テクノロジー株の牽引でS&P500とNASDAQは最高値更新 HOTな銘柄、COOLな銘柄 テクノロジー株の牽引でS&P500とNASDAQは最高値更新 HOTな銘柄、COOLな銘柄

テクノロジー株の牽引でS&P500とNASDAQは最高値更新 HOTな銘柄、COOLな銘柄

株式アナリストの鈴木一之です。
「HOTな銘柄、COOLな銘柄」の2024年6月号をお届けします。

米国の金融政策を巡って株式・債券市場では、5月まで不透明感の強い展開が続きました。
しかしそれも徐々に吹っ切れてきたように変化したのが6月相場の特徴です。

6月半ばに開催されたFOMCまではピリピリした状況が続き、神経をとがらせていました。
それが過ぎると徐々に落ち着きを取り戻し、月末になると今度は「選挙イヤー」にふさわしく各国の政治情勢に市場の論点が集まりました。

個別銘柄の話題は引き続きエヌビディアに集中しています。

NYダウ工業は5月半ばにわずか1日だけ、終値で4万ドルの大台を突破しました。
しかしその後は6月を通じて頭打ちとなりました。
その一方でS&P500とNASDAQは6月もそろって史上最高値に進みました。

エヌビディアへの一極集中がピークを迎え、エヌビディアを除いた他の6銘柄(アップル、メタ、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット、テスラ)に徐々に人気が戻ってきました。

日経平均は膠着感の強い展開を余儀なくされたものの、6月相場では月後半から上昇力を取り戻しました。
月間では+2.85%と久しぶりに大きく上昇し、5月の+0.21%の膠着状態からひとまず抜け出しつつあります。

そして日経平均は7月早々に4万円の大台を突破するのですが、それは来月の当コーナーで述べようと思います。

TOPIXも続伸し、6月の上昇率は+1.33%となりました。
5月の+1.06%からさらに拡大しています。
銀行株を中心に大型のバリュー株が終始堅調で、TOPIXは日経平均に対して6月相場でも一貫して優位性を保ちました。

小型株市場にも反発の気運が生まれています。
東証グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)は5月に▲4.48%と大きく下落しましたが、6月は+6.96%へと4か月ぶりに反発しました。

プライム市場ではバリュー株が優位性を保っていますが、小型株にはさすがに下げ過ぎからの反発が見られました。

米国の株式市場は、6月半ばまで長期金利の低下によって堅調な動きが見られました。
NYダウ工業株は5月の+2.30%に続いて、6月も+1.12%としっかりしています。

それ以上に堅調なのがS&P500です。
5月の+4.81%に続いて6月も+3.47%と大きく上昇しました。
NASDAQ総合指数も5月の+6.89%に続いて、6月は+5.96%と大幅に続伸しており、そろって史上最高値を更新しています。

4月末にピークを打った長期金利は5月から6月にかけて低下基調をたどりました。
米国の10年物国債金利は4月末の4.68%から5月末には4.50%を経て、6月末には4.39%まで低下しました。

原油価格は、6月初旬にWTI先物価格で72.90ドルまで急低下した後、そこから反発に転じ6月末には81.46ドルまで値を戻しました。
上値は不安定な供給面が頭を抑え、下値は堅調な景況感が支えています。

TOPIX、日経平均、グロース250

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4月、5月に続いて6月もテクノロジー株の話題でもちきりでした。中心はエヌビディアです。

エヌビディアの株価は史上最高値を更新し続けており、6月初旬に時価総額はついに3兆ドルの大台を突破しました。
この時点でアップルを抜き去り、マイクロソフトに次いで世界第2位の超大型企業へと躍進しています。

エヌビディアがほぼ独占的に供給する生成AI向けの画像処理半導体(GPU)に対する期待が一段と高まっています。
データセンター向けの半導体で世界シェアの8割を握っています。
市場規模は2028年には1277億ドル(20兆円)へと、現在の12倍に拡大すると見られており、その頂点にエヌビディアが君臨しています。

旗艦チップである「H100」は、1秒間に4000兆回の計算能力を持っているとされています。
4000兆回と聞いてもまるで想像がつきません。「H100」の値段は1台当たり600万円近くします。
オープンAI社の開発した「ChatGPT」はその「H100」を数万個搭載しているとされ、対抗して独自の生成AIを開発するグーグルやアマゾンも同じようにエヌビディア製GPUを大量に調達しています。

日立製作所は先日行った事業説明会において、長期的かつ全社的な事業計画を丸ごと生成AIの未来に賭けるという意味合いのプランを発表しました。
ますます「H100」をはじめとする画像処理半導体の未来に期待が寄せられます。

