23年3月期の決算発表が一巡しました。
日本経済新聞のデータでは24年3月期の日経平均株価ベースの1株利益は約2,040円程度、前期の2080円前後からは低下します。
これは前期に海運大手3社がコンテナ船の持ち分法利益が膨らんだ反動があることや、投資案件の多い商社の純利益が資源高の一巡で減益になることが要因です。
大手運用機関によれば本業の儲けを示す営業利益は、会社予想で前期比5%増と堅調が見込まれます。
そこで、今回は前期・今期ともに2ケタ増益となる、好決算企業をピックアップしてみました。
毎回ですが、私の独断と偏見で選別しています。
国内の製薬大手。循環器領域や感染症領域に強みがある。
英アストラゼネカ社と提携し、がん領域が急速に拡大している。
同社の抗がん剤はADC(抗体薬物複合体)と呼ばれる技術を使ったタイプのものだ。
「HER2」と呼ばれる特定のたんぱく質を持つがん細胞に結合する抗体と、薬物を組み合わせたのがADC、がん細胞に入り込み、がんを攻撃する薬物を放出する。薬物は周囲のがん細胞にも浸透し、治療効果を高めることができる。
つまり、がん細胞を標的とする抗体に、強力な化学療法剤を載せてがん細胞へ運んでもらい、がんを効率的に叩くことができる。
2020年に「エンハーツ」という製剤名で発売され、毎年売上高を付加している。
ほかにも、アプローチの手法が異なるADCが2種類あり、将来的に同社の業績を拡大させることが期待されている。
23年3月期の売上高1兆2,784億7,900万円(前年比22.4%増)、営業利益1,205億8,000万円(同65.1%増)となった。
エンハーツが伸びているほか、主力の凝固剤「リクシアナ」、疼痛治療剤「タリージエ」も順調だった。
24年3月期は売上高1兆4,500億円(前期比13.4%増)、営業利益1,350億円(同12.0%増)、1株利益59.9円を計画している。
配当は前期比4円増の年34円とする方針。
エンハーツの売上高は前期比54.2%増の3,200億円を見込んでいる。
マイルストン(開発段階に応じた収入)も含めると3,653億円(同41.3%増)となる。
乳がんや胃がん領域が中心。
研究開発費増をこなしての2ケタ増益となる。
国内最大の自動車部品メーカー。世界でも首位級。トヨタ系だが、国内外の幅広い完成車メーカーと取引がある。
エンジン制御システム、カーナビ、ADAS(先進運転支援システム)など幅広く展開している。
23年3月期は売上高6兆4,013億2,000万円(前年比16.1%増)、営業利益4,260億9,900万円(同24.9%増)だった。
半導体不足による車両減産の影響はあったが、電動化やADAS関連の売上増、コロナ規制からの回復などが寄与したとしている。
地域別では全セグメントが増収になった。
24年3月期は売上高6兆3,000億円(前期比1.6%減)、営業利益は5,100億円(同19.7%増)、1株利益511.4円を計画している。
配当は前期比5円増配の年190円配とする方針。電動化や自動運転の分野で収益力が上がっているという。
同社ではハイブリッド車(HV)やEV(電気自動車)に使うインバーターに加えて、センサーやカメラなど運転支援向けの製品が伸びるとみられる。
また、トヨタなどを念頭に減産は起こらないと期待を示し、半導体不足についても夏以降に供給が追い付いてくるとの認識を示したという。
売上が減収見込みなのは今期の生産台数が10%減産するリスクを織り込んだためだが、かなり保守的に見積もった結果としている。
鉄道電気設備工事会社の大手。JR東日本系で、同社向けの工事では首位。
鉄道省の指定業者136社が共同出資して設立した経緯がある。
鉄道電気のほか、建築電気設備、携帯基地局など情報通信にも展開。
23年3月期は売上高1,721億円(前年比0.8%減)、営業利益96億5,800万円(同29.6%増)となった。
顧客の設備投資抑制策という厳しい環境下、東北新幹線大宮・小山間耐震工事支持物立替工事、松本駅連動装置取替信号設備改良工事などを受注し、減少を抑えた。
駅ビル再開発などの一般電気が踏ん張り、営業利益は2ケタ増となった。
24年3月期は売上高1,924億5,000万円(前期比11.8%増)、営業利益134億7,000万円(同39.5%増)、1株利益153.2円を計画している。
配当は前期比5円増配の年42円とする方針。連続増配。
主力の鉄道電気の受注条件緩和などが追い風。
アナリストによれば25年度竣工の江戸東京博物館改修工事などを受注済みで、来期以降の業績拡大も期待される。
オフィスビルなどの間仕切り総合メーカー。国内首位。ゼネコンなどの新築ビル向けに強い。本社は石川県・小松市。
病院、学校など公共施設向けにも実績多数。
23年3月期は売上高377億7,200万円(前年比9.4%増)、営業利益23億600万円(同29.6%増)となった。
多様な働き方に対応した二人用個室ブース「Atrium Twin」、フレキシブルな学習環境を実現する学校間仕切などを開発し市場投入。原材料高を値上げで対応した。
官公庁向けでは文化施設が好調に推移したという。
24年3月期は売上高400億円(前期比5.9%増)、営業利益29億円(同25.7%増)、1株利益213.2円を計画している。
配当は前期比25円増配の年120円とする方針。連続増配。
首都圏オフィス向けや、工場、宿泊施設向けなどが伸びるとみられる。
新規製品の開発や最新設備の導入などで採算の改善を目指す。
健康保険組合の医療データを匿名加工したヘルスビッグデータを製薬や保険会社などに提供することで対価を得るビジネスモデル。オムロンが筆頭株主。
23年3月期の売上高278億900万円(前年比27.5%増)、営業利益59億2,600万円(同23.9%増)となった。
前期の取引健保の加入者数が前期に比べて541万人増の1,257万人となり、データベースが一段と充実。
ヘルスビックデータの売上収益が37%増となっている。
注力している遠隔医療(遠隔画像診断サービス)も2ケタの増収を確保した。
24年3月期は売上高350億円(前期比25.9%増)、営業利益76億円(同28.2%増)、1株利益84.2円を計画している。
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