株式アナリストの鈴木一之です。
今年のGWは好天続きでした。
何よりも例年と違っていたのは、5連休が明けたとたんに日経平均は史上最高値を更新したことです。
5月7日(木)、日経平均は63,000円の大台に一時到達しました。
この日の日経平均の上昇幅は終値で+3,320円に達し、1日の上昇幅としてこれまでの最高記録を塗り替えました。
半導体関連株を中心に日経平均に影響度の大きなテクノロジー企業を中心に物色が広がっています。
株式市場ではまさに歴史的、記録的な値上がりが続いているのですが、投資家の皆さんの中には浮かない表情を浮かべる方も多いと聞きます。
その理由としては、現在の株価の上昇がAI・半導体分野に関わるエレクトロニクス、およびデータセンター向けの需要の強い電線株の一角に集中しており、幅広いセクターが上昇しているわけではないことが挙げられます。
株価の上昇がテクノロジー企業に極端なまでに偏っており、日経平均ばかりが値上がりして横への広がりが見られません。
幅広く株式市場をカバーしているTOPIXはいまだに高値更新には届いていません。
これはグロース株とバリュー株の対比にもつながります。
グロース株、すなわち半導体株のような成長性の高い銘柄ばかりが上昇して、その反対にバリュー株、割安株や利回り株に属する銘柄はほとんど上昇が見られないという状況が起きています。
言い換えれば「物色の二極化」、「K字型の上昇相場」がかつてないほどの勢いで広がっているのです。
このような状況は日本だけのことではありません。
米国市場でもNASDAQやS&P500は連日のように新高値を更新しています。
半導体株で構成されるSOX指数は、3月末から18連騰を記録しており、今もまだ最高値更新を続けながら上昇基調を維持しています。
その一方で米国を代表する30銘柄で構成されるNYダウ工業株ははっきりと出遅れています。
とりわけビザ、ナイキ、マクドナルドなどの消費関連株は特にさえない展開を余儀なくされています。
AI・半導体相場に沸くその裏で、日本が直面する“もう一方の現実”
バリュー株の出番は巡ってくるのでしょうか。
今回は「K字型の上昇相場」の中でも下向きの業種に属する自動車関連株について概観してみます。
現在の日本のマーケットにおいて、自動車セクターはバリュー株の代表格と見られます。
その自動車業界ですが、目下のところは明るい話題を探すのがむずかしいほど厳しい局面を迎えています。
販売台数で世界トップの トヨタ自動車(7203) トヨタ自動車(7203) は、5月8日(金)13時過ぎに3月決算を発表して、その直後から株価は急落し年初来安値を更新しました。
(2026年3月期の決算内容は、売上高が50.6兆円(前年比+5.5%)、純利益が3.8兆円(▲19%)でした。)
同じく デンソー(6902) デンソー(6902) 、 アイシン(7259) アイシン(7259) などトヨタグループの株価も軟調です。
スバル(7270) スバル(7270) は5月11日(月)14時に2026年3月期の業績見通しの下方修正を発表(営業利益は1,300億円→400億円)して、株価は年初来安値を更新しています。
ホンダ(7267) ホンダ(7267) 、 日産自動車(7201) 日産自動車(7201) 、 スズキ(7269) スズキ(7269) もさえない展開が続いています。
自動車業界を取り巻く“八重苦”
2月28日に始まった米国・イスラエルとイランとの武力衝突がきっかけで原油価格が高止まりしています。
それがガソリン価格を押し上げ、ただでさえ厳しい経営環境にある自動車業界にとって不利に働いていることは疑いの余地はありません。
そればかりか現在の自動車業界は、ガソリン価格も含めて以下に掲げるような「八重苦」とも表現されるほどの多くのマイナス要因に取り囲まれています。
(1)ガソリン価格の上昇(原油価格の歴史的な高騰、高止まり)
(2)ナフサの輸入困難(プラスチック部品、金属部品の調達難、価格高騰)
(3)中古車の輸出停滞(下取り価格の低迷、新車販売にも影響)
(4)EV販売の伸び悩み(各国政府の補助金削減)
(5)中国EV企業の躍進(自動車のコモディティ化の加速)
(6)米国への投資負担(トランプ関税による生産工場の移転)
(7)自動運転技術の高難度(ソニー・ホンダは開発を中止)
(8)円安(通貨安は本当にメリットなのか、原材料高)
これらの要素に加えて、日本では9つ目のマイナス材料として「政策の後押しが希薄(高市政権の戦略17分野から外れる)」という点も挙げられます。
日本経済のエンジン、自動車業界の再起に注目
日本は世界に冠たる自動車大国です。
GDPに占める自動車産業のウエートは諸外国と比べても大きく、5次~6次下請けまで産業界での裾野も広く、関連する産業人口はあらゆる業界の中でも断トツでトップクラスにあります。
それだけに自動車産業の浮沈は、日本経済そのものの浮き沈みに直結します。
1台数百万円もする自動車は、マイホームに次いで「人生で2番目に高い買い物」と言われており、いまや年間1,000万台に達するトヨタ自動車の販売台数の増減は、トヨタだけの問題ではなく地域経済や、日本の賃金水準や雇用情勢を大きく左右しています。
今後の自動車各メーカーの業績には、中国メーカーとの競争が大きく影響してくるはずです。
トランプ関税との兼ね合いでどの国・地域で生産するのか、という議論も残されています。
EV(電動車)への取り組みも問われます。
どのような車種のラインアップを抱えてゆくのか、レアアースや高張力鋼板などハイテク素材をどのように確保してゆくのか、という点も問われます。
どの問題に対しても明確な答えは簡単には出せない局面にありますが、自動車各社とも必死で考え抜き、そのような問いかけの答えを模索しています。
上記の「八重苦」のうちのどれかひとつでも答えが見い出せた時、その時が自動車セクターの株価にとっての「悪材料出尽くし」。
底入れ反転のタイミングを迎えることになるのでしょう。
配当利回りベースではすでに十分に投資採算に乗っている銘柄も多く、悪材料が出尽くしとなるタイミングを測る時期が近づいているのではないでしょうか。
銘柄ピックアップ
トヨタ自動車(7203) トヨタ自動車(7203)
世界最大の販売台数を誇る自動車メーカーのトップ。
株式市場においても最大の時価総額を誇る。
2026年3月期の業績は、売上高が50.6兆円(前期比+5.5%、日本企業として初の売上高50兆円突破)、営業利益は3.7兆円(▲21.5%)だった。
トランプ関税の影響▲1.38兆円がなければ増益もあり得た。
今2027年3月期は営業利益3兆円(▲20.3%)を見込む。
中東情勢の悪影響は▲2,700億円を見込む。

