防衛産業は“儲かる”事業に 防衛関連銘柄をピックアップ! 防衛産業は“儲かる”事業に 防衛関連銘柄をピックアップ!

防衛産業は“儲かる”事業に 防衛関連銘柄をピックアップ!

防衛関連銘柄が収益面からも注目を集めています。
かつては地政学リスクが発生すると、株式市場では防衛のイメージだけで物色されてきました。
例えば、北朝鮮のミサイル発射で火薬や砲弾を手掛けている小型株が買われ、収束ともに忘れ去られたケースも多くありました。
実際は防衛省に納入している関連企業の採算は芳しくなく、市場規模も限定的です。
撤退するケースも少なくない状況となっていました。

しかし、米中対立や台湾海峡、北朝鮮の挑発などで日本政府は防衛能力の強化に乗り出しています。
2022年12月には、防衛費の大幅な増額や反撃能力の保有・強化などを盛り込んだ新しい「防衛3文書」を決定しました。
これは防衛費をGDP(国内総生産)比で2%と従来比倍増する計画です。
防衛費は2027年度までの5年間で43兆円を投じる計画で、2022年度に比べ1.5倍になります。
ちなみに防衛3文書は「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」のことで、国の安全保障政策に関する重要文書です。
これまでは防衛産業は、自衛隊向けなどに限られていたうえ、採算面からも魅力的とはいえませんでした。
予算の増額で産業自体が拡大することに加えて、今回防衛省は防衛装備品を発注する際の企業側の想定営業利益率を最高15%に引き上げています。
2022年末に決めた国家安全保障戦略では防衛産業を「防衛力そのもの」と位置付けました。
利益率15%は製造・開発を発注した弾薬、航空機・艦船、通信機器などに適用したとのことです。
報道によると従来の目安は8%で、実際にはこれに届いていないケースも多かったようです。
厳重な品質管理や納期が求められるだけに、その取り組みに応える内容となっています。
また、企業努力のおよばない価格上昇のなどのコスト変動などについても、契約期間に応じて1%~5%まで考慮されるようになるそうです。

業績貢献が期待できる企業をピックアップします。

三菱重工業(7011)

2024年3月期の「防衛・宇宙事業」の受注高は1兆8,781億円(前期比3.4倍)と過去最高。
発表資料では「日本政府の防衛力の抜本的強化の方針を受けて、2023年度はスタンド・オフ防衛能力(筆者注:日本に侵攻する艦艇や上陸部隊に対して、その脅威圏<射程圏>の外から対処する能力)に関する案件をはじめ、複数の大型案件を受注」などとしている。

7011

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IHI(7013)

民間エンジン・防衛事業を成長事業と位置づけ。
“防衛力の抜本的強化”との政府方針を受け、防衛事業を拡大させるとしている。
2030年に売上高2,500億円規模(2023年3月期に比べ2.5倍)、利益率10%を目指す。
同社は2020年以降、防衛省の次期戦闘機開発事業にエンジン担当として参画。
日英伊の3カ国はグローバル戦闘航空プログラム(GCAP)を推進。
ここでも主導的な役割を担うことを狙う。

7013

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東京計器(7721)

航空機器、防衛省向け機器などに展開。
2024年3月期の防衛・通信機器部門の受注残高は前年比51%増の336億5,100万円、受注高は同36%増の73億700万円。
防衛予算の増加により、受注高、受注残高ともに過去最高。
艦艇搭載機器の好調や海上保安庁向け新製品の納入などが寄与したもよう。

7721

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日本製鋼所(5631)

火力や原子力向け鋳鍛鋼の世界大手。
装甲車や火砲、ミサイル発射装置などの防衛事業にも展開。
中期経営計画では2029年3月期に売上高3,800億円(前期比50%増)、営業利益370億円(同約2倍)を目指す。
うち防衛関連の売上高は800億円(同3.2倍)を見込んでいる。

5631

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川崎重工業(7012)

総合重機大手。
自衛隊向け潜水艦や航空機(輸送機、哨戒機、ヘリコプター)なども担う。
2024年3月期の「航空宇宙システム」セグメントの受注高は6,926億円(前年比2倍)。
防衛省向けの拡大やボーイング向けの伸びが要因。
事業環境について決算発表資料では「抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、需要増や採算性の改善が期待できる」としている。

7012

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三菱電機(6503)

2023年10月に防衛装備品の開発・生産を行う鎌倉製作所(神奈川県)、電子通信システム研究所(兵庫県)など3か所に約220億円を投じて新生産棟を建設すると発表している。
2025年4月から順次竣工し、生産・開発体制を強化する。
発表資料には、日本政府の「防衛力整備計画」への貢献に向け、と記載されている。
2024年5月29日公表の経営戦略では防衛事業に約1,000名を順次増強する、ともしている。
レーダーシステムやミサイル、人工衛星などの防衛・宇宙事業に経営資源を投入する方針を示している。

6503

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和島英樹

和島英樹

経済ジャーナリスト。

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年ラジオNIKKEIに入社。
東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。
2020年6月に独立。企業トップへの取材は1,000社以上。
ラジオNIKKEI担当番組に「マーケット・プレス」など。
四季報オンライン、週刊エコノミストなどへ寄稿多数。
国際認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
日本テクニカルアナリスト協会評議委員。

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