市場を牽引する生成AIと半導体関連企業! HOTな銘柄、COOLな銘柄 市場を牽引する生成AIと半導体関連企業! HOTな銘柄、COOLな銘柄

市場を牽引する生成AIと半導体関連企業! HOTな銘柄、COOLな銘柄

能登半島地震で被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。


株式アナリストの鈴木一之です。
2024年1月の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」をお送りいたします。

新年最初の月、東京株式市場は大型株を中心に年初から活発な買いが入り、堅調な動きを続けました。

反対に米国市場は12月相場のにぎわいから一転して小さな動きにとどまりました。
日米市場ではちょうど反対の動きとなっています。

日経平均は1月相場で+8.43%の大きな上昇を記録しています。
36,000円の大台を大きく上回っており、1990年以来の水準に達しました。
日経平均の月間の上昇幅は+2822円に届き、昨年11月に記録した+2628円を大きく上回っています。

TOPIXも1月は+7.82%と大幅に上昇しました。
外国人買いを中心に主力の大型株が連日のように買い進まれています。

半面、小型株市場は年をまたいで沈黙したままの状態が続いています。
東証グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)は反発しましたが、上昇率は+0.85%と小幅反発にとどまりました。

昨年末から活況を呈する米国の株式市場に、東京市場もようやく追いついてきたという印象です。
上場来高値を更新する銘柄が相次いでいます。

そうは言っても米国市場は1月も堅調で、NYダウ工業株は史上最高値を更新しています。
ただ1月の上昇率は+1.22%と小幅な上昇にとどまりました。
3か月連続の上昇ということもあり、昨年11月の+8.77%、12月の+4.84%に続いて、上昇率は鈍っています。

S&P500も1月は+1.59%と小幅ですが続伸しました。
こちらも11月の+10.70%、12月の+4.42%に続いて続伸しましたが、やはり小さな上昇率にとどまりました。
それでもNYダウ工業株に少し遅れて、史上最高値を更新しています。

NASDAQ総合指数も上昇しましたが、11月の+8.92%、12月の+5.52%に続いて、1月相場では+1.02%にとどまりました。
それでもしっかりと3か月連続の上昇です。
史上最高値更新まであと一歩というところに迫っています。

米国市場の株価上昇をもたらした長期金利の低下は一服しています。

米国の10年国債金利は11月末の4.33%から、12月末には3.87%まで低下しましたが、1月末は3.91%へとほぼ横ばい。わずかながら上昇しています。
FRB高官から発せられる金融政策に関する意見は、日増しにハト派的な論調に傾いています。

原油価格は引き続き下落しました。
WTI先物価格は11月末の75.58ドルから、12月末は71.33ドルへと3か月連続で値下がりしました。

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2024年は年明けから大きな出来事が相次いで起こりました。
最大のものは元旦に発生した能登半島の大地震です。

元日の夕方、16時過ぎに能登半島で発生した震度7の大地震によって、日本のお正月の祝賀ムードは吹き飛びました。
津波が海岸沿いの街並みを襲い、家屋の倒壊も相次いでいます。
故郷に帰省中の人々が震災に巻き込まれ、道路や鉄道は寸断し、多くの村落が孤立状態に置かれました。

海岸線の近くまで急斜面が迫る険しい地形のため村落が点在して、被害の全容がなかなか把握できない状況です。
道路の陥没によって救援物資の到着も遅れ、ライフラインの復旧も思うように進みません。
停電が長引いています。

今回の震災で亡くなられた方は200人を越えています。
人口当たりの死者数は阪神淡路大震災を上回るとされており、それが今回の大地震の被害状況の深刻さを示しています。

行方不明の方の捜索が今も続けられており、一人でも多くの方が無事に救出されることを願ってやみません。
被災地の方々が一日も早く以前の暮らしを取り戻されることを心よりお祈り申し上げます。

年明け最初の米国株式市場が軟調だったこともあって、今年の大発会は寄付き直後に日経平均が一時▲700円も急落する波乱の幕開けとなりました。

米国市場の軟調は1月3日に公表されたFOMC議事録の内容が影響しています。

昨年12月12-13日に開催されたFOMCでは、3会合連続して政策金利の引き上げは見送られたものの、ドットチャートの形状が変更され、そこから読み取れる2024年の利下げ回数の見通しは、3か月前の年2回から年3回に増えるというものでした。

