株式アナリストの鈴木一之です。
上場企業の業績が好調です。
5月半ばに出そろった3月決算企業の2026年3月期の業績は、東証プライム市場に上場するおよそ1,000社の最終利益の額を合計すると、前年比+13%も増加して5年連続で史上最高益を更新しました(日本経済新聞社調べ)。
5年連続で最高益を更新するのは2008年の「リーマン・ショック」以降では初めてのことです。
集計対象となった1,000社のうち、今回の決算で事前の業績見通しを上方修正した企業は250社にのぼりました。
売上高に対する純利益の割合(純利益率)も6.3%まで高まり過去最高水準に達しています。
続く今期(2027年3月期)の見通しも現時点で前年比+5.0%と、前年と同様に好調を続けそうな勢いです。
増益となれば6年連続で最高益を更新することになり、日本経済はこれまで経験したことのないまったく新たな状況を迎えることになります。
米国とイランの武力衝突に端を発する中東情勢の悪化、それに伴う原油高、海運・空運など物流コストの増加、いわゆる「トランプ関税」と呼ばれる自動車業界を取り巻く関税の問題、原材料高、円安による輸入コストの上昇、人手不足による人件費の増加など、企業を取り巻く経営環境は難しさ、複雑さが一段と増しています。
不安定で先読みの難しい状況にもかかわらず、企業業績がこれほどまでに堅調な理由としては、現状では3つの理由が考えられます。
AI投資、金利復活、稼ぐ力の向上が日本企業の業績を押し上げる
第一に、米国を中心に広がるAI(人工知能)投資のブームが日本企業にも恩恵をもたらしている点です。
今回の業績拡大の最大の理由は、世界的なAI投資の急拡大にあります。
すでに一部ではブーム的な状況にあると言ってもよいでしょう。
米国のオープンAI、マイクロソフト、グーグル、アマゾン・ドット・コム、メタ、オラクルなど巨大テック企業が競ってデータセンターへの投資を拡大しており、その恩恵が日本企業にも流れ込んでいます。
AI投資について特筆すべき点は、従来のIT投資とは異なり設備投資の金額がケタ違いに大きなことです。
データセンターの需要の急増はデータセンターの建設だけにとどまらず、サーバーや半導体、先端素材など他の産業への膨大な需要へと波及してゆきます。
しかもAI投資はまだ始まったばかりで、初期段階にあるという点も見逃せません。
クラウド各社は今後数年間で数十~数百兆円の設備投資を予定しているとされており、日本企業への恩恵はさらに拡大しそうな勢いにあります。
企業業績が好調の第二の理由として、日本が「金利のある世界」に突入したという点が挙げられます。
金利の上昇によってマイナス金利で苦しんでいた銀行業界が「失われた30年」から脱出しました。
日銀は金融政策の正常化、マイナス金利の解除に踏み切り、利上げが実施されたことによって、銀行の貸出金利は上昇し、預貸利ざやが改善。
銀行セクターは急激な業績の回復期にあります。
三菱UFJフィナンシャルグループ(8306) 三菱UFJフィナンシャルグループ(8306) 、 三井住友フィナンシャルグループ(8316) 三井住友フィナンシャルグループ(8316) 、 みずほフィナンシャルグループ(8411) みずほフィナンシャルグループ(8411) の3大メガバンクはそろって史上最高益を更新しました。
長年にわたって続けられたゼロ金利政策が、いかに銀行本来の収益力を圧迫していたかがうかがえます。
三番目の理由として、日本企業の収益力「稼ぐ力」そのものが大きく改善している点です。
売上高純利益率の向上がそれを示しており、上場企業は単純に売上げを増やしているだけではなく、利益の質を高めていることが読み取れます。
金融庁と東京証券取引所が推進している「ガバナンス改革」に沿って、企業は不採算事業の整理や人員の最適化、思い切った価格戦略による値上げの浸透、自社株買いの拡大、増配を着々と推し進めています。
政策保有株を売却して得た資金を長期的な成長投資に振り向けるなど、将来の事業戦略にも前向きな動きが随所に見られます。
まだ十分に評価されているとは言えませんが、日本企業は着実に変化し始めています。
2026年3月期から2027年3月期にかけての「史上最高益の更新」は単なる景気回復の波に乗ったものではなく、日本企業の収益構造そのものが変化し始めていることの表れと受け止められます。
そうであれば株式市場の足取りは、今よりもさらに強固なものになってゆくでしょう。
「二極化相場」が久しく続いていますが、いずれ前期は減益だった企業の中から今期の業績回復をきっかけに浮上してくる企業が多々見られることでしょう。
「前期減益、今期増益」の企業をご紹介します。
銘柄ピックアップ
三井化学(4183) 三井化学(4183)
化学メーカー大手。
三井系の三井東圧化学と三井石油化学工業が合併して1997年に誕生。
汎用品を扱う石油化学からヘルスケア、自動車や半導体向けのスペシャリティケミカルへ事業の中心をシフトさせている。
同社のプラスチック製メガネレンズは薄く、軽く、割れにくく、透明度が長持ちし、視界がクリアという数々の特長を有してヒット商品に。
半導体製造の命・フォトマスクの保護フィルム「ペリクル」も業界標準に成長している。

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ジェイテクト(6473) ジェイテクト(6473)
軸受(ベアリング)大手3社の一角。
2006年に光洋精工と豊田工機が合併して誕生した。
現在は光洋精工が1988年に世界で初めて製品化した電動パワステが主軸。
現在もこの分野では世界シェア2割強を占めている。
事業の中心は研削盤などの工作機械、自動車部品、軸受が3本柱。
EVでもハイブリッド車でも、時代の流れがどちらの規格に移っても同社の重要性は揺るがないと見られる。

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エスペック(6859) エスペック(6859)
温度や湿度、振動などの環境変化を分析する「環境試験器」のトップメーカー。
1961年に環境試験器の開発に成功して以来、この分野では日本のパイオニアとして業界をリードしてきた。
現在も国内シェアは60%以上、世界シェア30%超を握る。
自動車の電動化、自動運転やAIサーバーの研究開発では、電子部品に対してあらゆる天候や温度変化への対応が求められる。
同社の環境試験器の役割が一段と高まると見られている。

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以上
鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える
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