【ロング・ショート】株式投資の戦略を考える 【ロング・ショート】株式投資の戦略を考える

【ロング・ショート】株式投資の戦略を考える

執筆者:カブヨム編集部

株式投資のロング・ショート戦略とは何か

株式市場には多様な投資戦略が存在しますが、その中でも「ロング・ショート戦略」は、広く活用されている手法のひとつです。

ロング・ショート戦略は、将来的に価格が上昇すると見込まれる銘柄を「ロング(買いポジション)」で保有し、逆に価格が下落すると予想される銘柄を「ショート(空売り)」でポジションを取ることで、市場全体の価格変動リスクをある程度ヘッジしつつ、相対的な価格差から利益を狙う戦略です。

しかし、株式投資を始めたばかりの方にとっては、そもそも「ロング」も「ショート」もあまり聞きなれない用語だと感じるかもしれません。

本記事では、ロングとショートそれぞれの投資手法の基本から、戦略の実践における注意点、そしてリスク管理の重要性までを解説します。

ロング(買いポジション)とは

ロングとは、将来的な価格の上昇を期待して資産(例:株式など)を購入・保有することで利益を得るための投資手法、または価格上昇によって利益が出るポジションを取ることを指します。これは株式投資の基本的なスタイルと言えるでしょう。
安値で買い、高値で売ることで売買差益(キャピタルゲイン)を得ることを目的とします。

例えば、ある企業の業績が好調で、今後株価が上昇すると予想される場合、現在の価格で株式を購入し、価格が上昇したタイミングで売却することで利益を得ることができます。
ロングポジションは、企業の成長性やマクロ経済の拡大といったポジティブな要因を背景に構築されることが多く、長期的な資産形成に適した戦略でしょう。

<ロングの取引イメージ>


※画像は筆者が作成

ショート(空売りポジション)とは?

ショートとは、将来の価格下落を予想して、資産(例:株式など)を借りて先に売却し、後で安く買い戻すことで利益を得るための投資手法、またはそのような価格下落によって利益が出るポジションを取ることを指します。
企業の業績悪化や経済停滞といったネガティブな状況を背景に行われることが多く、より短期的な利益獲得を目指す投資家に支持されています。特に市場全体が弱気であると判断した場合に比較的有効に働く可能性が高まるでしょう。

通常、証券会社から資産を借りて空売りし、価格が下がった後に買い戻して返却することで、売却価格と買戻し価格の差が利益となります。
例えば、ある株が現在1,000円で取引されているとき、将来的に800円まで下がると予測する場合、1,000円で売り、800円で買い戻せば200円の利益が得られます。

<ショートの取引イメージ>


※画像は筆者が作成

ショートポジションを取るための準備と注意点


株式投資においてショートポジションを取るには、まず証券会社で信用取引口座を開設する必要があります。信用取引とは、証券会社から株式を借りて売却し、後に買い戻して返却する仕組みであり、現物取引とは異なるリスクとルールが存在します。

信用取引を行うには、一定の資金や保有資産を担保として「委託保証金」を預ける必要があります。保証金の水準は証券会社によって異なりますが、維持率が一定以下になると「追証(追加保証金)」が発生し、期限内に追加資金を入金しなければポジションが強制決済される可能性があります。

このような仕組みを十分に理解せずにショートポジションを取ると、予期せぬ損失や資金拘束に直面するリスクが高まります。したがって、信用取引のルールやリスク管理の方法について、事前に十分な知識を身につけておくことが不可欠でしょう。

≫詳細はこちら:信用取引のリスク管理(追証と維持率)

ロング・ショート戦略のメリットは?