利下げを先取りしがちなマーケットでは先走って、来年は6回、うまくいけば7回の利下げがあるとの見通しに立って、米国の株式市場を押し上げてきた経緯があります。

それに対して1月3日に公開されたFOMC議事録は、ボードメンバーの全員がどこかの時点で追加の利上げを行うことを想定していることが記されていました。

現在の引き締め政策を早期に縮小することにはかなり慎重なスタンスであることが判明し、そこから金融引き締めへの過度な期待が後退して、米国市場ではグロース株が下落して反対にバリュー株が浮上するという状況から、今年の株式取引がスタートしました。

波乱の幕開けとなった日米の株式市場は、それでも東京市場は「成人の日」の3連休明けから本格的な上昇を開始しました。
TOPIXは年末年始をまたいで7連騰を記録し、日経平均も早々にバブル崩壊後の高値を更新し「33年ぶりの高値」に進みました。

上昇をリードしているのは、前年に続いて東京エレクトロン( 8035)などの半導体関連株です。

1月9日、ラスベガスで世界最大のテクノロジー見本市「CES」が開幕し、過去最大の4000社が出展しました。
会期中には13万人が訪れると予想されています。
その一大イベントに合わせてテクノロジー各社が未来志向の新技術を発表し、中でも注目の的となっている新技術が「エッジAI」です。

「エッジAI」は、パソコンやスマホなど手元のデジタル機器にAIを組み込むもので、これによってデータセンターに大規模なデータを格納する過程が減って、処理が分散されて動作の遅延が起こりにくくなるとされています。
これが「ChatGPT」などの対話型AIの普及を一段と促進すると見られています。

主役はここでもエヌビディア(NVDA)です。
1月8日にパソコンに組み込んで使う半導体を開発したと発表し、エヌビディアが得意とするGPUをベースに、AIの処理速度が最大で7割も高速化するそうです。

この新型半導体の発表をきっかけに、エヌビディアはそれ以後、1か月以上にわたって連日のように史上最高値を更新し続けています。
マイクロソフトの時価総額は3兆ドルを超え、メタも1兆ドルに乗せました。

エヌビディアの株価上昇が示す生成AIの未来に対して、引き続き投資資金が活発に渦巻いている様子がうかがえます。
S&P500の最高値更新の原動力も生成AIと言ってよさそうです。

日本でも半導体関連株、および生成AI関連株に物色人気が集中するムードが醸成されていきました。きっかけとなったのはTSMC、そしてASMLです。

TSMCは1月18日(木)に10-12月期の決算を発表し、売上高は前年比微減の6255億台湾ドル(2.9兆円)、純利益は同▲19.3%の2387億台湾ドルと判明しました。
過去最高だった前年の水準をほぼ回復しています。

同時にTSMCが明らかにした今2024年12月期の見通しは、売上高が前年比+20%も増えて史上最高を更新します。
この強気の見通しを受けて、世界中の半導体関連株に買い注文が集中するようになりました。

そしてオランダの露光装置大手・ASMLも1月24日(水)に10-12月期の決算を発表し、売上高が+13%増になったことから株価が大きく上昇しました。

好業績の背景には中国向け輸出が規制対象となる前に駆け込みの需要があったと見られますが、その特需がなくなる2025年も露光装置が拡大するとの見通しが明らかにされ、それが市場の安心買いを誘っています。

一方でインテルの決算はネガティブな反応を示しました。
1月25日(木)に決算を発表されたインテルの10-12月期の決算は、純利益が26億ドルの黒字に転換しましたが、2024年1-3月期の見通しが122億-132億ドルで市場の見通しを下回ったため、株価は軟調な動きに終始しました。

半導体関連と言っても、市場の反応がよい銘柄とそうでない銘柄との格差がかつてなく開くようになっています。

かねてマーケットでは、「日本は世界の景気敏感株」と位置づけられてきました。
その意味合いは、世界経済が上向きになれば日本株は他律的にも上昇することになり、反対に世界経済が落ち込めば、日本株は真っ先に下落するというものです。

要するに日本株の浮沈はすべて世界経済の方向性にかかっており、そこでは日本の企業の個々の特色はさほど気に留められることはありませんでした。
日本株投資においてはあくまで、世界経済の全体としてのモメンタムが重視されてきたのです。

