能登半島地震で被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
株式アナリストの鈴木一之です。
2024年2月の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」をお送りいたします。
全体相場の振り返り
2024年2月は東京株式市場の歴史上、長く語り継がれる月となることでしょう。
日経平均が1989年末に記録した史上最高値を更新したためです。
詳しくは後段で報告しますので、まずは2月の株式データを確認します。
2月の日経平均は+7.93%の上昇となりました。
35,000円台から39,000円台まで、ほぼ一貫した上昇基調が見られます。
月間の上昇幅は1月の+2822円(+8.43%)に続いて、2月も+2880円とさらに拡大しています。
TOPIXも日経平均とともに上昇してはいるものの、2月の上昇率は+4.86%にとどまりました。
テクノロジー株の上昇に支えられた日経平均の上昇ほどには値上がりせず、物色の二極化がはっきりしました。
小型株市場は依然として不人気の状態が続いていますが、それでもテクノロジー株が上昇したことによって、東証グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)の上昇率は+8.43%に達しました。
1月の上昇率(+0.85%)を大きく上回っています。
米国市場も堅調な動きが見られました。
史上最高値を更新したNYダウ工業株は2月も+2.22%と上昇を継続し、これで4か月連続の上昇となりました。
S&P500も最高値を更新しつつ続伸しています。
2月の上昇率は+5.18%に拡大しました(1月は+1.59%)。
米国の主要3指数の中ではNASDAQ総合指数の上昇が最も大きく、2月は+6.11%に達しました(1月は+1.02%)。
最高値更新まであと一歩というところに迫っています。
年が明けても米国経済は堅調です。
不安視されていた景気の後退は訪れず、その一方でインフレは抑制されています。
2023年は急激な政策金利の引き上げがあったにもかかわらず、米国景気は目下のところきわめて堅調に推移しています。
これを受けて米国株式市場も、金融当局の意図をはるかに越えてしっかりしており、今年中に始まると見られる利下げへの転換を早くも織り込み始めているようです。
米国の10年国債金利は1月末の3.91%から、2月末には4.25%まで上昇しました。
これまでであれば長期金利がここまで大きな上昇を示せば、株価はたちまち激しく値下がりしたはずです。それがインフレは抑制され、それに伴って次なる金融緩和の余地が拡がっており、現在の株式市場は「楽観的過ぎるほどの楽観」に傾いていると指摘されます。
FRBがインフレ抑制に成功しつつあるという見方を反映して、原油価格は小動きに終始しました。
WTI先物価格は1月末の76.00ドルから2月末には78.25ドルへと、わずかな値上がりにとどまりました。
34年ぶり最高値更新!日本の株式市場に新たな歴史が刻まれる
さて、日経平均です。
日本の株式市場にとって、2024年2月22日(木)は永遠に忘れられない日となりました。
天皇誕生日の祝日を翌日に控えたこの日、日経平均は終値で39,098円68銭(+836円52銭、+2.2%)を記録して、34年ぶりに史上最高値を更新しました。
ニュース番組でも大きく取り上げられ、日本中が大騒ぎとなりました。
いつか来ると希望していた史上最高値更新の日が、これほど早く訪れるとは想像していませんでした。
それほどまでに日本の株式市場にとって、80年代バブルの象徴でもある1989年12月29日のあの「38,915円」は高い壁でした。
それをあっさりと塗り替えたのです。
この日、日経平均が1日で+800円以上も急騰して最高値を更新した直接のきっかけは、米国の半導体大手・エヌビディア(NVDA)の予想をはるかに上回る好決算です。
生成AIのデータ学習に不可欠の画像処理半導体(GPU)で世界トップのエヌビディアが11-1月期の決算を発表しました。
事前の期待値がかなり高かったために、予想を上回るのは簡単ではないと誰もが警戒していました。
しかし実際に発表された内容は、事前の予想をはるかに上回るものでした。
合わせて発表された次の2-4月期の売上げ見通しもきわめて好調で、エヌビディアの株価はアフター市場で+10%以上も急伸しました。
東京株式市場はこの影響を世界で最も早く反映します。
2月22日(木)は寄り付きから東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)、スクリーンHD(7735)など、半導体関連株が軒並み大幅高となりました。
