2024年11月の米大統領選挙を控え、現職の民主党ジョー・バイデン氏、共和党で前大統領のドナルド・トランプ氏の対決が確実視されています。
政策の差はいろいろとありますが、今回は米国民の関心が高いヘルスケアにスポットを当てます。
両陣営ともに力を入れている分野でもあり、関連銘柄に関心が向かう可能性が大きいともいえそうです。
現在政権を担っている民主党のバイデン政権が率いるホワイトハウスは2023年12月に、医療費や処方箋薬のコスト削減の新たな措置を発表しています。
例を挙げると税金を活用して発明された医薬品について、関連法案を適用し、発明を民間企業などにライセンスすることで国民が手ごろな価格で入手できるようにするということです。
ちなみにトランプ前政権はこの法律適用を禁止する規制案を提案していたそうで、バイデン政権が撤回した格好になりました。
バイデン氏の政策では女性の健康問題に対する研究所の設立や、がんの克服を目指す「がん・ムーンショット計画」などの取り組みなどに熱心ということが挙げられます。
ムーンショット計画はもともと、ケネディ政権でアポロ宇宙計画での月に人を送る計画のことでしたが、もう一つのムーンショットはがんを撲滅するという大胆なビジョンを指します。
バイデン大統領は2022年9月に「がん・ムーンショット」について進捗と新たな取組みを発表しました。担当部局の創設や、バイオテクノロジー推進の組織立ち上げなどを打ち出しています。
バイデン氏はこのほか、ヘルスケアのサイバーセキュリティへの投資や、メディケア(高齢者向け医療保険)・メディケイド(低所得者向け医療保険)の拡充などを打ち出しています。
一方、トランプ氏は必須医薬品の製造拠点を米国に戻して医薬品不足を解消する、リショアリングに熱心だということです。
新興国など他の地域に拠点を移すことをオフショアリングといいますが、自国回帰がリショアリングです。
米国第一主義を掲げるトランプ氏らしい政策ともいえます。
また、他国の巨大企業とも戦い、医薬品の価格を下げることで自国の医薬品企業を優位にする施策も打ち出しています。
子どもの肥満や、免疫疾患などの慢性疾患への取組みを強化するとも報じられています。
対立姿勢が目立つ両氏ですが、合致している政策もあります。
公的医療保険や社会保障制度の保全や拡充方針です。
バイデン氏はメディケア・メディケイドの拡充を掲げ、トランプ氏もメディケアや社会保障を守るとしています。共和党は小さな政府を目指すことが有名ですが、今回は社会保障への支出削減に反対とのこと。
アナリストは「在任期間中のコロナ禍での苦い経験が影響した」と分析しています。
関連銘柄をピックアップします。
抗がん剤関連
世界トップクラスの製薬メーカー。
世界140カ国以上で展開。
がん免疫治療薬「キイトルーダ」が主力製品。
子宮がんワクチン「ガーダシル」なども手掛けている。
2024年にがん治療薬のハープーン・セラピューテクス社を買収した。
第一三共と次世代抗がん剤ADC(抗体薬物複合体)の開発・商業化で提携。
製薬の世界大手。
バイオ医薬品企業。
乳がん治療薬「イブランス」などと展開。
ADC分野に強みがある米シージェン社を2023年3月に約430憶ドル(約6兆6,600億円)で買収すると発表。
ADCはがん細胞をピンポイントで攻撃することに特長がある。
その他
分析機器や試薬の世界的メーカー。
2021年に医薬品の開発受託を手掛けるPPD社を買収。
2017年には医薬品受託製造開発期間(CDMO)のオランダ・パセオン社を買収している。
2016年に医薬情報大手「IMSヘルス」とCRO(医薬品開発受託)大手「クインタイルズ」の統合で発足。
医薬品販売のマーケティングや臨床開発のソリューション事業など幅広く医療サービスを提供する。
米国の医療保険最大手。
「メディケア・アドバンテージ」など高齢者向けの医療保険を展開。
低所得者向け「メディケイド」関連の政府プログラムを通じた医療保険も展開している。