株を買う(ロングポジションを取る)と同時に空売りする(ショートポジションを取る)という、二つの行動を組み合わせるロング・ショート戦略の最大のメリットは、市場の動きにかかわらず利益を上げるチャンスがあるという点です。
積極的に利益を追求したい方にとっては、売りから入ることができれば、下落相場でも戦略的に動くチャンスが増えるため、大きな魅力となり得るでしょう。

同じ業界内で大きな変化が起きている時期にも、ロング・ショート戦略は効果的です。

たとえば、業界内で新しい技術革新が起こった場合、一部の企業はこれを活用して成長できますが、他の企業は競争力を失うかもしれません。このような状況では、ロング・ショート戦略が役立ちます。

具体的には次のようなポジションを取るイメージです。


  • ロング:新しい技術をうまく活用し、これからの成長が期待できる企業(例えばA社)の株を購入する。

  • ショート:技術の進化についていけず、業績が悪化する可能性がある企業(例えばB社)の株を空売りする。

このようにポジションを取ることで、業界全体が不安定な状況でも、各企業の違いを生かして利益を狙えます。この戦略の強みは、市場全体の動きにあまり影響されず、個々の企業の特性に基づいて収益を目指せる点と言えるでしょう。

ロング・ショート戦略のデメリットとリスク管理

ロング・ショート戦略には、想定以上に大きな損失を被る可能性があるというデメリットがあります。そのため、大前提としてリスク管理の重要性を理解しておく必要があるでしょう。
以下に、考慮すべき代表的なリスクを挙げます。


  1. 1. 個別銘柄リスク:企業の業績悪化、経営陣の変更、規制の変化など、その企業に特有の様々な問題によって株価が期待に反した動きをすると、損失につながる可能性があります。

  2. 2. マーケットリスク:一般的にロング・ショート戦略は、市場全体の価格変動の影響を軽減することを目指しますが、完全に影響を避けることは難しく、市場が急変した場合には損失を被る可能性があります。

  3. 3. 流動性リスク:市場で十分な流動性がないと、取引価格が不利になり、高コストで取引を実行せざるを得ないことがあります。ロングの場合、希望する価格で株を売却できないことがあり得ますし、ショートでは株を買戻す際に流動性が低いと、予想以上のコストが発生することがあります。

  4. 4. コスト:ショートポジションを取ることには、借入コストなどの追加コストが伴います。これが戦略の総コストに影響を及ぼし、収益を圧迫することがあります。

  5. 5. レバレッジリスク:ショートを行うために信用口座を活用している場合、レバレッジを使って手持ち資金以上の取引が可能です。これにより利益を増加できる可能性が高まる一方、市場の急激な変動時に損失を大きくするリスクも増加するため、厳格な管理が必要になります。

こうしたリスクの影響を受け、想定以上の大きな損失を被らないためには、リスク管理を徹底することが重要です。
具体的には次のような調整を行うとよいでしょう。


  1. 1. ポジションのバランス調整
    ロングとショートのポジション比率を市場環境や銘柄の特性に応じて調整することで、ポートフォリオ全体のリスクを分散できます。例えば、強気相場ではロング比率を高め、弱気相場ではショート比率を強化するなど、柔軟な対応が求められます。

  2. 2. 逆指値(ストップロス)の設定
    価格が一定水準に達した際に自動的にポジションを決済する「逆指値」を活用することで、損失の拡大を防ぐことができます。特にショートポジションでは、価格上昇による損失が理論上無制限に膨らむ可能性があるため、事前の損切りライン設定は必須です。

  3. ≫逆指値(ストップロス)の詳細はこちら


  4. 3. 経済イベントの把握と対応
    中央銀行の政策変更、重要な経済指標の発表、地政学的リスクなどは市場に大きな影響を与える可能性があります。これらの情報をできる限り迅速に把握し、ポジションを臨機応変に見直すことで、外部ショックへの耐性を高めることができます。

まとめ:戦略的思考で投資成果を高める

ショートとロングの両方を柔軟に活用することで、投資家はリスクを分散しながら、さまざまな市場環境に対応する力を身につけることができます。

初心者にとって特にショートはややハードルが高い戦略かもしれませんが、信用取引の仕組みやリスク管理をしっかりと学び、少額から実践することで、より効率的な投資成果を目指すことが可能となるでしょう。

ただし実践に当たっては、様々なリスクを考慮する必要があります。ご自身の資産状況を踏まえつつ、リスク管理を徹底し、無理な投資を行わないよう十分にご注意ください。

最短10分で申込み完了!
無料口座開設はこちら

ページの先頭へ戻る