業績が良くても株価が下がることがあるの?
これから投資を始めようとする方、投資を始めたばかりの方にとって、株価の急落はドキッとする出来事かもしれません。
企業の業績とリンクして株価が急落したということであれば少しは予想ができるかもしれませんが、株価の急落は業績不振のときばかりに起こるものではありません。
業績好調の企業でも株価が急落する可能性もあるのです。株価急落に慌てず対処するためには、株価が変動する仕組みを理解し、どのような心構えで投資すべきかを知っておくことが大切です。
株価は基本的に「需要と供給」で決まります。「買いたい」と思う投資家が増えれば需要が高まるため株価は上がります。一方、「売りたい」と思う投資家が増えれば需要が減るため株価は下がります。
株価急落の理由にはさまざまなものがありますが、主に次の3つが挙げられます。
ネガティブなニュース
ネガティブなニュースは、株価急落の理由として一番わかりやすいものです。企業の不祥事や業績の下方修正など、投資家が予想できないネガティブなニュースが発表された場合に、株価急落が生じる場合があります。
外部環境
企業業績に影響を与える外部環境に変化が生じたとき、株価が急落する場合があります。外部環境とは金利上昇、景気後退の懸念、戦争などの地政学上のリスク、パンデミックや災害など、企業個別の問題ではないものの、企業業績に影響を与える可能性が高いと判断される状況が生じると、株価が急落する場合があります。
市場心理の暴走
前述のネガティブなニュースや外部環境はどちらかといえば、マイナスの要因が株価に影響を及ぼしています。しかし、プラスの要因が株価下落につながることもあります。そこに影響するのは投資家の期待や不安といった「市場心理」です。しかし、投資家の期待や不安は、必ずしも正しいものではありません。いわば、プラスの要因に対する投資家の思い込みや暴走が株価の急落につながってしまう可能性もあり得ます。
業績が良くても株価が下がるのはなぜ?
投資家の思い込みや暴走が株価の急落につながる要因は、市場の期待と現実の間にできるギャップです。
投資家は、企業の発表や外部のニュース、市場全体の雰囲気などから、その企業の成長に期待して投資を行います。
しかし、その期待は必ずしも正しいとは限らず、思い込みである場合もあります。仮に根拠があったとしても期待が過剰となれば、現実との間にギャップが生じてしまいます。ふとしたきっかけによって、その膨らんでしまった期待が崩れると、「パニック売り」が引き起こされることがあります。
客観的な事実ではなく、市場心理、つまり投資家の心理状態が株価に大きく影響を与えることもあるのです。
期待と現実の間にギャップが生じるケースとして、以下のような投資家の心理があります。
期待を上回らないのではないかという不安
多くの場合、株価は将来の期待を先取りして動いています。ある企業が素晴らしい業績を出すのではないかと予想する動きが広がれば、株価は上昇し始めます。これを「(期待の)織り込み済み」の状況と呼びます。
しかし、業績好調であったとしても、業績発表の内容が「市場の予想通り」、あるいは「市場の予想以下」だった場合、「これ以上、業績はあがらないのではないか」、「株価があがる材料が出尽くしたのではないか」と判断する投資家がでてきます。その動きが広がってしまうと、客観的事実をよそに売りが多くなり、結果的に株価急落につながってしまいます。
期待を裏切られたという失望
「織り込み済み」の期待が特に大きいのが「グロース株」です。
グロース株とは、現時点では利益が少なくても、将来的に大きな収益を生み出すことが期待されている企業の株をいいます。将来の成長期待が大きいため、株価も客観的事実とは関係なく高めになっていることが多いでしょう。
投資家からの期待が高いとき、業績発表や今後の見通しが市場の予想を下回った場合、客観的に見れば業績の成長率が高くても失望感が広がってしまいます。その失望感から客観的な事実とは別に売りが多くなり、結果的に株価急落につながる場合もあります。
グロース株は、投資家の期待が高い分、少しでもその期待が崩れてしまうと、株価が大きく下落するリスクを常に抱えているのです。
<業績好調にもかかわらず株価が急落した事例>

※画像は筆者が作成
投資家が決算発表で確認するポイント
パニック売りに陥らないために、投資家として決算発表時には、以下のポイントを確認し、自分なりの考えを整理しておきましょう。
「利益が出たか」だけでなく、企業の成長力を見極める
決算発表資料から、「売上高」、「利益率」、「キャッシュフロー」、「今後の見通し」を確認して、利益が出たか否かではなく、今後の成長性を見極めます。
<決算発表資料で確認したい項目>

※画像は筆者が作成
アナリストの市場予想を確認する
証券会社のウェブサイトや経済ニュースサイトなどで、アナリストの市場予想を確認します。
アナリストの市場予想は、あくまでも目安であり、絶対的なものではありません。しかし決算情報を確認したうえで、複数の情報源を参照し、自分なりの考えを整理するために有益な情報です。
株価が急落したときの対処方法
株価の急落は企業の業績不振のタイミングのみならず、業績が好調な場合にも生じる可能性があります。株を保有する企業の株価が急落してしまった場合に、どのような対処をすればよいのでしょうか。
まずは、冷静に株価が急落した原因を探ってみましょう。
急落の要因には「一時的な問題」と「本質的な問題」に分けられます。冷静な判断を行うために、まず企業の基礎的な財務状況、事業の内容や業績に問題がないかを確認してみましょう。
本質的な問題があると判断した場合には、損失を確定させて次の機会に備える必要もあります(損切り)。
また、一時的な問題であると判断したときには株を保有し続ける(保有継続)ほか、追加購入して株の平均取得単価を下げる(ナンピン買い)選択肢も考えられます。
ただし、ナンピン買いにはさらなる下落リスクもあるため、慎重な判断が必要です。
株価が急落で慌てないために
株価が急落してから慌てるのではなく、日頃から株を保有する企業のニュースや発表に目を通すようにしておきましょう。また、決算発表時には資料に目を通し、市場の期待感とのギャップについて自分なりの考えを整理しておくとよいでしょう。その上で、市場の期待の高まりに対する不安や失望による一時的な問題なのか、業績不振や環境変化、ネガティブなニュースなどによる本質的な問題なのかを冷静に判断して、パニック売りにつながる感情的な行動は避けましょう。
また、分散投資をすることも、株を保有する企業の株価が急落した時に慌てない方法です。投資する企業が1つしかないと、その企業の株価が急落した際に資産全体が大きな影響を受けてしまいます。
分散投資をすることで、株価が急落した企業以外の投資先に大きな変動がなければ、資産全体の損失を抑えられます。そのため、感情的な判断を抑制でき、落ち着いて状況分析や対処法を考える気持ちの余裕が生まれるでしょう。
株価の急落は、どの企業にも起きうるものです。いざというときに感情的な行動に陥らず冷静な判断ができるように、情報収集、分散投資を行うほか、「損切りラインを決めておく」などのマイルールを作っておくことも有効です。
株価の急落に慌てず、市場心理、投資家心理に翻弄されないようにするためにも、日頃から学びを深めておきましょう。




