半導体業界が繁忙、日本の製造装置関連企業に追い風
半導体の需給のひっ迫が、日本の製造装置メーカーに追い風となっています。
半導体の需要増加は高速通信規格5Gが商用化されているほか、新型コロナウイルス感染症によりテレワーク、オンライン学習などが普及し、通信量が膨大になっていることが要因です。
半導体は情報の記録や計算などに用いれられ、コンピュータ、スマートフォン、サーバーなどに幅広く使われています。
そして、EV(電気自動車)シフトなど電動車の増加が、半導体の需要をさらにひっ迫させています。
米半導体大手のインテルは今年3月、200億ドル(2兆2,000億円)を投じてアリゾナ州に新工場を建設し、自社生産のほか、EMS事業に進出すると発表しました。
バイデン政権はハイテク産業における中国の台頭を警戒し、先の経済対策で半導体の米国内生産を支援する方針を打ち出しています。
インテルの設備投資もバイデン政権の後押しが要因とみられています。
他方、米中が対立する中で、中国が自前での半導体生産への意欲を見せています。
半導体を作るには、当然ながらその製造装置が必要になります。
日本は1980年代に半導体で圧倒的なシェアを誇っていましたが、米国産の半導体輸入を促進する日米半導体協定などで地位が急速に低下し、90年代には半導体本体を手掛けている日本企業は壊滅しました。
一方、半導体を製造する装置は、当時のノウハウを生かしながら生き残り、日本企業が存在感を示す分野です。
特に先端の微細化の分野には強さを発揮しています。
半導体露光装置で世界首位のAMSL(オランダ)は、EUV(極端紫外線)という技術を用いて、きわめて細い線幅の露光装置の開発に唯一成功しています。
それまでは半導体の線幅は10ナノ(ナノは10億分の1)メートルが限界とされていましたが、EUV露光では3ナノ~2ナノまでの微細化が可能になるとみられています。
半導体の線幅が狭まれば、例えば同じ大きさのスマホならより多くの部品を入れられるため性能が向上します。
同じ性能ならば小型化できますね。
半導体業界はこれまで約4年間の周期で好況と不況を繰り返す「シリコンサイクル」となるのが一般的でした。
新たな製品の立ち上がりで需要が拡大し、価格も上昇。
その後、普及に伴って需給が緩み、価格が低下するという循環です。
今回は、通信量の増大局面の継続で、先端半導体の需要が継続的に拡大する「スーパーサイクル」になっているとの見方もあります。
半導体の性能が上がると、それに対応する製造装置が必要になります。
関連企業の業績好調が続くとみられます。
一方、中期的なリスク要因としては米国などでの作り過ぎによる供給過剰や地政学リスクでの経済の失速などが考えられます。
参考
イラストで分かる半導体製造工程|半導体業界研究サイト「SEMI FREAKS」 (semijapanwfd.org)
半導体製造装置関連銘柄紹介
世界的にも存在感を示している主な製造装置関連企業をピックアップします。
(銘柄情報をご覧になるにはログインが必要です。)
東京エレクトロン(8035)
半導体製造装置で世界3位。
エッチング(表面加工)、コータ・デベロッパ(塗布現像装置)など前工程に強みがあります。
EUV露光向けのコータ・デベロッパーではシェア100%を誇ります。
インテルが大手顧客で、設備投資増の恩恵が期待されます。
レーザーテック(6920)
半導体マスク欠陥検査装置が主力。
マスクブランクス(転写原版)の検査装置でシェア100%。
EUV露光用検査市場でも市場を独占し、業績が拡大を続けています。
設置台数の増加でメンテナンスも収益寄与へ。
SUMCO(3436)
半導体シリコンウエハの専業。
信越化と世界双璧。
先端の直径300ミリウエハルなどに強みがあります。
顧客とは長期契約が多く、価格は安定する傾向があります。
増産は顧客ニーズに応じて慎重に行う計画です。
ディスコ(6146)
半導体ウエハを切る(切断装置)、削る(研削装置)、磨く(研磨装置)で世界首位。
消耗品の砥石でも稼いでいます。
シェアの高さを活用し、顧客ニーズに対応したソリューションの提供にも強みがあります。
SCREENホールディングス(7735)
半導体製造装置の大手。
ウエハ洗浄装置の世界トップメーカー。
一般的には複数枚の同時洗浄ですが、ウエハを一枚ずつ丁寧に洗う「枚葉式」に強みがあります。
性能の向上に寄与。
コータ・デベロッパーにも展開。
東京精密(7729)
超精密位置決め技術を活かして半導体製造装置に展開。
ウエハ検査装置では世界シェア首位。
ダイシングマシン(切断装置)やウエハ表面を平たん化するCMP(化学的機械研磨)装置などにも展開しています。
アドバンテスト(6857)
半導体検査装置で世界首位級。
DRAMなどメモリ半導体向けではトップ。
5G向けのテスターでも先行しています。
スマホの性能向上や、人命にかかわる車載向けなどでは検査の工程が増加傾向にあります。
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和島英樹
経済ジャーナリスト。
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年ラジオNIKKEIに入社。
東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。
2020年6月に独立。企業トップへの取材は1,000社以上。
ラジオNIKKEI担当番組に「マーケット・プレス」など。
四季報オンライン、週刊エコノミストなどへ寄稿多数。
国際認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
日本テクニカルアナリスト協会評議委員。
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