グロース株とバリュー株 投資の軍配は?
株式投資を始めたばかりの方にとって、「どんな銘柄を選べばよいか」は最大の関心事でしょう。
株式投資では、株を安く買って高く売ることで利益を得ることができますが、その成果を左右するのはどんな銘柄を選ぶかにかかっています。
そこで、「グロース株」と「バリュー株」という視点での銘柄の選び方を知っておきましょう。
グロース株とは
グロース(Growth)は「成長」を意味します。グロース株とは、将来的に高い成長が期待される企業の銘柄を指します。
今は利益が小さくても、多くの投資家から将来的には売上や利益が拡大するという期待が高まると資金が集まります。
たとえば、AI技術を使った新しいアプリを提供する企業や、再生可能エネルギーで急成長している企業など、未来に向けて市場を拡大している企業がこれにあたります。
過去の例で言えば、米国TeslaやNVIDIA、日本ではメルカリなどが、グロース株として注目されてきました。
バリュー株とは
バリュー(Value)は「価値」を意味します。バリュー株とは、企業の本来の価値に対して、現在の株価が割安とされている企業の銘柄を指します。
過去の業績や財務の堅実さ、資産価値などを重視して、「今が買い時」と判断される企業が多く、製造業、金融、商社、不動産、鉄鋼などの業種に多く見られます。
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低く、配当利回りが高い傾向にあり、市場で存在感が薄く見えることもあります。
しかし、業績の回復や経営改革などをきっかけに、株価が急騰するケースも少なくありません。
近年では、東京証券取引所が企業に対し「資本コストや株価を意識した経営」を要請したことで、日本株市場においてバリュー株が再注目されたことは記憶に新しいところです。
高リターンが期待できるグロース株のメリット・デメリット
グロース株の魅力は、「将来の大きな値上がりチャンスをつかめる」ことにあります。成長が続けば、株価が何倍にもなることもあり、大きなリターンを狙える可能性のある投資先として注目されます。まさに「テンバガー(10倍株)」の世界です。
しかし、注意すべきは「成長期待が過剰に織り込まれている」可能性がある点です。高PERで買われた銘柄は、期待する成長が少しでも下方修正されると、一気に失望売りが出て株価が急落するリスクがあります。
グロース株は将来の成長に価値がおかれるため、世界経済の先行き不透明感などで相場全体が慎重モードに変わる際には、株が売られる傾向があります。
2022年のMeta、Netflix、Amazon、Tesla、NVIDIAといった米国の代表的なグロース株の急落がその典型です。
<グロース株のメリット>
- 1. 株価の値上がりが大きくなりやすい
グロース株は、これからの成長を期待されて株価が上がることがあり、投資のタイミングによっては株価が2倍、3倍に上昇することもあります。 - 2. 未来の可能性に投資できる期待感がある
画期的な技術やサービスに期待して投資するのは、単なる資産運用を超えた楽しさがあります。 - 3. 長期でも短期でも効果がでる
成長が加速すれば短期間での利益確定も期待でき、じっくり持ち続けて10年後に大きな果実を得ることも可能です。
<グロース株のデメリット>
- 1. 配当金は少ない、あるいはゼロのことも
成長企業は利益を再投資に回すため、株主還元(配当)には消極的な場合があります。 - 2. 期待先行で株価が高すぎることも
事業がブルーオーシャンで注目されると、期待が先行して株価が実態以上に上昇することがあります。しかし、業績が期待ほど伸びなかった場合には、株価が急落するリスクがあります。 - 3. 値動きの大きさが初心者には不安材料になる
高成長への期待が大きいため、わずかなネガティブ材料にも敏感に反応し、株価が大きく乱高下するリスクがあります。
地味に見えて堅実なバリュー株のメリット・デメリット
バリュー株は、長期的に配当を受け取りながら、株価が本来の価値を取り戻すのをじっくり待つスタイルです。
劇的な値上がりは少ないかもしれませんが、下値が堅く(株価がある一定以上は下がりにくく)、比較的リスクを抑えた運用がしやすいという特徴があります。
