→23,605円、▲15.9%)
ディスコ(61466146、第49位、42,660円→37,490円、▲12.1%)
KOKUSAI(65256525、第11位、3,915円→3,180円、▲18.8%)

日本マイクロニクス(68716871、第12位、4,800円→3,935円、▲18.0%)
ルネサスエレクトロニクス(67236723、第13位、2,514円→2,079円、▲17.3%)
タツモ(62666266、第15位、3,540円→2,935円、▲17.1%)

日本電子(69516951、第21位、6,544円→5,559円、▲15.1%)
サムコ(63876387、第25位、3,925円→3,355円、▲14.5%)
野村マイクロ(62546254、第28位、2,813円→2,426円、▲13.8%)

三井ハイテック(69666966、第33位、1,041円→901円、▲13.4%)
イビデン(40624062、第46位、5,051円→4,425円、▲12.4%)
ソシオネクスト(65266526、第47位、3,233円→2,836円、▲12.3%)

きっかけは三井ハイテックの通期業績の下方修正です。

三井ハイテックは半導体の後工程で用いられるリードフレームの大手企業です。
加えて近年はEV用モーターの主要部品である「モーターコア」も収益源として存在感を高めていました。

9月10日に三井ハイテックが2025年1月期の第2四半期決算を発表し、そこで通期の業績見通しを引き下げました。
売上高は従来の2370億円から2140億円(+9%)へ、営業利益は従来の210億円(+16%)から130億円(▲28%)へと、増益見通しが減益見通しに変わりました。
純利益もそれまでの140億円から95億円(▲39%)に下方修正されました。

世界中の自動車メーカーのEV販売が急速に落ち込んでおり、それに伴ってリードフレームが目標を下回ったことが理由です。
決算資料の中には半導体の需要低迷、在庫調整の長期化、受注の低迷が指摘され、半導体業界の直面する状況の厳しさがあらためて浮かび上がっています。

半導体セクターが好調だった時期、1月決算の三井ハイテックは真っ先に増額修正を発表してきました。株価が急騰し、それが他の半導体株を押し上げる光景を何度も見てきました。

半導体セクターの「指標銘柄」のような位置づけでしたが、それが現在ではすっかり逆になり、業績悪化の指標となっています。
このあたりに現在の半導体セクターの置かれている厳しい状況をうかがい知ることができます。

株式

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半導体以外にも、これまで好業績への期待や独自のビジネスモデルへの高い評価によって株価が高水準に位置していた銘柄に対して、ネガティブなニュースが相次いだことも9月相場の特徴のひとつです。

サンウェルズ(92299229、第1位、2,901円→1,617円、▲44.3%)は、難病とされるパーキンソン病専門の介護施設を運営しています。
同社が運営する介護施設で過剰な訪問看護や保険金の不正請求が行われていると、9月2日に共同通信が報じました。

会社側は事実無根であるとすぐに発表しましたが、その後も株価の下落は止まりません。
そうこうするうちに9月20日には、会社側が自ら特別調査委員会を設置して、不正請求の有無を調査すると発表しました。
現在はその結果待ちという状況です。

協和キリン(41514151、第4位、3,325円→2,527円、▲24.0%)は、期待の大型新薬であるアトピー性皮膚炎治療薬「ロカチンリマブ」の臨床試験の結果を巡って株価が下落しました。

先に共同開発の研究パートナーである米国のアムジェンが、米国の投資家向け説明会において試験の結果が芳しくないとの説明をしたところから株価が急落しました。

その後に協和キリンは試験結果が有効であると正反対のリリースを出しましたが、株価には目立った反応は見られません。

第一三共(45684568、第5位、6,108円→4,709円、▲22.9%)も、英国のアストラゼネカと共同開発する乳がんの治療薬「ダトポタマブ デルクステカン」が最後の臨床試験で有意な結果が得られなかったと発表したことから株価が下落しました。

両社とも事前の期待が大きく、それだけに失望売りが勝っていると見られます。

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以上

東証プライム市場
鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
「きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
Twitterアカウント
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