これによって日経平均は史上最高値を大きく更新することとなったのです。
生成AIの後押しだけではない、日本株の上昇の背景にある変化
生成AIの世界的なブームは昨年(2023年)から始まったばかりです。
今後も急拡大が続き、2030年までは年平均で+30%以上の高い成長が続くと予想されています。
インターネットの発明に匹敵するほどの革命的な技術革新と見られており、それだけに世界中の投資資金が集まっています。
その中心がエヌビディアです。
しかし日経平均が最高値を更新したのは、エヌビディアの躍進だけが理由ではありません。
日本経済が徐々に世界から注目され、東京株式市場が大きく動き始めた、より本質的な理由として以下のようなものが挙げられます。
【日本の株式市場の上昇要因】
- (1)デフレからの脱却(インフレに直面する日本経済、設備投資が回復)
- (2)日銀の金融政策(金融緩和を継続)
- (3)企業による改革進展(東証による「資本コストを意識した経営」の要請)
- (4)好調な企業業績(最高益が相次ぐ、内部留保の蓄積、増配+自社株買い)
- (5)賃上げの浸透(構造的な人手不足、人材囲い込みを急ぐ大企業)
- (6)インバウンド消費の拡大(長期デフレと円安のもたらす物価安)
- (7)新NISAのスタート(貯蓄から投資へ資金シフト)
- (8)中国への警戒感(経済の不振、反グローバル化での製造拠点の移転)
これらの日本経済を取り巻くファンダメンタルズの変化、大きな好転が何重にも重なって株式市場が目覚ましく上昇しています。
日本経済が大きく変化しており、それが今回の株価上昇の本質と考えられます。
このような日本経済の一大転換をすばやく察知したのは海外の投資家です。
長年にわたって日本のマーケットをチェックし続けてきた外国人投資家が、変貌しつつある日本経済の現状を目の当たりにして、途切れなく日本の株式市場に投資資金を移し始めています。
その結果として、日経平均が大きく押し上げられることとなりました。
自動車のほか多セクターの企業にも見られる好業績
上記(4)の「好調な企業業績」を象徴する存在がトヨタ自動車(7203)です。
2月6日(火)の午後1時半にトヨタ自動車が第3四半期の決算を発表し、純利益は前年比2.1倍の3.9兆円に増額修正されました。
これまでソフトバンクG(9984)が持っていた3.5兆円を更新して史上最高の利益となっています。
合わせてトヨタ自動車は通期の業績見通しを上方修正し、純利益は+84%増の4.5兆円になると明らかにしました。
これまでの予想を+5500億円も上回ります。得意としているハイブリッド車の売れ行きが伸びており、決算データの増額修正余地はまだありそうです。
ダイハツの販売減少分を補って余りある、驚くべき収益力を発揮しています。
トヨタばかりではありません。
ホンダ(7267)は通期の純利益が過去最高に迫る9600億円(+47%)となる見通しを発表し、SUBARU(7270)も通期の純利益が3400億円(+70%)になると見通しを増額しました。
自動車セクターのほかにも、三菱重工業(7011)は第3四半期の純利益が前年比2.1倍の1380億円に達し、過去最高を更新しました。
好決算に合わせて1株→10株の株式分割を発表しています。
三菱商事(8058)の第3四半期の純利益は▲27%減の6966億円でしたが、これは前年が資源価格の上昇で良過ぎた反動が色濃く表れています。
実際には事前の予想に沿った内容で、むしろ5000億円の自社株買いを明らかにしたことから株価は急騰しました。
富士フイルムHD(4901)も第3四半期で1737億円(+13%)の純利益を稼ぎ出し、決算期を3月に変更したニトリHD(9843)も第3四半期の純利益は685億円と実質的に増益を維持しました。
極めつけはソフトバンクG(9984)です。
ソフトバンクGはいまや半導体の設計で世界トップを走る英アーム社の筆頭株主であり、株式の9割を保有しています。
そのアームが10-12月期の決算ですこぶる好調な状態を示したことから、ソフトバンクGの株価は大幅高となりました。
今や半導体関連株の仲間入りを果たしています。
ソフトバンクG自身も10-12月期の決算では最終損益が9500億円の黒字となり、5四半期ぶりの黒字を計上しました。
生成AIブームの中核にあるソフトバンクGの株価が復調の兆しを見せています。
各セクターの主要企業の決算内容は、どのセクターも飛び抜けて良好な状況が見てとれます。
HOTな銘柄
2月相場で上昇が目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。
グループ分けすると、「生成AI、半導体関連株」、「好業績を発表した銘柄」の2つのカテゴリーに分かれます。これは1月相場とまったく同じです。