特に日本市場では、いまだに眠れる資産(遊休不動産や保有株、十分に活かされていない資産)を多く抱える企業が存在しています。企業が資産活用を進め、ガバナンス改革に取り組むことで、本来の企業価値が見直される可能性があります。
実際に、PBRが1倍を下回る企業が構造改革に動いた結果、株価が大きく見直されるケースも出てきています。このような変化を早くとらえた投資家にとっては、予想以上のリターンを得られるチャンスとなるかもしれません。
<バリュー株のメリット>
- 1. 割安なので下落リスクが比較的小さい
「すでに安い」ため、大きく値下がりするリスクはグロース株より限定的と考えられます。 - 2. 配当金や株主優待が充実している
成熟企業が多く、株主に利益を還元する姿勢が強い傾向にあります。 - 3. 焦らずに長期保有することで、成果を享受できる
本来の価値が見直されて株価が戻ってきたときのリターンは、堅実ながらも投資家としては嬉しく感じます。
<バリュー株のデメリット>
- 1. 株価の値上がりには時間がかかることも
安定はしていますが、株価が飛躍的に伸びることは少なめです。 - 2. 割安といって必ず株価が上がるとは限らない
業界全体が縮小傾向だったり、市場に忘れられていたりすると、いつまで経っても注目されないこともあります。 - 3. 配当や優待がなくなるリスクも
業績が悪化または経営方針が変わることで、期待していた配当や優待がなくなることもあります。
グロース株の選び方と注意点
高い成長が期待される企業を見つけるにはどのような点に注目すればよいでしょうか。
グロース株は、現在の利益水準よりも将来の成長性に注目が集まるため、市場からの人気度を示すPER(株価収益率)などの指標が高くなる傾向があります。
その人気が業績に裏付けされ「本当に成長が続くかどうか」を成長率・収益性・市場での競争力といった複数の観点から、冷静に見極める必要があります。
<成長のヒントになる指標>

※画像は筆者が作成
※あくまで銘柄選びの参考であり、完全性を担保するものではございません。ご投資の際はご自身の判断で行ってください。
「数字だけ」で判断しない
成長している企業には確かに魅力があります。
ですが、「数字が良い=将来も伸びる」とは限りません。 また、例えばAIやEV(電気自動車)、バイオなど将来性の高い分野では、まだ利益を出していない企業であっても、将来への期待から株価が上昇することがあります。
企業の実態を見極めるためには、以下の視点も欠かせません。
- 成長性(技術・競争環境):技術的優位性、競合他社の参入の可能性はどうか。
- 持続性(企業の強み):企業の強みが、一時的な流行に依存していないか。
- 安定性(収益構造):海外売上への過度な依存や、単一事業への集中といったリスク要因はないか。
- 透明性(会計・ガバナンス):会計処理の不透明さや粉飾決算の可能性はどうか。
過去には、こうした問題が発覚し、投資家に大きな影響を与えたケースもあります。
グロース化するバリュー株
かつては成熟・低成長・割安のバリュー株と見なされていた企業が、事業構造の転換や外部環境の追い風を受けて、グロース株に変貌するケースもあります。
その一例が老舗電線メーカーの企業です。
低PBRとして注目された後、構造改革や需要構造の変化で電線事業の成長期待などを背景に株価は上昇しグロース株の展開を見せています。生成AIによるデータセンター需要の拡大などにより、EV向けワイヤーハーネスやデータセンター向け光ファイバー事業が急成長した結果です。今後の先行きにも期待が寄せられています。
外国人投資家からの注目も高まり、2023年末から2025年にかけて1年半で株価は10倍超になりました。
<構造改革と成長戦略によりグロース株へ>(老舗電線メーカーの例)

※画像は筆者作成
グロース株とバリュー株は、それぞれ異なる特性を持ちます。景気の拡大局面ではグロース株が成長力を発揮しやすく、一方で金利上昇局面や景気減速期にはバリュー株が相対的に安定した収益を示すことが多くあります。
また、投資家心理の変化によっては、成長期待の高いグロース株が過大評価され、割安感のあるバリュー株が買われやすくなることもあります。
このように環境の変化に応じて、どちらかが優位に立つこともあれば、逆風にさらされることもあります。したがって、相場の波に柔軟に対応するためにも、双方の特性を理解し、自分なりの投資スタンスを築いていくことが、長期的な成果への第一歩となるでしょう。




