再生可能エネルギーで太陽光や風力発電に押され、忘れられたかのような存在となっていた地熱発電がにわかに注目を集めつつあります。
政府が先に公表したエネルギー政策の方向性を決める次期(第7次)エネルギー計画で地熱のウエイトが増加していることや、洋上風力発電計画が資材費の高騰などで苦戦していることで見直されている面がありそうです。
また、石破総理が地方創生で地熱発電に関心を持っている点も後押し要因になっているようです。
改めて地熱発電とは、地熱のエネルギーで発電する仕組みです。
湧き出る温泉を利用して発電するイメージになりがちですが、大規模な地熱発電では、地下1,500~3,000メートル程度の地下深くにある、150℃を超える高温・高圧の蒸気・熱水を活用します。
マグマの熱で温められた、高温高圧の蒸気・熱水が貯まっている地下構造を「地熱貯留層」といいます。
この地下貯留層まで井戸(生産井)を掘って、蒸気・熱水を取り出し、その力を利用してタービンを回して発電します。
これが地熱発電です。
このサイクルを繰り返すことで、持続的に発電が可能な再生可能エネルギーとなります。
取り出したあとの熱水は還元井を通じて地下に戻されます。
または、農業ハウスなどで使うことも可能です。
CO2がほぼゼロであるうえ、燃料費もかかりません。
太陽光や風力発電が天候によって発電量が左右されますが、地熱発電は安定的に発電できるため、「ベースロード電源」(コストが安く、昼夜を問わず安定的に発電できる電力源)としても期待されているのです。
火山大国である日本の地熱発電のポテンシャルが高いといわれています。
資源エネルギー庁によると、日本の地熱資源量は2347万kW(キロワット)で、世界首位の米国3,000万kW、2位のインドネシア2,800kWに次ぐ3位を誇ります。
一方、日本の地熱発電の設備容量は世界10位(2020年)にとどまっています。
その要因としては(1)生産井の掘削成功率が低く、コストがかかる(2)開発のリードタイムが長く、これもコストアップ要因(3)立地地区が国立公園や温泉景勝地と重なることが多く、自治体や地元関係者との調整が必要~などが挙げられます。
経済産業省は先に有識者会議(総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会)を開催し、今後のエネルギー政策の方向性を決める次期(第7次)エネルギー計画の原案を公表しました。
これによると、2040年度見通しで地熱発電は1~2%程度とのことです。
絶対値は低いものの、現状の0.3%程度、6次計画での2030年度1%から着実増となっています。
技術も進化しています。
例えばより効率的に熱を取り出すことができる「クローズドループと呼ばれる技術があります。
地上と地下数千メートルをつなぐ網目状のループを設置し、内部に水を循環させることで、地下の蒸気・熱水が十分に得られない地域でも効率的に発電できるそうです。
温泉源と重複せずに発電が可能で、地域の同意も得られやすいとのことです。
カナダの地熱技術開発企業であるエバー・テクノロジーズ社が開発し、既に一部実用化されています。
熱源があれば開発可能で、開発期間の大幅な短縮も可能になるもようです。
関連銘柄をピックアップ。
地熱タービンを累計で84台、3,469MWと世界トップクラスの受注実績。
海外で実績が多い。
2000年以降はシェアトップ。
一般的なフラッシュ方式と、低沸点触媒の蒸気でタービンを回すバイナリー式の両方を手掛けている。
会社側資料によると、火力の代替として算出した場合、年間24.4万トンのCO2削減に貢献しているという。
プラント全体の設計・製作・建設も手掛ける。

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日本で最初の地熱発電設備を納入。
送電の系統連系計画や各種届出申請手続きでも顧客を支援。
メキシコなど海外プロジェクトで実績。
2024年に米地熱発電スタートアップのファーボ・エナジー社に少額出資。
同社はシェール開発の掘削技術を応用し、従来は開発できなかった地域で地熱発電ができるという。

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2022年10月に、EGS(強化型地熱発電システム)で使用が可能な熱安全性に優れる耐食合金および密閉技術開発が日本財団の助成プロブラムに採択。
大深度層での地熱発電を実現する技術開発を推進している。
シェブロン向けに専用鋼管部品を開発との報道も。

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東洋エンジニアリング(6330) 東洋エンジニアリング(6330)
2023年9月にインドネシアにおける地熱の包括利用に関する覚書を締結。
現地のジオ・ディパ・エナジー社と、クローズドループ技術を始め、地熱熱水に含まれるリチウムなどの有価鉱物回収や、地熱発電からのグリーン水素製造などで共同研究を実施する。

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2022年10月にカナダの地熱技術開発企業エバー・テクノロジーズ社への出資を発表。
地熱事業に関する知見の獲得や、エバー社が取り組むプロジェクトへの出資参加機会の獲得を模索。
効率的に地熱発電ができる「クローズドループ」技術の国内展開を検討。

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2023年12月にエバー・テクノロジーズに出資。
同社が開発した石油・ガス井掘削技術などの技術を組み合わせた、地球環境にやさしい地熱エネルギー技術である「エバー・ループ」を活用。
鹿島はこの技術を活用し、柔軟な需給調整が可能なベースロード電源の開発を目指す。

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