しかしそれが現在ではかなりニュアンスが変わっているように見えます。

日本株の評価において、必ずしも世界経済の動向が持ち出されることはなく、むしろ世界経済はかんばしくないままに、日本株だけがピンポイントで評価されるような部分が強まっています。
必ずしも景気の先行きの動きを見越しての日本株買い、ではないことが実感できます。

ここからは1月相場で上昇が目立った銘柄、「HOTな銘柄」をご紹介します。

物色の方向性をグループ分けすると、「生成AI、半導体関連株」、「好業績を発表した銘柄」の2つのカテゴリーに分かれるように思います。

上段でも記しましたが、年明けから米国では生成AIおよび半導体に関連する銘柄がにぎわっています。
好決算をきっかけに市場の人気を集めていることから、日本でも同様のテーマに沿った銘柄が軒並み人気を集めています。

半導体関連株は今年も新年早々から人気沸騰となりました。
中でもソシオネクスト(6526、第9位、2,560円→3,432円、+34.1%)と、KOKUSAI(6525、第13位、3,065円→3,805円、+24.1%)の上昇が際立っています。

両社ともに上場してまだ日の浅い銘柄です。
半導体関連株は全体的に昨年、一昨年も市場の人気を集めており、すでにかなり息長く物色され続けています。
それだけに主だった機関投資家は、この分野に関連する銘柄の大半をもはやお腹いっぱいに組み入れていると見られます。

そこでまださほど手がけられていない銘柄として、上場から日の浅いこれらの銘柄に物色人気が集まったと見ることもできます。

ソシオネクストは富士通とパナソニックから分離・統合されて2014年に生まれた半導体メーカーです。
工場を持たずSoC(システム・オン・チップ:ひとつのチップ上にプロセッサコアやマイコンなどシステムを統合して組み込んだもの)に特化した設計だけを行う企業です。
業績は絶好調と言ってもよいでしょう。

昨年6月に上場来高値を取った直後に、富士通とパナソニックから保有株をまとめて市場で売却すると発表されたことから、そこからは株式供給の圧迫で軟調な値動きが続いていました。
それから半年が過ぎ、徐々に市場では需給関係の乱れも落ち着いてきたようです。

KOKUSAIは半導体製造装置メーカーです。半導体を製造する工程で何度も行われるウエハ表面への成膜プロセスを得意としています。
かつて日立国際電気として上場していましたが、日立グループから切り離され、投資ファンドの下で事業基盤を整えて再上場を果たしました。

成膜技術では世界シェアトップの高い技術力を有しています。半導体は市場全体が在庫調整の真っただ中にあり、今期の業績は苦戦を強いられています。
それでも下期からようやく回復の方向性が見え、株価は上場来高値を更新して堅調に推移しています。

主力銘柄の中からは、ウエハ洗浄装置で世界トップシェアのSCREEN(7735、第21位、11,930円→14,670円、+23.0%)、同じく半導体テスターで世界首位級のアドバンテスト(6857、第30位、4,797円→5,823円、+21.4%)も、上場来高値を何度も更新しながら買い進まれています。

目下のところ半導体業界はシリコンサイクル上では不況期の真ん中にありますが、その過程でも技術進歩は絶え間なく続いています。 生成AIで多用されるGPU(画像処理半導体、エヌビディアが世界トップ)が多用され、そこではSCREENの持つ表面処理、直接描画、画像処理という3つの高いコア技術が不可欠とされています。

同じように将来の半導体製造の工程では、SoCがますます主流となってくるとされ、テストに費やす時間と回数が増えると見られます。 アドバンテストも今期の業績は減益が避けられませんが、四半期ごとで見れば、第2四半期に続いて第3四半期も業績の底入れ回復が確認されています。

半導体セクターのように常に先行きの経済環境や技術トレンド、業界動向を見越した上で設備投資を行う業界では、売上げや利益の水準よりも受注動向がカギを握ります。
業績面でも四半期ごとの浮き沈みが重要で、それが底入れ反転に向かい始めています。

1月相場で上昇率がトップとなったのは、さくらインターネット(3778、第1位、2,209円→3,620円、+63.9%)です。
データセンターを運営する独立系の大手企業です。