世界は生成AIを巡る開発競争に踏み込んでおり、エヌビディアの驚異的な利益率と株価の上昇率はこれらのトレンドに支えられています。
当然のことながらエヌビディアの株価は高い成長性を見越して割高に評価されており、この6月はエヌビディアにとって株価の上昇ラウンドの最初のピークになりつつあるようです。

アップルの株価が史上最高値を更新したのをきっかけに、6月中旬以降はマイクロソフト、アマゾン、アルファベット、メタがそろって史上最高値を更新し、テスラも急速に息を吹き返しています。

ここでの中心はやはりアップルです。
時価総額はエヌビディアとマイクロソフトを抜いて再び世界最大に踊り出ました。
6月10日に恒例の年次開発者会議を開催して、そこで「アップル・インテリジェンス」を発表しました。
「iPhone」などの主要なアップル製品に生成AIを搭載して、オープンAIの「ChatGPT」とも連携します。

スマホで世界トップシェアを持つ「iPhone」が生成AIを搭載すれば、消費者とAIがより身近になると期待されます。
アップルは生成AIという新たな潮流に乗り遅れたと見られていましたが、今年の開発者会議ではオープンAIの「ChatGPT」を丸飲みすることによって、ライバルの技術を全面的に取り入れる方針を打ち出しました。

発表直後のアップルの株価は下落しましたが、その週のうちに切り返して史上初めて200ドルの大台を突破しています。
エヌビディアが小休止を入れる一方で、それ以外の「マグニフィセント6」の株価が再び輝きを取り戻し、ナスダックおよびS&P500の史上最高値の更新に大きく寄与しています。

6月第2週は「中央銀行ウィーク」でもありました。
米国でFOMCが開催され、政策金利は予想通り据え置かれ、四半期ごとのドットチャートに市場の関心が集中しました。

FOMCメンバーの金利見通しはドットチャートで示されます。
今回、メンバーが予想する金利水準の中央値は、3か月前の「年3回」から「年1回」に引き下げられました。
事前の予想は「年2回」の引き下げでしたので、FOMCメンバーは予想以上に物価上昇と金融政策の先行きをシビアに見ていることになります。

PCE(個人消費支出)物価指数の見通しも、2024年は2.4%から2.6%、2025年は2.2%から2.3%に引き上げられました。
2%の物価目標から遠ざかる一方です。

FOMCの内容は予想以上にタカ派的なものでした。
それでもその日の米国市場では、ナスダックとS&P500は大きく上昇して史上最高値を更新しています。
これはFOMCの結果というよりも、その日の朝に発表された米5月CPI(消費者物価指数)が前月比で2年ぶりに横ばいと、落ち着きを示したことが主因です。

物価水準が落ち着いていれば、ドットチャートがどうであれ、いずれFRBは金融緩和に転じる、とのシナリオは崩れておりません。
それがあらためて確認されました。
テクノロジーを中心としたナスダックとS&P500に投資資金が向かいやすい状況が続いています。

6月13-14日には日銀の金融政策決定会合も開催され、そこで国債買い入れの減額が決定されました。

市場の一部で予想されていた「政策金利の引き上げ」は見送られましたが、それでも「国債買い入れの減額」と決定しただけで、週末の日本株は上昇し、為替市場では円安が進みました。

6月の会合では国債の買い入れ額などの具体的な決定はなされず、詳細は次回の7月30-31日の決定会合で決められます。
それまで債券市場の関係者との意見調整を重ねて、市場に影響を与えないように配慮すると日銀は発表しています。
3月のマイナス金利解除に続いて、量的緩和の「量」の面でも金融の正常化がさらに進められたこととなりました。

政策の詳細は7月まで待たなくてはなりませんが、日銀が国債の買い入れ額を減らす方針を示したことによって、長期金利の上昇圧力が強まることになります。
日本も事実上の「量的引き締め」の局面に入りました。
植田総裁が述べるように、国債保有額を理想とする水準に近づけるには長い時間を要するでしょう。

その間に金融情勢がどのように変化するのか、予想するのはきわめて困難です。
7月の金融政策会合の内容を今から「予告」するという、今回のような異例の決定を含めて、植田体制の手腕が問われる地点に差しかかっています。

6月は選挙に関する話題も豊富でした。
今年は「選挙イヤー」です。
6月初旬に行われた欧州議会選挙では、ヨーロッパの多くの国で極右政党が躍進しました。
その結果を受けてフランスではマクロン大統領が突如として下院に当たる国民議会の解散をするというギャンブルに打って出ました。
初回投票は6月30日で、決選投票は7月7日です。