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三菱自動車(7211) 三菱自動車(7211)
三菱重工の傘下からスタートしたが現在は日産自動車の傘下で、ルノーを含めた3社連合の一角を構成。
2026年3月期の業績は、売上高が2.89兆円(+3.9%)、営業利益は755億円(▲45.6%)と苦戦を強いられたが、今2027年3月期は営業利益が900億円(+19.2%)と増益見通しからスタート。
中東・アフリカ市場で人気の「アウトランダー」を有しホルムズ海峡以外の輸出ルートを模索する。

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豊田合成(7282) 豊田合成(7282)
トヨタ系部品メーカー。
トヨタのゴム研究部門が独立して創業。
ブレーキホース、吸気ダクトに始まり、ステアリング、エアバッグ、ボディシーリング材、インパネ、スポイラーなど内外装部品を幅広く生産する。
自動車で培ったゴム技術の応用としてアクチュエータ、触覚・圧力センサも開発しており医療・介護ロボットでの実用化を目指す。
ゴムを2枚の電極で挟んだ薄膜材「e-Rubber」は心臓手術シミュレータに活用される。
2026年3月期の営業利益は795億円(+32.9%)、今期も800億円(+0.6%)と安定している。

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ニッタ(5186) ニッタ(5186)
伝動用ベルトの草分け的存在で、現在の事業はホースとベルトの2本柱。
乗用車の燃料配管、トラック・バスのエアブレーキシステムの配管に同社の樹脂チューブや継手が用いられる。
半導体製造工程では不可欠の研磨パッド、スラリー、圧力分布センサ、タイミングベルトでも同社製ホースが多用されている。
2026年3月期は売上高が918億円(+1.7%)、営業利益は58.6億円(+13.7%)と好調。
今期も営業利益は62.0億円(+5.8%)の安定した伸びを見込む。

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以上
鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える
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