先月のレビュー
3月に入り金利は一段と上昇しドル高が継続
先月は長期金利の上昇と米国経済の堅調さを指摘しました。
先月号のレポートでは米国の長期金利の上昇について触れて、その影響は株価の下落やドル高という動きに現れるのではないかということを書きました。
世界的に長期金利は上昇したのですが米国金利の上昇が引き金になりました。米国の長期金利が上昇したのは米国の大規模な経済政策のために財政赤字拡大による国債の増発懸念などが原因でした。
その状況は現在も変わっていません。むしろバイデン政権は3兆ドル規模のさらなる経済対策を検討中と22日にニューヨーク・タイムズとワシントンポストが報道しました。
現時点で詳細は発表されていませんが、気候問題対策や低所得者向け住宅支援などを含むインフラ投資や授業料支援、中国との競争のための企業支援などが挙げられています。これらの財源のためには増税を行う可能性が高く、そうなると共和党との摩擦や増税による株価の下落といった問題が今後浮き上がってくる可能性もあります。
ここまで米10年債利回りは1.75%に上昇後は1.6~1.75%で安定しています。株価は長期金利の上昇に対して抵抗力出てきたというか、金利の上昇を材料にした下落という流れは一旦落ち着いています。
そして米長期金利の上昇によってドルの上昇が一段と進んでいます。
FOMCはインフレ率の上昇は一過性と判断
3月16~17日に行われたFOMCで注目された部分は3点ありました。1番目はFRBスタッフにより米国経済の予想、2番目がドットチャートによるFOMCメンバーによる金利見通し、3番目がパウエルFRB議長による長期金利上昇の抑制等のコメントが出るかといったものでした。
まず1番目の経済予想では2021年のGDPを12月の4.2%から6.5%に、失業率を5%から4.5%にPCEインフレーションを1.8%から2.4%に変更しました。注目されたのはGDPの数字ですが今年の米国経済は新興国並みの6.5%成長という驚きの予想。一部の市場関係者は7~8%の経済成長の予想も出ています。
GDP成長率6.5%というと最近では新興国でも難しい数字ですが、米国でそこまで経済成長が加速するとインフレ懸念が出てきます。実際インフレ率の予想はインフレ目標である2%を超えて2.4%となっています。
一方でFOMCメンバーによる金利予想であるドットチャートを見ると、2022年と2023年の利上げを予想するメンバーが若干増加しましたがそれでも最初の利上げは2023年以降の予想が続いています。
またパウエルFRB議長はインフレ率の上昇に関しては一過性、ティーパーリングに関しては実体経済の数字が改善してからと述べて、最近の長期金利の上昇に関しては特別なけん制発言はありませんでした。
パウエルFRB議長から米長期金利のレベルについて特別なコメントがなかったことで長期金利の上昇は止まっていませんが株価は落ち着き、為替もドルのじり高の流れが継続しています。
投資戦略
ドル円の上昇トレンドは継続中
ここまでのレポートではドル円とドルスイスのロングという投資戦略をお話してきました。前回のレポートではドル円は108.30付近を上抜けできるか、上抜けできれば109.85,あるいは110.20がターゲットになるという戦略でした。そしてドル円の上昇は加速してこれらのターゲットをこなして3月30日の時点で110.40付近に上昇しています。
米長期金利の上昇によるドル高という流れもあるのですがドル円の上昇な顕著なために、欧州通貨、オセアニア通貨ではドル高なのですがクロス円ではそれらの通貨は堅調で円安も目立っていました。
3月18日にクロス円については、ユーロ円は130.66、ポンド円は152.55、豪ドル円は85.45、ニュージーランド円は79.14、と高値まで上昇後に下落しています。
クロス円の上昇は一服したのですがドル円の上昇は続いています。
110.20付近は102.60を起点にしたフィボナッチ・エクステンション3.618倍で、今回このレベルに到達しています。ここを完全に抜けるようであれば4.236倍が111.40、4.764倍が112.40となります。112.40レベルは2018年12月以来の戻り高値で、上昇トレンドが継続するのであればターゲットになります。
一方でオシレーター系のインディケーターを見ると日足のRSIは85.6%、週足でも87.26%です。オシレーター系で見ると高値圏を示唆しています。
日足の一目均衡表の転換線が109.30付近に位置し、また109.30~40は今回上抜けするまで時間がかかっています。また109.30~109.30でしばらくもみ合っていたこと、25日移動平均線(指数平滑)も108.30付近に位置していることを考えると、下落した場合108.30~109.30のゾーンでサポートされる可能性は高く、このレベルが維持できれば上昇トレンドは継続、下抜けする場合は上昇トレンド終了と予想します。
上昇トレンドは継続中ですが、トレーリング・ストップを入れて短期では109.70割れ、中期目線では109.30割れ、長期目線では108.30割れロングストップとしたいと思います。
チャートは
ドル円日足 一目均衡表、25日移動平均線(単純)、RSI、MACD、スローストキャスティックス、フィボナッチ・リトレースメント、フィボナッチ・エクステンション
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YEN蔵こと田代岳
株式会社ADVANCE 代表取締役
米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。
その後、独立し個人投資家として為替、株のトレードを行うとともに、投資情報配信をセミナー、メルマガ、YouTubeなどで配信している。
為替を中心に株式、債券、商品、仮想通貨と幅広くマーケットをカバーして分かりやすい解説を行っている。
長期のファンダメンタルズ+短期のテクニカルを組み合わせて実践的なリポート、セミナーを展開。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。
また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。
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