鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える 「工作機械受注の拡大」 鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える 「工作機械受注の拡大」

鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える 「工作機械受注の拡大」

企業の設備投資が活発です。
9月9日(水)に日本工作機械工業会から発表された8月の工作機械受注額(速報値)は、1,978億円(前年比+65%)の大幅な増加となりました。

これで受注額は14か月連続で前年比プラスの伸びとなっています。
企業の設備投資が国内外で活発になっていることがうかがえます。

8月は例年、お盆休みなどで企業が夏休みを取るため受注額は細り気味になる傾向があります。
それが6割以上も伸びており、中でも海外向けが+66%と好調を牽引しています。

工作機械受注は、製造業の設備投資の先行指標と見られています。
一般に半年から1年先の製造業の活動を反映するとされており、現在の活況はそのまま近い将来の製造業、ひいては日本経済の活発化を示していると考えられます。

工作機械受注統計のこれまでの推移を検討すると、2023年から2024年にかけては月間の受注額が1,100億円から1,300億円の範囲にとどまっていました。
これはコロナ禍でストップしていた設備投資の急拡大が反動減を迎えた時期で、そこに中国市場の低迷と半導体設備投資の調整期が重なっていました。

それが活発化したのが2024年後半からです。
この頃から工作機械受注は増加に転じ、2025年後半はさらに伸び率がアップしました。
2025年後半から2026年にかけての月間の受注額は1,500~2,000億円と急速に拡大しています。

この急増を牽引しているのがAI投資です。
半導体、電子部品、データセンター向けの設備投資が増加しており、半導体部材メーカーや電子部品メーカーが工場を新増設し、それが工作機械の需要を高めていると見られます。

当初は中国、アジア、米国企業が主導していましたが、現在は日本企業までが設備投資を活発化させています。
人手不足に対処するための省人化投資、ロボット投資も活発になっており、半導体を含めた循環的な設備投資の増加から構造的な伸びに変わりつつあると見られます。
AIを起点とした製造業の設備投資は第2段階を迎えています。

次なる焦点は、自動車セクターの設備投資がどの段階で出てくるかという点です。

自動車メーカーは事業戦略を転換して、これまでのEV一辺倒だった状態から、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、ICE(内燃車)まで含めた全天候型の開発路線に修正しました。

そうなると今度はHV向けの電池、モーター、インバーター、エンジン、ギアまでを同時に改良、生産する必要性が生じてきます。
AIが浸透することで自動運転車も実現の道がさらに早まりそうです。
工作機械メーカーも含めて、設備投資関連の機械セクターが今後も広く注目されると見られます。

銘柄ピックアップ

ソディック(6143) ソディック(6143)

NC(数値制御)放電加工機のパイオニアで世界トップメーカー。
1976年に世界初となるNC形彫り放電加工機を開発。
超高精度の微細加工技術が持ち味。
収益の安定化を図って1989年には射出成形機を開発。
その後も立て続けにマシニングセンタ、食品機械、金属3Dプリンタ、レーザー加工機などを開発してきた。
幅広い製品ラインナップが特徴だが工作機械が売上の7割強を占める。
ハードの工作機械の開発だけでなく、IoTなどソフトウェアも自社で開発する。

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OSG(6136) OSG(6136)

精密切削工具の世界トップメーカー。
ねじ穴を加工するタップや、穴あけに使うドリル、溝や平面を加工するエンドミルなどが代表的な製品で、タップは世界トップ(3割シェア)。
自動車の基幹部品であるクランクシャフト(エンジン内のピストンの上下運動を回転運動に変える装置)、コネクティングロッド(ピストンとクランクシャフトを結ぶ連結棒)、等速ジョイント(エンジンで生み出された動力を、ドライブシャフトを経由して車輪に伝える装置)のすべてでタップとエンドミルが多用される。
ロボットや医療機器など微細加工の必要な分野で事業を拡大中。

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平田機工(6258) 平田機工(6258)

工場の生産ラインを作る生産設備エンジニアリング会社。
顧客は自動車メーカーを中心に半導体、家電、産業用ロボット、医療機器まで広がる。
工場が新増設されるケースが増えており、工作機械から拡大して工場全体の増加を視野に入れる。
EV用工場であればモーター、駆動用インバーターなどドライブユニット、バッテリーパッケージ、制御用コンピュータ、空調用エアコンプレッサーなど多岐にわたる組立設備を製造している。
半導体関連でもウエハ搬送装置、検査用ハンドリング装置を手がける。

平田機工(6258)の株価チャート

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鈴木一之

株式アナリスト
1961年生。
1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。

相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
「きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)
主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケットマスターズ・マンデー」(ラジオNIKKEI第1、月曜日)
Twitterアカウント
@suzukazu_tokyo

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