この決定を受けて、フランスの株式市場は1週間で▲6.2%も下落しました。
週間の下げ率としては2022年3月以来のことです。

仮にフランスで急進右派が議席数の多数を占めるようになれば、大衆迎合的な財政拡張政策が採られる恐れが生じます。
厳しい財政規律を求めるEUの規制に抵触する恐れがあり、国債市場でのフランスの信用格付けに影響が出てきそうです。

その欧州では、ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪れて金正恩総書記と会談を行いました。
両首脳は「軍事同盟」とも見られる「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結しました。

今回のロシアと北朝鮮による新たな条約の締結が、すぐに世界に対して影響を与えることはないはずです。
しかし西側世界での極右政党の躍進と合わせて、ロ朝間の新たな同盟関係が地政学リスクを一段と高めることは間違いなさそうです。

米国の大統領選にも大きな動きがありました。

6月27日には史上最も早いタイミングで、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領とによる第1回目のテレビ討論会が行われ、その様子はリアルタイムで世界中に流されました。

イメージ作りが主眼とされるテレビ討論会において、バイデン陣営としては「史上最高齢の大統領」という欠点を払拭したかったでしょうが、結果として出来栄えは惨憺たるものとなりました。

バイデン氏は言い間違え、言いよどみ、声のかすればかりが目立ち、精彩を欠いてひどい内容だったと評価されています。
バイデン氏を次期大統領候補に指名してよいものかどうか、民主党はパニックに陥っているとメディアは報じ、「いま投票するとしたら誰が大統領にふさわしいか」との世論調査では、ことごとくトランプ氏が優勢に立ちました。

9月以降もテレビ討論会は残されており、民主党の戦略立て直しの時間も十分にありますが、それでも大統領選で「トランプ大統領」再任の可能性が強まったとの見方が優勢となっています。
民主党内でも「バイデン降ろし」の動きが強まっています。

トランプ氏が大統領に就任した場合、米国の政策のかなりの部分が大きく転換する可能性があります。
通貨、エネルギー、環境、通商、移民、医療保険、予算配分、そして対ロシア、対中国、イスラエルなどの外交戦略、どの程度の影響が出てくるのか計り知れません。
マーケットではその影響を模索する動きが始まっています。

通貨政策に関しては、トランプ氏は「強いアメリカ」の再現を狙っており、バイデン政権でのドル安を「大惨事」と評しています。
通貨政策の転換が始まるとの見方が浮上する一方で、トランプ氏が掲げる財政拡張政策を実施するとインフレはさらに過熱しかねません。
そうなれば、金利は上昇して円売り・ドル買いが進むことにもなり得ます。
両方のリスクをはらみながら市場での模索が続いています。

日本ではかなりの混乱を招いた末に改正政治資金規正法が参院を通過して成立しました。
岸田政権は通常国会終盤での衆院解散・総選挙は断念したようです。

「骨太の方針」(経済財政運営の基本方針)の骨子も明らかになり、ラピダスを中心とした次世代半導体の量産体制や、自動運転の運行プロジェクト、リスキリング推進策、円安対策、などが盛り込まれました。

証券取引等監視委員会は、三菱UFJフィナンシャルグループ(83068306)傘下の三菱UFJ銀行と証券2社に行政処分を行うよう金融庁に勧告する方向です。
非公開の顧客情報を同意なしで傘下の銀行と証券会社で共有していた疑いがもたれています。

トヨタ自動車(72037203)、 マツダ(72617261)、 ヤマハ発動機(72727272)、 ホンダ(72677267)、 スズキ(72697269)の自動車5社に対して、国土交通省は型式指定での不正があったとして立ち入り検査を行いました。
該当する車種には生産停止処分が出されています。

レーザーテック(69206920)には不正会計の可能性があるとの理由から、空売りファンドが空売りを開始したと伝えられています。
ソフトバンクG(99849984)はアクティビティストのエリオット・マネジメントが株式を大量に取得して、自社株買いを要求しています。

続いて6月相場で上昇が目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。

上昇した銘柄のリストを見てはっきりしているのは、「防衛関連株」のようなごく一部の銘柄を除いて、明確な物色テーマがあまり見られないという点です。

物色テーマがないというのではなく、さまざまな物色テーマが乱立していると表現した方がよいかもしれません。
あらゆる業種からあらゆる銘柄が、次々と上昇を開始している状況が6月相場の特徴です。