昨年11月に経済産業省が推進する「クラウドプログラム・供給確保計画」の一環として、政府系クラウドの契約締結に関するリリースがありました。

機密事項が多数含まれている日本政府の情報の格納を、アマゾンやグーグルなど外国のクラウドサービスに依存しているのは問題が多いとされていました。
国産クラウドの必要性が折に触れて指摘されてきましたが、それに関して業界のリーダー役であるさくらインターネットが契約する運びとなったことが、年明け以降も評価されています。

パワー半導体の国内トップ企業である富士電機(6504、第22位、6,069円→7,459円、+22.9%)も上場来高値を更新しています。

ウエハの電気特性を計測する「プローブカード」で世界3位の日本マイクロニクス(6871、第32位、3,670円→4,450円、+21.3%)も大きく上昇しており、半導体関連株の人気は年明けから一段と広がりを見せています。

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1月は早くも決算発表シーズンを迎えます。

年明け早々に2月期決算企業(8月、11月期も)の第3四半期の発表が本格的に実施され、それが終わった1月末からはいよいよ3月期決算企業の第3四半期決算が始まります。
12月に続いて1月相場でも、好業績を発表した銘柄には根強い買いが継続しています。

2月期決算の企業では、竹内製作所(6432、第48位、4,285円→5,100円、+19.0%)の動きが目に止まりました。

1月12日に発表した竹内製作所の第3四半期の決算内容は、売上高が1588億円(前年比+19.5%)、営業利益が256億円(+83.6%)と大幅に伸びて、過去最高益を更新しました。

北米市場ではインフレ抑制のために政策金利が急ピッチで引き上げられ、景気の鈍化が心配されています。
それでも個人消費は依然として旺盛で、住宅市場は根強い需要に支えられています。

住宅市場と合わさって生活インフラ工事や建設投資が活発化しており、北米だけで売上高は849億円(+15.3%)と大きく拡大しました。

同じように欧州市場(日本からのディストリビューター向け販売)も、金利の上昇で住宅市場は苦戦しているものの、生活インフラ工事や建設投資など、ここでも非住宅部門が大きく伸びています。
欧州は売上高で563億円(+27.0%)と高い伸びを維持しています。

ここに円安も重なって、建設機械セクターの中でも群を抜く好業績を収めており、株価は1月を通じてほぼ一本調子の上昇を演じています。

竹内製作所が「輸出系」企業の代表的な好業績銘柄だとすれば、その対極に位置する「内需系」企業が東京鉄鋼(5445、第12位、4,125円→5,210円、+26.3%)です。

東京鉄鋼は電炉メーカーですが、ビル建設の骨格となる鋼材として「ネジテツコン」を独自に開発したことで知られています。

ネジテツコンは表面にネジ状の節が刻まれた異形棒鋼で、継手を使って接続することができます。
職人技を使うことなく誰でも扱えるため、人手を減らして工期を短縮することができます。

建設現場はどこも人手不足による工程管理の遅れが問題となっており、近年の高層ビルの建築ラッシュでネジテツコンの採用が相次いでいることから業績が大きく伸びています。

3か月前の第2四半期の時点で大幅な収益の伸びが確認されていましたが、1月31日に発表された第3四半期でも、営業利益は73.6億円(+162.1%)と前年比3倍近くに拡大しました(売上高は585億円、▲1.9%のマイナス)。

東京鉄鋼は通期の業績見通しも上方修正しており(営業利益:85億円→100億円)、合わせて期末配当金も引き上げたことから(150円→180円、中間配当50円と合わせて年間配当金は230円に)、株価は月末にかけて大きく上昇しました。

株主還元策を充実させることを明らかにした企業の株価は、それだけでも大きく上昇します。
増配企業への物色人気が続いたのが1月相場の特徴でもあります。

その点では未来工業(7931、第5位、3,260円→4,645円、+42.5%)の動きも目立ちました。住宅向けの配線管、スイッチボックスなど電設資材メーカーの未来工業は1月24日に第3四半期の決算を発表し、売上高が340億円(+13.4%)、営業利益が57.0億円(+74.1%)と好調が確認されました。

これに合わせて通期の業績見通しの上方修正(営業利益:59.1億円→66.1億円)、および期末配当の引き上げ(64円→84円、中間配当金50円と合わせて合計114円→134円)を発表したことから、株価は連日のように大幅高を記録しています。

