鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える 「分析器・計測器」 鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える 「分析器・計測器」

鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える 「分析器・計測器」

株式アナリストの鈴木一之です。

毎年10月はノーベル賞受賞者が発表されます。
今年も朗報が届きました。

10月7日、2026年のノーベル化学賞に東京理科大学・名誉教授の硤合憲三(そあいけんそう)氏が選ばれました。
パリ・サクレー大学のアンリ・カガン名誉教授との共同受賞です。
誠におめでとうございます。

日本生まれの受賞者は、自然科学の分野で28人目、化学賞では10人目です。
硤合博士による今回の授賞理由は「不斉有機合成における自己触媒反応」です。

門外漢の私にはほとんど理解できませんが、物質の根源である分子構造の本質につながり、化学研究の枠にとどまらず、生命の謎を解くカギとなる概念なのだそうです。

分子の構造は「右手型」と「左手型」が存在していて、鏡に映せば同じ形に見えるものが、実際には重ね合わせようとしても決して重なりません。

生物が生命活動を維持するのにたんぱく質は欠かせず、そのたんぱく質はアミノ酸という分子からできています。
そのためアミノ酸にも「右手型」と「左手型」の両方があります。

そして、地球上の生物のたんぱく質は、主に「左手型」に相当するL体のアミノ酸から構成されていて、なぜ生物がL体のアミノ酸を選択的に利用するようになったのかは、現在も謎とされています。

硤合博士の研究は、「右手型」か「左手型」の片方の分子だけを複製する「不斉自己増殖(ふさいじこぞうしょく)」という化学反応を世界で初めて実現させました。
「ソアイ反応」と呼ばれ、世界中の研究者の間では広く知られています。

硤合博士がこの研究の成果を初めて論文で発表したのが1995年。
すでに30年以上が経過しています。
近年は毎年のようにノーベル賞候補に挙がっており、世界の研究者の間では高く評価されていました。

硤合博士は受賞が決まった直後の記者会見で、「自分で言ったらおこがましいが(受賞については)文句は言われないだろう」と答えて会見の場がどっと沸きました。

株式市場ではノーベル賞が発表されると、間髪を入れずに関連企業を探し出します。
今回も「不斉有機合成」に関する企業を探しましたが、「ソアイ反応」は基礎研究として広範囲に影響するためか、直接関わりを持つ企業は現時点では見当たらないようです。

「不斉有機合成」は生物の分子構造に関わる最も根源的な基礎研究の成果です。
発表から30年以上が経過しています。

この間も大学、大学院における学術の領域では、次の新たな未解明の分野を切り拓こうと、仮説、実験、データ収集、検証など地道な研究活動が続けられています。
華々しい成果の裏には長い時間を伴った地道な研究期間が存在します。

硤合博士も研究過程で壁に突き当たった時は「暗い道を、ヘッドライトを付けてたどっていくような気分だった」と記者会見で述べていました。
基礎研究を支えているのは、精緻な分析装置、測定器、計測器などの機器類の存在です。

日本および世界の研究者の影のパートナーは分析装置、測定器です。
日本はこの分野で世界をリードしています。
2000年代以降、科学の研究分野は一段と複雑化、大型化する傾向にあり、近年はそれがさらに強まっています。

ノーベル化学賞の受賞をひとつの切り口として、研究開発に直接関わっている分析装置、測定器に携わる企業を取り上げてみます。

銘柄ピックアップ

島津製作所(7701) 島津製作所(7701)

分析器、計測器、医療用診断装置の世界的企業。
クロマトグラフが旗艦製品。
クロマトグラフは、混合物を構成する物質が異なる相互作用を示す性質を利用して成分を分析、分離する装置。
液体クロマトグラフは医薬品の有効成分の純度、不純物の含有量、食品の添加物、たんぱく質の解析などに用いられる。
ガスクロマトグラフは石油化学製品、溶剤、香料、環境汚染物質などの分析に適している。
たんぱく質、最先端半導体、原子核技術など応用分野は幅広い。
2002年には社員の田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞した。

島津製作所(7701)の株価チャート

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堀場製作所(6856) 堀場製作所(6856)

分析・計測機器の大手。
1945年に堀場雅夫氏が創業した学生ベンチャー企業の先駆者。
ガス・気体、液体・流体、電気・X線など産業界が求めるあらゆる分析器、計測器を製造しており、自動車用の排ガス測定装置では世界トップシェアを有する。
半導体製造に関してもウエハから洗浄、成膜、露光、エッチング、CMPなど各プロセスで必要とされる独自の分析、計測技術を供給。
水素や酸素の侵入を防ぐフィルムの膜質解析装置にも強い。

堀場製作所(6856)の株価チャート

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リガク・ホールディングス(268A) リガク・ホールディングス(268A)

X線分析装置では世界トップクラスのシェア。
創業から75年が経過し物質材料の研究で世界をリードしてきた。
X線による計測技術は最先端のAI半導体をはじめ、データセンター、パワーデバイス、蓄電池、新素材、遺伝子・たんぱく質の解析で欠かせない。
リチウムイオン電池の発火リスクが指摘されるたびに次世代動力源として全固体電池に注目が集まるが、固体電解質のイオン導電特性と化学的安定性はX線回折法が大いに力を発揮する。

リガク・ホールディングス(268A)の株価チャート

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日本電子(6951) 日本電子(6951)

電子顕微鏡で世界首位。
光学顕微鏡の100~1000倍の能力を持つ電子顕微鏡は、光の代わりに電子線を利用して微細構造を観察する装置。
光学顕微鏡ではむずかしいナノメートル単位の構造を調べられる。
半導体ウエハ上の配線形状、金属表面の亀裂、電池電極の微細構造などで用いられる。
同社の装置を用いると、半導体材料の微細構造という最先端領域の解析でもシンプルな操作で行うことができる。

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以上

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鈴木一之

株式アナリスト
1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
「きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)
主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケットマスターズ・マンデー」(ラジオNIKKEI第1、月曜日)
Twitterアカウント
@suzukazu_tokyo

呼びかける時は「スズカズ」、「スズカズさん」と呼んでください。

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