それらの銘柄の多くは事業規模が小さく、これまで株式市場であまり注目されなかった銘柄に偏っています。
そのような銘柄を保有している投資家が少ないため、少しの買い材料、小さな買いのエネルギーによって大きく値を飛ばします。
6月相場ではそんな銘柄が相次いで出現しました。

大きな枠組みでは再三触れている「防衛関連株」です。
三菱重工(70117011、第19位、1,368円→1,723円、+26.0%、57,908億円)、 IHI(70137013、第51位、4,048円→4,805円、+18.7%、7,273億円)、この2銘柄が双璧で6月相場を通じて堅調な動きとなりました。

日本は長らく防衛予算が名目GDPの1%以内にとどめられていたため、防衛装備品を製造する産業のすそ野が非常に狭められていました。
したがって元から「防衛関連銘柄」とされる企業が少なく、そのほとんどが未上場企業です。
それがGDPの2%まで防衛予算が急増したことから、ごく限られた企業に受注が集中しています。

弾丸などの火薬を製造するカーリット(42754275、第50位、1,219円→1,447円、+18.7%、341億円)も堅調です。

株式

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電子部品株の一角も久しぶりにまとまって物色されました。

TDK(67626762、第20位、7,851円→9,865円、+25.7%、37,427億円)
太陽誘電(69766976、第27位、3,307円→4,086円、+23.6%、5,092億円)
日本電波工業(67796779、第9位、1,088円→1,439円、+32.3%、332億円)

電子部品と半導体は電子機器の中で動作する点でよく似ています。
半導体関連株はすでに何か月にもわたって大きく上昇してきたために、株価は調整局面にあります。

その中でアドバンテストが久しぶりに値上がりランキング上位に登場しました。

アドバンテスト(68576857、第37位、5,313円→6,425円、+20.9%、47,443億円)

アドバンテストは半導体の中でも先行して調整に入っていた分だけ、その後の反転・上昇も一足早いタイミングで訪れているようです。
6月25日に発表した3か年の中期経営計画が市場で高く評価されており、調整脱出のための新たな買い材料も加わりました。

しかしアドバンテストのような動きは半導体関連株の中ではむしろ例外で、いまだ総じて調整局面の中にあると見られます。
それだけに半導体以外の電子部品株の動きの良さが目立ちます。

フェライトのTDK、コンデンサの太陽誘電、水晶振動子の日本電波工業は典型的な受動部品で、電子部品の中核的な銘柄です。
スマホとPCがコロナ禍で大幅に売上げを伸ばし、その反動で現在は厳しい在庫調整に直面しています。
それが今年春ごろから徐々に在庫調整を終えて反転局面に入っています。

電子部品株は素材分野も含めてすそ野が広く、このジャンルに反転・上昇の気運が生まれてくると、日本の産業界全体にも動きが出てくることになります。
そのためにも今後も注意を怠れません。

株式

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6月の上昇率ランキングのトップ、ティーガイア(37383738、第1位、1,942円→3,050円、+57.1%、1,703億円)は携帯販売代理店です。
6月半ばに非上場のecboと資本・業務提携して、荷物預かり場所のシェアリングサービス「ecbo cloak」を始めると発表しました。

ecboは駅構内や街中のカフェなどで荷物預かりサービスを行っています。
今後はティーガイアの遊休スペースを活用してゆく計画です。
資本・業務提携の発表をきっかけに長らく低迷していたティーガイアの株価は大幅に上昇しました。

値上がり第2位の藤田観光(97229722、第2位、6,300円→9,740円、+54.6%、1,167億円)は、日本庭園で有名な「雅叙園」を経営しています。

インバウンドによる観光需要が好調で、業績の上方修正が見込まれていました。
そこに筆頭株主のDOWAホールディングス(57145714)の持ち株売却観測が伝わり(会社側からの発表ではありません)、そこから株価が急上昇しました。

ミガロHD(55355535、第3位、1,638円→2,459円、+50.2%、361億円)は投資用マンションの開発を行っています。
マンション販売は好調で今期も最高益更新が見込まれています。

株式市場では同社のグループ企業「DXYZ」が展開している顔認証システム「FreeiD」に着目しています。
マンションの出入り口のオートドアロックにこの顔認証システム「FreeiD」を装着すれば、既存マンションの付加価値を高めることができます。

東京23区の新築マンションの販売価格が平均で1億円を越えており、比較的安い中古マンションに買い手の人気が流れています。
中古マンションの付加価値を高める顔認証システムの需要も高まるとの理由から、株価は大きく上昇しました。

