次世代エネルギー技術である核融合発電への関心が高まりつつあります。
発電効率が高く、安全で「究極の発電」ともいわれ、政府が実用化を後押しする動きが出始めました。
核融合発電とは1億度でプラズマ化させた重水素と三重水素をぶつけて核融合反応を起こし、そこで生まれる熱エネルギーを利用して発電する仕組み。
核融合とは例えば水素のような軽い原子核同士が高温でぶつかった際に、ヘリウムなどのより重い原子核に変化する現象のことを指します。
地球を照らし続ける「太陽」ではこの核融合が絶えず発生しています。
太陽は47億年以上、熱や光を生み出し続けています。
これを人工的に行おうとしているのが核融合発電ということになります。
原子力発電と似ていますが、原子力発電はウランのような重い原子核を、2つの軽い原子核に「分裂」させることで熱エネルギーを生み出します。
原子炉の中では絶えず核分裂反応が起こっているため、暴走しないように制御装置で常にコントロールする必要があります。
制御に失敗すると東日本大震災時のような爆発事故につながります。
これに対して核融合発電は何らかの衝撃でプラズマを維持できなくなれば核融合自体が止まるために、安全性が高い点がポイントです。
核のゴミを出さないというメリットもあります。
また、核融合発電は投入したエネルギー以上のエネルギーを生み出すことで、究極の発電といわれます。
原発同様に、CO2も発生しません。
また、燃料は海水中にあり、ほぼ無尽蔵です。
燃料1グラムで石油8トン分のエネルギーを作ることができるとの論文もあります。
一方、実用化には技術的に超えなければならない壁があり、これをクリアするには膨大な資金も必要となります。
日本のように発電資源に乏しい国には「夢の発電」ともいえ、実際、この分野では日本が世界的に見ても先行してきた経緯があるのです。
ただ、各国の巨額の予算投入などで、国際競争が激しさを増しています。
ここ数年で実用化に向けた動きが出始めています。
米ローレンスリバモア国立研究所は22年12月に、投入レーザーエネルギーの154%に相当するエネルギーを発生させることに成功したと発表しました。
報道によれば、これは史上初めて核融合閾値(しきいち=境界)100%を超えた核融合エネルギー発現を実証する科学的根拠を示したものだそうです。
日本では政府の統合イノベーション戦略推進会議が今年4月14日に、核融合エネルギーを新たな産業ととらえ実用化に向け加速化を図る「フュージョン・イノベーション戦略」を決定しました。
今後10年を見据えて技術的優位性を活かして、フュージョンエネルギー(核融合発電の一般的な呼称)の産業化をビジョンに掲げています。
核融合エネルギーの実用化に向けては現在、国際プロジェクト「ITER(イーター)計画」が進行中で、日本でも超電導トロイダル磁場コイルの提供などでプロジェクトに貢献しています。
今年5月には核融合発電での日本連合を形成する動きが明らかになりました。
三菱商事や関西電力、政府系ファンドなど16社が京都大学発核融合関連スタートアップに約100億円を出資。オールジャパン体制で海外勢との競争に臨むとのことです。
出資するのは京都フュージョニアリングで、同社は核融合炉周辺およびプラントに必要な機器・システムの研究開発を担うプラントエンジニアリング企業です。
上場企業ではINPEX、日揮系ファンド、三井物産、三菱商事、電源開発などが出資。内閣府の資料などによると英政府が主導する核融合炉開発プロラム「STEP」における核融合反応に必要な三重水素(トリチウム)のエンジニアリングに関するノウハウ提供などを受注しているとのことです。
核融合反応の中核装置「ジャイロトロン」の開発では世界に先行している、調達した資金を活用し、核融合炉を安定的に稼働できる技術の確立を目指す、報道では24年にも国内に核融合発電の小規模な実験プラントを設け、ジャイロトロンなどの装置の動作を実証するとのことです。
主な核融合発電関連銘柄
京都フュージョニアリングに出資(ファンド経由を含む)
INPEX(1605)、
電源開発(9513)、
三井物産(8031)、
三菱商事(8058)、
日揮(1963)、
関西電力(9503)など。
浜松ホトニクス(6965)
高強度レーザーによる慣性核融合の実証を目指し、高強度レーザーを開発。
産業への技術応用も展開。
X線集光ミラーなどに展開。
22年1月に阪大発核融合ベンチャーのEX-Fusion(エクスフュージョン)と技術提携を行うと発表。
高精度形状のX線ミラーで必要な技術は、レーザー核融合炉の実用化に向けた開発に不可欠と。
23年1月に、英トマカクエナジーの核融合炉に向けて高温超電導線材を供給すると発表。
先進核融合原型炉「ST80-HTS」向けで、炉の建設に必要な100キロメートルに及ぶ量の高温超電導材を供給するという。
22年7月に核融合発電を開発する米TAEテクノロジーズに出資。
出資額は非公表だが数10億円規模との報道。
素材の開発などで協力する。
事業面でも提携し、日本を含むアジアで炉の耐久性を高める構造材などを探すほか発電以外の用途開発も検討するという。
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