※この記事は2020年11月4日時点の情報を基に執筆されています。
大接戦の米国大統領選
今月から直近の為替動向を考慮しながら、今後の見通しや注目通貨などをお届けしますのでよろしくお願いします。
まずは4年に一度のビッグイベントである大統領選挙を通過しました。
いまのところ前回2016年の時のトランプ大統領の当選ほどのサプライズはありませんがまれにみる接戦が続いています。
原稿執筆時点の11月4日の18時台ではまだ大統領は決定していません。
バイデン候補の選挙人獲得が上回っていますが、開票結果が出ていない州ではトランプ大統領が優勢でどちらが大統領になるかはまだ集計中です。
また同時に行われている上院、下院の選挙でも事前の民主党優勢から接戦に傾いておりどちらに転ぶかは予断を許しません。
また今後集計をめぐって法廷闘争になる可能性もあり事態は混とんとしています。
とはいえ株式市場も、為替市場も意外と落ち着いた動きになっています。
一日の動きとしてはそれなりに動きましたが、2016年のように大きく下落後反発するという感じではなく、また不確定の要素がある割にはマーケットは平静を保っています。
市場は開票結果を粛々と待っているように思えます。
今週の動きはポジション調整の動きだったか
今週に入りニューヨークダウは1,000ドルほど上昇し、日経平均も23,000円付近まで下落後に本日は23,800円台まで反発しました。
ドルインデックスは93付近から94付近まで上昇後一時93まで下落しました。
10月後半から大統領選に向けて株売り、ドル買いというリスク回避の動きをしており大統領選前にある程度ポジション調整が行われていた可能性があります。
そして大統領選の直前の今週は株買いドル売りとなり、ある程度ポジション調整を戻す動きとなったことで比較的市場のポジションが一方行に傾いていなかったことが選挙当日にそれほど混乱した動きにならなかった原因ではないかと考えています。
市場のポジションといえば米国債の動きがわかりやすい動きとなりました。
米10年債の利回りは8月に0.5%ほどでしたが、本日0.93%まで上昇して6月以来の水準まで上昇しました。
特に10月以降、いわゆるトリプルブルー(大統領、上院、下院の3つが民主党によって占められることを民主党のカラーであるブルーを使って表したもの)の予想が広がってきたことで金利の上昇が加速しました。
財政支出を増加させる民主党政権になると国債増発で国債が売られて金利が上昇するという連想でした。
しかし株式市場は財政支出を増加させるならば景気が良くなると考え株価は上昇すると考えました。
で昨晩から今日にかけては米長期金利は上昇しても株高でドル安となり、各市場がそれぞれ別々の思惑で動くという展開になりました。
従来のリスクオン、リスクオフ、ドル金利上昇からドル高という教科書通りの動きにはなりませんでした。
しかしトリプルブルーではなく大統領か議会を共和党が占める可能性が出てくると債券は買われ債券利回りは低下しました。
財政支出を抑え小さな政府を目指す共和党が残ればそれほど赤字が増えないという予想からの債券利回りの低下だと思われます。
そして市場は何もなかったように次のテーマに向かう
まだ大統領も議会も決定されていませんが市場は早くも大統領選挙を織り込みつつあるように思えます。
私の考えが間違えで嵐の前の静けさでなければということですが。
大統領選挙前のテーマは何だったのでしょうか?
FRBの金融緩和、追加経済刺激策の早期合意を求める市場VS欧米のコロナ感染再拡大の綱引きでした。
結局FRBの姿勢がどうなるかというのは重要な問題です。
FRBの緩和が続く限り特に株価が上昇してリスクオンの流れになるときはドルが売られる傾向にあります。
ここのところ財政赤字拡大で米長期金利が上昇しても、ドルの強さを示すドルインデックスは92~94.50のレンジを7月以降続けています。この動きは今月も継続するものと思われます。
ドルの動きはレンジだがユーロは来月の緩和が予想されている
来月の中盤ぐらいまではドルはレンジを予想しています。
一方先週のECB理事会でラガルトECB総裁は次回の理事会での追加緩和を示唆しました。
12月1日に予定されているECB理事会に向けてユーロドルは戻り売りのスタンスで臨みたいと思います。
1.2付近ではレーンECB専務理事をはじめ強いユーロに対するけん制発言があり、1.2付近が長期的なレジスタンスとして機能しています。
一方で1.16付近も中期的なサポートとして機能しています。
9月以降は1.16~1.19のレンジが続いており、ドルの動きを考えてもこのレンジを継続するものと思われます。
一目均衡表の雲にねじれが発生しており、また基準線、転換線が1.1740付近、60日移動平均も1.1720付近に位置し1.17台中盤が短期的なレジスタンスになっています。
1.17台中盤が抜けないようであれば1.16~1.1770のレンジ、上抜けしても1.18台後半はショートを作りたいポイントです。
ただ1.16を抜けないとレンジトレードになるので欲張らずに利食いを入れつつ戻り売りのスタンスでECB理事会まではレンジトレードを考えています。
YEN蔵こと田代岳
株式会社ADVANCE 代表取締役
米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行と外資系銀行にて、20年以上、外国為替ディーラーとして活躍。
その後、独立し個人投資家として為替、株のトレードを行うとともに、投資情報配信をセミナー、メルマガ、YouTubeなどで配信している。
為替を中心に株式、債券、商品、仮想通貨と幅広くマーケットをカバーして分かりやすい解説を行っている。
長期のファンダメンタルズ+短期のテクニカルを組み合わせて実践的なリポート、セミナーを展開。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨を始めとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深い。
また海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。
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