ファンケル(49214921、 第4位、1,973円→2,750円、+39.4%、3,326億円)は提携先のキリンホールディングス(25032503)が公開買い付けを発表して株価が急謄しました。

永谷園HD(28992899、第5位、2,223円→3,095円、+39.2%、541億円)も創業一族によるMBOが発表され、同じように株価が急上昇しています。

アイザワ証G(87088708、第6位、2,004円→2,664円、+32.9%、989億円)は4月末の時点で「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の一環で、株主還元の強化策を発表しました。

計画によれば、2025年3月期から2028年3月期までの4年間にわたって、総額で200億円以上の株主還元を行い、そのうち100億円を特別配当として株主に分配する方針です。

これによって年30円前後の普通配当に加えて、2025年3月期から2028年3月期までは特別配当として年70円(中間35円、期末35円)が上乗せして支払われることになります。
アイザワ証券Gの株価は、4月末の発表直後から2か月間にわたってほぼ一本調子の上昇基調をたどっています。

ユニチカ(31033103、第8位、243円→322円、+32.5%、186億円)は高分子化合技術を得意とする高機能素材メーカーです。

4月初旬に世界最高レベルの表面積を持つ「ハイエントロピー合金」を開発したと発表して株価が急騰しました。
この技術は、次世代エネルギーとして期待される水素を生成する際の電極としての応用が期待されます。

続けて6月には、ポリエステルの重合に際して金属を使用しない触媒を開発したと発表しました。
従来の触媒にはアンチモン、ゲルマニウム、チタンなどが使用されていましたが、レアメタルの枯渇、囲い込みによる価格高騰を避けるために、金属を用いない触媒の開発が望まれていました。

今回の発表で金属以外の触媒を使って、従来品と同じ性能のポリエステルを重合する技術を世界で初めて開発したことから、ここでもユニチカは技術のブレークスルーを果たしたことになります。

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続いて6月相場で下落が目立った銘柄、「COOLな銘柄」をご紹介します。

下落が目立ったのは「電力株、および電力設備投資関連株」です。
これは5月相場で大きく上昇した銘柄群でもあります。

エヌビディアは史上最高値を更新した後も高値付近にとどまっていますが、生成AIの普及に必要とされるデータセンターの建設に関連する空調工事関連株や、電力株、電力設備投資関連株は総じて軟調な動きとなりました。

北海道電力(95099509、第2位、1,650円→1,194円、▲27.6%、2,451億円)
北陸電力(95059505、第20位、1,162円→1,019円、▲12.3%、2,126億円)
中部電力(95029502、第21位、2,167円→1,901円、▲12.3%、14,374億円)
九州電力(95089508、第35位、1,832円→1,657円、▲9.5%、7,836億円)
東北電力(95069506、第47位、1,591円→1,452円、▲8.7%、7,259億円)

中でも電力株は総じて軟調です。
5月相場でそろって+20%から+45%も大幅に値上がりしましたが、その反動安が広がっています。

このような状況は日本ばかりでなく、米国や欧州の主要株式市場でも同じ状況が見られます。
公共株のひとつである電力セクターは、6月相場は軟調に推移しました。

データセンターのさくらインターネット(37783778、第9位、5,220円→4,345円、▲16.8%、1,820億円)、 変電設備の明電舎(65086508、 第13位、4,280円→3,650円、▲14.7%、1,656億円)、電力工事のユアテック(19341934、 第42位、1,644円→1,495円、▲9.1%、1,071億円)、空調設備専業で最大手の高砂熱学工業(19691969、 第22位、6,460円→5,720円、▲11.5%、3,796億円)の株価もいずれも軟調でした。

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快調に上値追いを続けていた半導体株にも頭打ちの動きが見られました。
米国市場でもエヌビディアの上昇についていけない半導体株が目立つようになっています。

レーザーテック(69206920、第23位、40,490円→36,090円、▲10.9%、32,549億円)
ソシオネクスト(65266526、第8位、4,578円→3,809円、▲16.8%、6,806億円)
三井ハイテック(69666966、第25位、7,031円→6,285円、▲10.6%、2,297億円)

デジタルトランスフォーメーションの時代を本格的に迎えて、半導体市場の先行きは明るい見通しに彩られているのですが、主力の半導体関連株はさすがに上昇一服となってきたようです。

レーザーテックには空売りファンドがカラ売りを仕掛けているという観測も強まっていますが、その後の続報は入ってきていません。

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以上

鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
「きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
Twitterアカウント
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