生成AI関連株と業績のよい銘柄に物色人気が集中していることがよくわかります。 それこそが日経平均を最高値まで押し上げる原動力なのです。
生成AI、半導体関連株
半導体関連株は連日のように市場の内外で話題となっています。
それらの株価は驚くほどの上昇を見せていますが、中でも市場の関心を集めているのが東京エレクトロンです。
東京エレクトロン(8035、第24位、27,865円→36,870円、+32.3%)
半導体製造装置で世界トップの技術と規模を誇る東京エレクトロンは、2月9日(金)に第3四半期の決算を発表しました。
半導体市場は在庫調整の真っただ中にあり、東京エレクのこの期の売上高は1兆2832億円(前年比▲22.3%)、営業利益は3110億円(▲33.1%)と軟調でした。
しかしすでに最悪期は脱しており、会社側は通期の見通しを増額修正しています。
新しい見通しは、売上高で1兆8300億円(前年比▲17.2%)、営業利益で4450億円(▲28.0%)としています(従来の見通しは売上高が1兆7300億円(前年比▲21.2%)、営業利益が4010億円(▲35.1%)でした)。
輸出規制に抵触しない中国向け(非先端分野)の半導体製造装置が伸びており、同じく将来のAI向けの需要も膨むことが予想されており、このタイミングでの増額修正となっています。
さらに東京エレクトロンは、この時に自社の業績見通しばかりでなく、世界の半導体市場全体の見通しも引き上げています。
それによれば、世界の前工程の製造装置市場は、2024年にはこれまでの最高記録だった2022年に並ぶ1000億ドル(15兆円)に達すると見ており、さらに2025年も前年比2ケタの伸びが見込まれます。
3か月前の決算時は、2024年と2025年合わせて2000億ドルという見通しでした。
中国市場が高水準で推移すること、およびAI向けサーバーの市場が急拡大することが予想の前提となっています。
この上方修正の発表は週末の取引終了後に行われたため、3連休が明けた2月13日(火)には東京エレクトロンは1日で+13%以上も値上がりし、終値として初めて3万円の大台を突破しました。
東京エレクトロンは、日経平均採用銘柄の中でも指数影響度の最も大きな銘柄のひとつでもあることから、この日だけで日経平均を+400円近く押し上げました。
2月13日の日経平均は1日で+1066円も値上がりし、これは歴代上昇率の第17位となります。
このような東京エレクトロンの記録的な株価の上昇が号砲となって、2月も半導体関連株が上昇率ランキングの上位に続々と登場しました。
SCREENホールディングス(7735、第39位、14,670円→18,735円、+27.7%)は、昨年11月初旬から一貫した上昇基調をたどっています。
すでに上昇期間は4か月目を迎えていますが、いまだに上値を買い上がる動きが継続しました。
ウエハー洗浄装置では世界トップシェアを有しており、東京エレクトロンと並ぶ日本では数少ない世界的な半導体関連企業です。
超純水製造装置を手がける野村マイクロ・サイエンス(6254、第15位、13,950円→19,100円、+36.9%)も、昨年11月から「大口受注を獲得した」との会社リリースをきっかけに動意づきました。
年明け以降、株価上は休養時間がありましたが、それが2月相場では再び大きく上昇を開始しました。連日のように上場来高値を更新しています。
さくらインターネット(3778、第4位、3,620円→6,450円、+78.2%)は1月相場で株価の上昇率がプライム市場のトップとなったばかりですが、そこからさらに一段高となりました。
東京エレクトロンと並んで、2月相場の物色の柱となっています。
同社の株価が昨年11月から動意づいた背景は、政府系クラウドの契約締結です。
経済産業省が推進する「クラウドプログラム・供給確保計画」に同社が選定されたことがきっかけでした。
その後、12月にはエヌビディアのジェンスン・フアンCEOが来日し、日本に研究開発拠点を設ける構想があることを明らかにしました。
この時は提携先の企業名は明らかではありませんでしたが、連携先の1社にさくらインターネットが加わることが判明し、株価は2月半ばから再び騰勢を強めています。
ほかにも半導体製造工程では欠かせないウエハー研磨装置の荏原(6361、第21位、9,353円→12,615円、+34.9%)や、ウエハーの電気特性を計測する「プローブカード」で世界トップクラスの日本マイクロニクス(6871、第5位、4,450円→7,520円、+69.0%)も大きく上昇しました。
さらに、ウエハー上に塗布するフォトレジストで世界トップクラスの東京応化工業(4186、第20位、3,403円→4,607円、+35.4%)、クリーンルームに不可欠な空調設備の高砂熱学工業(1969、第41位、3,420円→4,365円、+27.6%)。
