今回の「市場交差点」はコーポレートガバナンス・コードに関する話題です。
金融庁と東京証券取引所は今年(2026年)の夏をめどに、上場企業のコーポレートガバナンス・コードを改定します。
今回は5年ぶり、3回目の改定となります。
コーポレートガバナンス・コードは「企業統治指針」と訳され、企業の経営の質を高めるための行動指針を指します。
企業経営者は株主や投資家の立場に立って、企業価値を高めるように企業を経営せよという方向性を示したものです。
日本では「アベノミクス」の目玉政策のひとつとして2015年に導入され、上場企業に対して金融庁と東証が指針の内容を定めています。
あくまで経営者への経営に対する指針であって、法律のような強制力はありません。
そこには理想となる企業統治の原則が示されており、その指針を守るか守らないかは企業の自由な裁量にまかせられています。
強制力はない代わりに、守らない場合にはその理由を説明する義務が課されます。
3回目となる今回の改定の目玉は、余剰な資産を抱え込むことへの是正圧力が高まる点にあります。
資産の中でも特に問題視されているのは、余剰な現預金です。
日本の上場企業は過去10年間で現預金を4割以上積み増したとされています。
現預金を多く保有することでバランスシート上の安定性は高まりますが、過度に積み上がるとそれだけ資産を有効に活用する配分がなされず、結果としてROEの改善が遅れる原因にもなります。
日本企業が抱える経営の非合理性はいくつもありますが、政策保有株と並んで問題とされている過度に保有する流動資産(現預金)を成長投資に振り向け、企業の資本の効率性、成長性を高めさせる狙いが今回の改定に読み取ることができます。
保有する現預金が多いからといって、その使い道として単に増配を実施したり、自社株買いを行ったり株主優待を行えばよいというものではありません。
増配などの株主還元策は重要ですが、それらはあくまで短期的な効果にとどまります。
今回の改定で金融庁は、単なる株主還元の強化を求めているわけではありません。
「過度な株主還元」志向への弊害を避け、本来優先されるべき設備投資や研究開発、人材投資など、企業の長期的な成長につながる「成長投資」へ現預金を活用することも同時に求めています。
「成長と還元のバランス」を改めて企業に考えさせ、日本の株式市場の評価を継続的に向上させることを狙っていると見られます。
コーポレートガバナンス・コードの改定に合わせて、保有する現預金の金額の大きなキャッシュリッチ企業を挙げてみます。
銘柄ピックアップ
大和冷機工業(6459) 大和冷機工業(6459)
業務用の冷凍・冷蔵庫の大手メーカー。
外食企業の厨房やスーパーで使用される冷凍・冷蔵庫、調理台を兼ねたコールドテーブル、製氷機、店舗用の冷凍・冷蔵ショーケースを全国で供給。
省エネ性能を高めた最新の冷凍・冷蔵庫の需要が高まっている。
すべての都道府県にサービス網を完備している点が強み。
学校、ホテル、病院・介護施設にも販売を徐々に拡大。
完全無借金で自己資本比率は75%に達する。
1,000億円の時価総額に対して保有現金は590億円。

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アイチコーポレーション(6345) アイチコーポレーション(6345)
電柱などの高いところを作業する際に使う高所作業車の国内トップメーカー。
電力会社向けが多いが、ほかにも通信会社、造船、建設、鉄道業界にも多用されている。
元々は豊田自動織機の子会社。
現在は筆頭株主が伊藤忠。
災害復旧でも力を発揮する。
国は昨年、富士山噴火への対策の報告書を公表し、火山灰による停電を食い止めるための高所作業車が見直される。
完全無借金で自己資本比率は83%に達する。
900億円の時価総額に対して保有現金は468億円。

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アイホン(6718) アイホン(6718)
住宅のドア脇のインターホンでトップシェア。
75年にわたってインターホン一筋。
成熟市場だがアイディアひとつで新機能付き製品を次々に開発。
スマホと連動したテレビ型ドアホンは外出先でも来訪者の対応ができ、置き配での荷物の受け取りが容易に。
学校、公共施設、オフィスでもセキュリティのニーズが顕在化。
病院や介護施設向けのナースコールも需要が高まる。
完全無借金で自己資本比率は84%に達する。
500億円の時価総額に対して保有現金は243億円。

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以上
鈴木一之の市場交差点 ― 経済と社会、変化が交わる地点から考える
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