このほかにも、ソフトウエアの高速化技術に特化しているフィックスターズ(3687、第10位、1,291円→1,709円、+32.4%)や、主力企業の中ではコナミグループ(9766、第18位、7,383円→9,126円、+23.6%)、三菱重工業(7011、第35位、8,241円→9,942円、+20.6%)がいずれも好業績への期待から1月相場を通じて堅調な上昇基調をたどっています。業績に対する感応度が一段と強まったのが1月相場の特徴と言えるでしょう。

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続いて1月相場で値下がりの目立った銘柄、「COOLな銘柄」です。


業績相場がより一段と進む中にあって、決算内容の悪かった銘柄には下げが一段と目立つようになっています。

代表例はSHIFT(3697、第4位、35,820円→26,865円、▲25.0%)です。

SHIFTはプログラムが正しく動作するか検証するソフトウエアテストの品質保証事業が事業の柱です。
人員を大量に採用し、独自の人材育成手法を採用して育て上げる手法で業績を伸ばしてきました。

売上高は2013年8月期の13億円から、2023年8月期には880億円まで、わずか10年で60倍以上に拡大しています。
この間に株価も50倍以上に上昇しており、まさに成長株の代表格と言ってもよいほどの成長を遂げました。

しかし刮目すべき高成長が何年も継続したことから、次第に独自モデルによる成長の壁に直面するようになっているようです。

1月12日に発表された2024年8月期・第1四半期の決算では、売上高は250億円(+29.5%)と引き続き高い伸びを示したものの、営業利益は18.1億円(+0.4%)と成長がほぼストップしました。

第2四半期の業績見通しに対する進捗率も、売上高が40%台後半を維持しているものの、営業利益は30%台にとどまっています。

エンジニアの採用は順調に進んでいますが、それに見合う案件の獲得が伸び悩んだこと、およびM&Aを活用した戦略投資の部分がかさんだことで経費が先行し、営業利益の伸び悩みにつながったとしています。

一時的とは言えこれまでの高成長に歯止めがかかったことから、上場来高値付近にあった株価は決算発表を機に大きく下落することとなりました。

人材派遣企業に関しては、業績が下方修正されたという点でディップ(2379、第5位、3,210円→2,528円、▲21.2%)の株価下落もマーケットで注目されました。

ネット上でのアルバイト求人情報「バイトル」、人材派遣の「はたらこねっと」、正社員募集の「バイトルNEXT」などを展開するディップが、1月11日に発表した2024年2月期・第3四半期の決算は、売上高が402億円(+9.6%)、営業利益が98.1億円(+3.4%)とまずまずの伸びでした。

しかしこの時に同じく通期の業績見通しを発表し、売上高が563億円→532億円(前年比+7.8%)、営業利益が145億円→119億円(同+3.1%)と伸び率が大きく圧縮されました。

この第3四半期から、コールセンターや事務領域の求人広告市場が急速に悪化していることが通期見通し引き下げの理由とされています。
人手不足の甚だしい飲食部門は人材ニーズが依然として強いものの、そのペースも当初想定していたほど強くはないことが一因となっています。

株価は3か月前に行われた第2四半期決算の発表時にも大きく下落しましたが、今回の通期見通しの引き下げでさらに一段安となりました。
コロナ禍から経済活動が再開されてからこの方、好調だった人材派遣業界にも変化が生じています。

株価が急落したこともあってか、1月25日にディップは金額で30億円、発行株数の2.61%に当たる150万株の自社株取得枠を発表しました。
ここから株価は少しずつ浮上し始めていますが、自社株買いに対する反応はまだ鈍いように感じられます。

このほかにも3月決算企業の第3四半期決算では、アルプスアルパイン(6770、第30位、1,229円→1,102円、▲10.3%)、日本航空電子(6807、第6位、3,225円→2,555円、▲20.8%)がそろって決算内容の悪化を背景に大きく下落しました。

さらに高成長を実現してきた銘柄の一角では、ベイカレントコンサルティング(6532、第1位、4,951円→3,466円、▲30.0%)、エスプール(2471、第2位、444円→311円、▲30.0%)、ネクステージ(3186、第13位、2,588円→2,233円、▲13.7%)も軟調な動きを余儀なくされています。

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年明けから大きな出来事の連続した1月相場は、機関投資家の投資対象となる大型株が総じて堅調だったものの、小型株には厳しい忍耐の日々が続いていると総括できるでしょう。

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以上

鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
「きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
Twitterアカウント
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