半導体関連株に復活の兆しが見えつつあります。
株価は春先にかけて調整していましたが、エヌビディア(NVDA)やマイクロソフトの好決算を受けてAI(人工知能)半導体の先端化、データセンターなどAIサーバー向けの需要拡大が確認されています。
今回は特に、「前工程」に注目したいと思います。
半導体の製造工程は、シリコンウエハに設計図を描いて回路を作る「前工程」と、完成したチップを切り出し、回路部分を保護しつつ配線する「後工程」(パッケージ封止)に分けられます。
前工程では、回路を描く線幅を細くすることで半導体の性能を向上させてきました。
微細化が進むほど、同じチップ面積で多くの素子を搭載でき、演算処理能力が高まるためです。
微細化には限界がありますが、オランダの露光装置メーカーASMLがそれを突破し、現在では3ナノメートルまでの微細化が進んでいます。
露光装置は光で半導体回路を焼き付ける装置です。
ASMLは「EUV(極端紫外線)」という非常に波長の短い光を使う露光装置の開発に世界で唯一成功しました。
ちなみに、髪の毛の太さは約10万ナノメートル、花粉の大きさは約3万ナノメートルとされています。
3ナノ未満にするためにはさらなる技術革新が必要で、一部で再び限界説も浮上していました。
レンズの明るさおよび解像度(レンズが持つ細部を表現する能力を示す指標)を表すものとして「開口数(NA)」があります。
NAはレンズの明るさを示し、開口数が大きいほど明るいレンズになり、より微細な露光が可能になります。
開口数を高めることで、3ナノの壁を突破することが可能になりました。
2ナノは高度な自動運転、二足歩行ロボットや次世代のスマートフォンに欠かせない技術とされています。
2ナノ半導体は3ナノに比べ処理能力が10~15%向上し、消費電力が25~30%削減できるとみられています。そして、2025年は「2ナノ元年」といわれています。
半導体受託生産で世界首位の台湾TSMCが2025年後半に2ナノ半導体の量産を開始する見通しです。
韓国・サムスン電子も年内の量産を目指し、インテルも量産化の計画を進めています。
一方、日本国内ではラピダスが今年4月に2ナノの試作を北海道の工場で開始したようです。
2027年の量産化を目指しています。
日本国内の現状の最先端は40ナノメートルとみられています。
2ナノへの移行は、半導体製造装置の先端品需要を拡大させます。
関連銘柄をピックアップ。
半導体製造装置で世界3位。
コーター・デベロッパー(塗布・現像)、エッチング(食刻:回路パターンを残す工程)など前工程装置に強み。
決算説明会資料では2026年には顧客の2ナノ量産投資が加速すると予想。

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週足表示、2025年6月23日まで
先端半導体向けのマスクブランクス欠陥検査装置が主力。
EUV露光用検査装置ではシェア100%。
High NA向けでペリクル(保護膜)付きマスクにも対応した先端製品「ACTIS A300」シリーズを投入。
2026年6月期は受注が回復へ。

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KOKUSAI ELECTRIC(6525) KOKUSAI ELECTRIC(6525)
半導体製造の前工程における「成膜」プロセスに特化した装置専業。
複数枚のウエハを一括処理できるバッチ式ALD成膜装置で世界トップメーカー。
ウエハ上に回路素材となるナノレベルの薄膜を形成する。
ALDは複数のガスをサイクリック(循環的)に供給する工程を伴い、原子層レベルで成膜する先端手法。
微細化、3次元化の進展で薄い膜を均一に成膜する必要があるが、アナリストは「高い要求に応えられるのはALD装置のみ」と指摘。

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トリケミカル研究所(4369) トリケミカル研究所(4369)
主力製品の「High-k」(高誘電率絶縁膜)は回路線幅の微細化に不可欠。
線幅が細くなるほど性能は高くなる一方、隣の線との距離が近くなりショート(短絡)を起こす危険が高まる。
High-kは微細な領域でも電気を通しにくい性質がある。

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フジミインコーポレーテッド(5384) フジミインコーポレーテッド(5384)
半導体製造用のCMP(化学的機械研磨)製品の大手。
先端品に強み。
シリコンウエハの超平坦加工に使われる高精度研磨材で世界シェアトップ。
超平坦とは仮にウエハを直径300メートルの競技場に見立てた場合、表面の高低差が0.1ミリメートル以下となる。
極限まで平らにするにはCMPが不可欠。

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SCREENホールディングス(7735) SCREENホールディングス(7735)
ウエハ洗浄装置で世界トップメーカー。
ウエハ洗浄には複数枚を一度に洗う「バッチ式」と1枚ずつ丁寧に洗う「枚葉式」があるが、同社は枚葉式に強みを持つ。
半導体回路線幅の微細化が進むと、枚葉式の需要が増加する。

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野村マイクロ・サイエンス(6254) 野村マイクロ・サイエンス(6254)
超純水装置の大手。
ウエハ洗浄の際の水は「交じりっ気のない水=超純水」が不可欠。
不純物の含まれた水で洗浄すると、ウエハに不純物が付着するリスクが高まる。
かつての許容範囲はオリンピックプールに耳かき2~3杯分とされていたが、現在では東京ドームに醤油2~3滴程度しか許されないと言われている。

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