ウエハー搬送装置のローツェ(6323、第44位、16,620円→21,040円、+26.6%)、真空蒸着技術に秀でるアルバック(6728、第45位、7,300円→9,210円、+26.2%)、ウエハー研磨装置のフジミインコ(5384、第46位、2,977円→3,755円、+26.1%)、にまで物色のすそ野が一段と広がっています。
2月相場の上昇率上位にランクインした銘柄で、忘れてならない存在がソフトバンクグループ(9984、第18位、6,460円→8,790円、+36.1%)です。
FRBの政策金利引き上げによって始まったNASDAQ市場の大幅な下落で、過去3年間は非常に浮き沈みの激しい業績を余儀なくされました。
そのソフトバンクGが大きく変貌を遂げています。
きっかけは英アーム社の存在です。ソフトバンクGが株式の9割を保有する半導体設計大手のアームが、2月7日に2023年10-12月期の決算を発表しました。
売上高は8億2400万ドル(1200億円、前年比+14%)と大幅な回復です。
同時に明らかにした翌2024年1-3月期の売上高の見通しは、8.5-9.0億ドルと市場の見通しを大幅に上回るものとなりました。
アームの株価はNASDAQのアフター市場で+25%高まで急騰しました。
予想を上回る増収の原動力が、AI向け半導体の需要増です。
これを受けてソフトバンクGも大幅高となり、その後もアーム社の株価に連動して動いています。
ソフトバンクGの立ち位置が「半導体関連株」として、あらためて固められた感があります。
好業績を発表した銘柄
2月相場でも決算発表で好決算を発表した銘柄が盛んに物色されました。
月間の株価騰落率で値上がり率のトップとなったのは三井E&S(7003)です。
株価は763円から1,844円まで2.4倍に上昇しました。
2月14日に発表された2023年3月期の第3四半期決算では、売上高が2153億円(前年比+24.3%)、営業利益は134億円の黒字(前年は▲25億円の赤字)に好転しました。
環境性能の高い新造船の建造が増えており、造船業界は手持ち工事量を十分に確保しています。
同社の舶用エンジンも需要が好調で、第3四半期も引渡しが順調に進んでいます。
加えてアジアを中心に港湾物流事業も順調に拡大し、第3四半期累計での受注高は、前年比+6.5%の2279億円に達しました。
今期は6期ぶりの復配に踏み切る計画です。
この決算発表の翌日に株価はストップ高・比例配分となり、さらに翌日から上値を一段と駆け上がる展開となりました。
実際に同社の業績は大きく好転しています。
2022年3月期まで5期連続で営業赤字を計上しましたが、そこから事業構造改革を断行し、総合重機メーカーへの脱皮を図り、2018年には社名をそれまでの三井造船から「三井E&Sホールディングス」に変更しました。
昨年からは純粋持株会社から事業持株会社に移行して「三井E&S」として新たなスタートを切っています。
親会社の業績好調がそのまま伝播して、子会社の三井海洋開発(6269、第30位、2,324円→3,050円、+31.2%)も決算発表を好感する形で大幅高となりました。
ちなみに「三井E&S」のE&Sは、「Engineering & Services for Evolution & Sustainability」の頭文字を取っています。
エンジニアリングとサービスで社会に貢献するという意味がこめられており、現在の中計では2030年までに、マリンを軸として脱炭素社会と人口縮小社会の課題を解決することを目指しています。
同じく業績が急回復しているという点では、電線大手のフジクラ(5803)も同様です。
株価は1,224円から1,828円まで1か月で+49.4%も上昇して、2月相場のランキング第6位となりました。
2月8日に発表された2023年3月期の第3四半期決算は、売上高が5989億円(▲2.3%)、営業利益は514億円(▲9.0%)と、前年比ではマイナスの状態でした。
しかし詳細に見ると、サプライチェーンの混乱は想定以下にとどまり、顧客である自動車業界は被害が少なく生産は順調に回復しています。
それに伴って主力製品のワイヤーハーネスが伸びており、減益ながら通期業績の上方修正に踏み切りました(売上高:7600億円→7900億円(▲2.0%)、営業利益:540億円→630億円(▲10.2%))。
他の電線メーカーも業績の回復が顕著に見られ、フジクラも含めて電線業界に対する市場の評価は日を追って高まっています。
世界的なスポーツシューズメーカーのアシックス(7936、第10位、4,529円→6,368円、+40.6%)は12月決算です。根強いランニングブームが続いており、前期は売上高が5704億円(+17.7%)、営業利益も542億円(+59.4%)とどちらも史上最高を記録しました。
