株式アナリストの鈴木一之です。
今回のテーマは内需関連株です。
「トランプ関税」が世界を震撼させています。
米国の東部時間で2025年7月7日正午、トランプ大統領は日本を含む主要な貿易相手国に新たな関税率を通告しました。
日本は韓国と同じ25%の税率となりました。
基本税率の10%に上乗せ部分の15%を加えたものです。
4月初旬の24%からわずか1%ですが上乗せされました。
同時に米国政府は、8月1日より関税の徴収を始めることも発表しました。
このことは相互関税に関する通商交渉のタイムリミットが、これまでの7月9日から8月1日に延長されたことと受け止められます。
日本は7月20日が参院選の投票日です。
ベッセント財務長官がいみじくも指摘したように、この選挙が終わるまでは日本の政治家と官僚から、個別分野での大幅な譲歩を引き出すことはむずかしいと見られます。
したがって7月20日に参院選が終了し、それから新たなタイムリミットである8月1日までの10日間が、日米間の通商交渉の最後のチャンスとなってきます。
日本はこの短い期間にどれほどの具体的な対米黒字の削減案を示すことができるのか。
それが真剣に問われます。
提示できなければ関税が発動され、本当の意味での国難に陥ることになりかねません。
日本経済にとって、相互関税も個別分野の関税もどちらもきわめて重要な意味を持ちます。
とりわけ自動車関税の部分が大きなカギを握っています。
「関税問題は自動車問題」とも読み替えることができます。
貿易統計の数値が示すところでは、日本の完成車メーカーはすでに5月の輸出分から米国向けの輸出価格を▲20%近く引き下げているようです。
関税がかかることで上昇する米国での販売単価を、メーカー自らが輸出価格を引き下げてコスト分として引き受ける覚悟のようです。
米国での販売シェアを落とす事態は避けたいという意向がうかがえますが、その分利益率が圧縮され、収益上は厳しくなることは避けられません。
株式市場では輸出関連株を避けて、次第に関税とは距離を置くことができる内需セクターへと物色の中心がシフトし始めています。
今後どのような影響が出てくるのか、判断材料が整うまでは内需関連株が優位という流れが定着するような雲行きです。
建設、不動産、倉庫・運輸、小売、銀行など、内需セクターの代表的な銘柄をいくつかピックアップしてみます。
銘柄ピックアップ
<電気工事>
トーエネック(1946)
トーエネック(1946)
中部電力系の電気工事会社。
中部電力が筆頭株主で株式の42%を保有。
売上高依存度は40%ほど。
それ以外は独自のルートで開拓を進める。
中部電力傘下で培った高い技術を基に、電気工事以外にも高層ビルの空調、給排水、情報通信工事から太陽光発電まで幅広く手がける。
主な施工実績としては、名古屋市の新しい顔「中日ビル」、東京駅の目の前にある「YANMAR TOKYO」など数え切れない。
前期に続いて今期も最高益更新の見通し。
いまだPBRが0.8倍台とは割安に映る。
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<紙・パルプ>
レンゴー(3941)
レンゴー(3941)
段ボールは国内トップ。
段ボール原紙の板紙でも第2位に位置する。
段ボールばかりでなく、樹脂フィルム包装だけの「軟包装」、店舗での販売促進に直結する「個包装」、「美粧段ボール」など、商品パッケージに関するあらゆるニーズに即応する体制を築いている。
コロナ期に見られた宅配特需の反動減は収まり、今期売上高は初の1兆円乗せが堅い。
利益の伸びはこれからだが「リサイクルの優等生」である段ボールの需要はさらに高まると見られる。
PBRが0.4倍台とはいかにも割安。
高利回り銘柄。
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<小売>
パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)
パン・パシフィック・インターナショナルHD(7532)
「ドン・キホーテ」を中核に、ユニー、長崎屋、ピカソを国内外で展開する。
「ドン・キホーテ」は独特の品ぞろえや商品陳列が目玉で「コンビニ+ディスカウント+アミューズメント」がコンセプト。
日用品から食品、衣料品、家電、ブランド品、バラエティグッズまで4万点を超えるアイテムをそろえる。
日本を訪れる外国人観光客にもたいへんな人気。
さらに巨大化した「MEGAドン・キホーテ」は2008年に誕生。
豊富な品揃えに「驚きの安さ」を加えた点がポイント。
デフレにもインフレにも強く最高益を更新中。
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<不動産>
フージャースHD(3284)
フージャースHD(3284)
1994年創業の独立系マンションメーカー。
特に人口10万人程度の地方都市での分譲に強く、その地域の特性を活かしたコンセプトのマンション開発に取り組んでいる。
新築戸建分譲住宅やシニア向け分譲マンションも手がける。
コロナ禍で一時落ち込んだ業績はここに来て急拡大。
前期は新築分譲マンション1062戸を引き渡した。
今期はシニア向けと合わせて1534戸の分譲マンションを引き渡す予定。
連続して最高益を更新する見通し。
配当性向40%でDOE4%以上を目指す。
配当利回りは5%強に達する。
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以上
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