株式アナリストの鈴木一之です。
今回は自動車の自動運転技術について考えてみます。
いまや中国は世界最大の自動車市場を有する国となりました。
ただし最近は景気の低迷が長期化して明るい話はあまり聞こえてまいりません。
EVで快進撃を続けるBYDでさえ、7月の新車販売台数は前年比ほぼ横ばいの34万台にとどまりました。
2ケタの伸びが当たり前だった常勝体制にブレーキがかかっています。
その中国のEV市場で、トヨタ自動車(7203)トヨタ自動車(7203) の販売が好調です。
4-6月は累計で2万6000台(前年比+57%)のトヨタ製EVが売れました。
日産自動車(7201)日産自動車(7201)も前年比2.6倍の1万6000台でした。
8月30日付の日経・電子版が伝えています。
文中には日系自動車メーカーの販売好調の要因はふたつあると紹介しています。
ひとつは低価格、もうひとつは自動運転技術です。
低価格に関しては、トヨタが3月に発売した「bZ3X(ビージースリーエックス)」は10.9万元(230万円)という安さが功を奏して、4-6月は1万7000台の販売というヒットにつなげました。
同じように日産も4月に投入したEVセダン「N7(エヌセブン)」を11.9万元(240万円)で売り出して、最初の1か月の受注台数が1万7000台に達したそうです。
好調のもうひとつの要因が自動運転技術です。
トヨタ、日産どちらも現地の新興企業・モメンタの提供する自動運転、運転支援技術を搭載しています。
モメンタの運転支援技術は、高速道路や信号の多い一般道でもアクセルやハンドルの操作を自動車サイドが支援します。
このシステムは「ナビゲート・オン・オートパイロット」と呼ばれ中国で普及し始めている技術です。
日本の自動車メーカーはトランプ大統領の求める自動車関税に翻弄されてきました。
何か月にも及ぶ大掛かりな政治交渉を経て、25%から15%への引き下げが決まったばかりです。
安堵したのも束の間。
冷静になって周囲を見回せば、中国はEVの販売実績を伸ばすばかりか、着々と自動運転技術を強化しています。
EV開発のロードマップが後退しつつある現在、自動車業界の次なる技術革新の中心テーマは自動運転に絞られそうです。
関連する企業をピックアップします。
銘柄ピックアップ
デンソー(6902)
デンソー(6902)
トヨタ系の自動車部品メーカー。
国内最大で世界でも第2位。
技術はサーマルマネジメント、エンジンなどパワートレイン、ブレーキシステムと自動車の中核技術を担うが、現在ではソフトウエア開発と自動運転に焦点を絞る。
人間の感覚をエンジニアリングに落とし込む、というシステム開発ではNTTデータと包括提携を締結。
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フィックスターズ(3687)
フィックスターズ(3687)
高速化ソフトを開発する。
CPU、GPU、NAND型フラッシュメモリ、さらには量子コンピュータなど、あらゆるハードウエアの能力を最大限に引き出すソフトウエアの高速化、最適化技術に強い。
同社の技術によって製造業から金融、スパコン、医療の画像診断、ロボティクス、量子コンピュータなど、幅広い分野で演算処理の高速化が実現している。
その技術は自動車の自動運転にも欠かせない。
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セック(3741)
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「リアルタイムソフトウェア」の技術に強い、システム工学を究めたプロ集団。
宇宙開発のロケット発射制御システムや高速道路の位置情報システム、ダム監視システム、洪水予報・警報システム、再エネ管理システムなど、今の社会をリアルタイムにとらえて制御・監視するシステムに特に強い。
その技術はそのまま自動車の自動運転システムに応用され案件を豊富に抱える。
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モルフォ(3653)
モルフォ(3653)
スマホの手ぶれ補正など画像処理ソフトを開発。
デンソーが大株主の第2位(4.7%保有)で、車載用の次世代画像処理技術を共同で開発。
中国スマホメーカー向けが主力だったが2015年にデンソーと資本・業務提携を交わし車載カメラに重点が移る。
今年5月には、カメラ1台で距離を測定する新技術を開発。
LiDARやミリ波レーダーに代わる新しい距離推定技術として、車載カメラを安く高機能に変化させることができる。
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以上
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