期末配当を従来見通しの35円から40円に引き上げ、年間配当金(65円)も過去最高です。
株価は大きく上昇し、時価総額が初めて1兆円の大台を突破しました。
界面活性剤や難燃剤、帯電防止剤の第一工業製薬(4461、第12位、2,529円→3,515円、+39.0%)、空調機器の東テク(9960、第16位、5,580円→7,610円、+36.4%)、キャラクター収入が好調のサンリオ(8136、第19位、6,188円→8,389円、+35.6%)も決算内容を好感して株価が大きく上昇しています。
COOLな銘柄
続いて2月相場で値下がりの目立った銘柄、「COOLな銘柄」です。
業績の悪かった銘柄
1月相場に続いて2月も、決算の芳しくなかった企業には厳しい市場の洗礼が待ち受けています。
機関投資家のポートフォリオのコア銘柄と目されるような企業ほど、決算悪化による失望売りが広がっています。
オムロン(6645、第22位、6,710円→5,552円、▲17.3%)
2月5日に発表された2023年3月期の第3四半期の決算では、売上高は6079億円(▲4.7%)、営業利益は265億円(▲63.5%)と大幅な減益となりました。
3か月前の第2四半期の段階で、営業利益は206億円(▲50.4%)とかなり悪化していたのですが、そこからさらに減益幅が拡大するという結果となりました。
失望感から株価は発表翌日にストップ安まで下落し、その後も軟調な展開となっています。
血圧計などのヘルスケア事業は引き続き好調ですが、売上規模で最も大きな制御機器事業が中国、アジアの落ち込みによって▲7割を超える減益だったことが響いています。
電子部品事業も軟調でした。半導体、二次電池の設備投資延期、縮小の動き、在庫調整の影響が広がっています。
オムロンの場合、デジタル分野の事業環境の悪化が大きく響いていますが、そればかりでなく環境モビリティ、食品&日用品、医療・物流の分野でも、前回までの見通しを下方修正しています。
これは事業のボラティリティの高さもさることながら、それ以上に将来の予測プロセスそのものに問題があると会社側は判断している模様です。
通期の業績見通しも下方修正しており(売上高:8500億円→8100億円(▲7.5%)、営業利益:450億円→240億円(▲76.2%))、業績面では厳しい状況ですが、配当金は期末52円(前年比+3円)、年間104円(同+6円)の期初計画から変更しておりません。
決算悪化で株価がストップ安まで下落した、という例ではあおぞら銀行(8304)も同様です。
あおぞら銀行(8304、第34位、3,257円→2,749円、▲15.6%)
あおぞら銀行は、配当利回りがプライム上場企業の中でも高いことで知られていました。
それが今回の決算修正によって下期無配となり、予想利回りが急低下したことから、オムロン以上に市場の関心が集まったと言えます。
2月1日に発表されたあおぞら銀行の第3四半期の決算は、売上高に当たる経常収益は1932億円(+52.9%)と大幅に伸びたものの、経常利益は▲248億円の赤字転落(第2四半期までは143億円の黒字)、当期純利益も▲147億円の赤字転落(同120億円の黒字)という厳しい結果になりました。
重点事業としていた米国の不動産融資で、オフィス不動産市場は今後も厳しいとの判断から、貸倒引当金を大幅に積み増しした影響が出ています。
外国債券(モーゲージ債券)を売却して評価損を実際の損失として計上したことも響きます。
その結果、自己資本比率を維持する必要から今下期の配当金をゼロとしました。
これによって予想配当利回りはそれまでの5%台半ばから、2.8%台に低下しています。
銀行セクターは2月相場では堅調に株価は推移しています。
日銀がマイナス金利を解除するとの観測が市場では強まっており、貸出金利の上昇期待からメガバンクから地方銀行まで株価は堅調です。
その中であおぞら銀行など、ごく一部の銀行株は下落する結果となりました。
現在のような株主還元が全面的に評価される相場状況では、「減配」はかなりネガティブに受け止められてしまいます。
決算内容が厳しくて株価が下落した銘柄としては、シャープ(6753、第17位、997円→816円、▲18.2%)、メルカリ(4385、第25位、2,464円→2,042円、▲17.1%)、小糸製作所(7276、第29位、2,277円→1,895円、▲16.8%)、エンプラス(6961、第1位、12,160円→8,310円、▲31.7%)も同じように軟調でした。
以上
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