株式アナリストの鈴木一之です。
今年も早や7月、2026年も折り返し地点を過ぎました。
日経平均が72,000円の史上最高値を記録したまま今年の後半戦を迎えています。
株式市場を取り巻く経済環境を冷静に見回すと近年にない変化が起きています。
日銀による企業短期経済観測調査(短観)です。
7月1日に発表された6月調査の短観では、大企業・製造業の業況判断DIが「プラス22」となったのです。
業況判断DIは日銀が四半期ごとに発表する短観の中でも最も代表的な指標で、企業経営者に対して「自社の景気が良いか、悪いか」を聞いて、「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いて算出されます。
数字が大きいほど景気は良好と判断されます。
3か月前の3月調査は「プラス17」でした。
それに対して6月調査では、代表的なエコノミストの間での事前予想は「プラス13~16」くらいの間で、前回調査よりもかなり低下すると見られていました。
それが発表されてみると「プラス22」と大きく上振れしたのです。
今回の短観によって景気は予想以上によかったことになります。
なぜこれほどまでに上方向に大きく外れたのか。
その理由を考えてみようと思います。
(1)AI投資の拡大が予想以上に広がる
これまで考えられていた以上にAIに関する設備投資が拡大している点です。
株式市場をはじめ金融市場では、これまでにも半導体メーカーや半導体製造装置メーカー、データセンター、電線、変圧器、配電盤などをAI投資の恩恵をフルに受ける関連企業としてとらえていました。
しかし実際にはAI投資によって、工作機械、産業ロボット、ポンプ、コンプレッサー、放電加工、材料・素材の化学メーカー、電子部品にまで広範囲へ波及し始めています。
AI投資に直接的に関係する企業だけではなく、膨大な設備投資の需要が日本の製造業全体に広がっていることが短観の景況感に影響していると考えられます。
(2)米国とイランの武力衝突の悪影響を過大に評価した
2月28日に米国とイスラエルがイランを空爆し「中東紛争」が勃発しました。
歴史上初めてホルムズ海峡が封鎖され、原油価格は4月にWTI先物で110ドル超まで急騰し、中東産ナフサは調達不足をきたし、世界経済は「コロナ危機」以来のサプライチェーンの混乱に陥りました。
6月短観の調査を行った時点(5月28日~6月30日)では、連日のように上記の事項に関わる報道が新聞、テレビ、ネット上のヘッドラインを賑わせ、世界経済は「第3次オイルショック」に直面しているとその深刻度が繰り返し伝えられました。
しかし実際には企業サイドはコロナ禍で直面したサプライチェーンの混乱の経験を活かして、間髪入れずに在庫を積み増し、調達先を変更して、海上輸送ルートを確保し価格転嫁を進めました。
十分ではないにしても混乱を最小限に抑え、生産活動の悪化はかなり食い止められました。
予想されたほどには経済の落ち込みは避けられたと見られます。
日本のみならず主要国の経済は、予想されたほどには悪くならなかった、というのが今回の短観の好結果につながったと考えられます。
(3)高市政権の設備投資促進策が企業心理を支える
日本に関して言えば、高市政権が指向している設備投資促進策がかなり効いているとも予想されます。
企業の設備投資は現在の景況感だけで決まるものではありません。
企業としては将来にわたって収益は確保できるか、いま設備投資をして採算が取れるか、という点が重要です。
高市政権は政権の発足当初から、企業に対して設備投資の即時償却・税制優遇を訴えており、生産拠点の国内回帰や戦略17分野、重点支援策などを重ねて訴えています。
潜在成長力を高めて税収を増やし、財政の健全化も図ってゆく方策を繰り返し訴えています。
そこに(1)のAI投資の波が重なりました。
結果として企業内では「今後数年間は設備投資を行っても十分に回収できそうだ」との判断が広がっていると考えられます。
日銀短観における業況判断の上振れの理由のひとつがこの点にもあると思います。
以上の3つの要因のほかにも、想定以上に進む円安が経営マインドを下支えしていることも考えられます。
いずれにしても設備投資の拡大がカギを握っているようです。
以下に設備投資に関連する機械セクターの企業をご紹介します。
銘柄ピックアップ
オークマ(6103) オークマ(6103)
工作機械の大手企業で中大型のNC(数値制御)旋盤、マシニングセンタでは国内トップクラス。
シェアは50%以上に達する。
自動化システムに強みを持つ。
自動化システムはワーク(加工対象物)を変えるたびに設定をすべて変えなくてはならないが、同社の製品はこの設定変更が容易。
生産ラインの丸ごと受注を強化中。

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巴工業(6309) 巴工業(6309)
メーカーと商社を併せ持つ。
メーカーとしてはデカンタ型遠心分離機が中心。
食品、化学メーカーから水産、製薬、造船、鉄鋼、電力などあらゆる産業分野に関わる。
下水道処理、産業排水処理の環境保全事業も行っている。
商社としては、合成樹脂、コーティング、電子材料などのニッチな化学製品を取り扱う。
最高益を更新中。
無借金経営で配当利回りも高い。

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タクマ(6013) タクマ(6013)
「ボイラーのタクマ」。
創業事業のボイラーから始まって、その応用製品であるごみ焼却施設で日本有数の地位を築く。
一般廃棄物処理プラント、バイオマス発電所、上下水道の処理プラント、それらのアフターサービスで高収益。
老朽化したごみ焼却炉の更新需要が豊富で受注残が積み上がる。
2030年度までの中計では経常利益200億円(前期162億円)を目指す。

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FUJI(6134) FUJI(6134)
電子部品の表面実装機(マウンター)で世界トップ。
売上の85%をマウンターが占める。
業界トップクラスのスループット(作業効率の高さ)を誇る。
データセンターのサーバー内で用いられるプリント配線基板の需要が急増。
実装不良ゼロ、オペレーターゼロ、機械停止ゼロの「3つのゼロ」を実現。
4つめのゼロとして「実装限界ゼロ」を目指す。
最高益更新。
完全無借金。

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以上
鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える
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