量子コンピュータが改めて注目されています。
従来のコンピュータでは処理が困難だった複雑な問題を短時間で解決できることで、新薬の開発や、物流の最適化、暗号の解読などに期待されています。
実用化へのハードルが高いことが課題でしたが、ここに来て産業界で実用化への進展が見られ、今後の展開が期待されるようになっています。
量子コンピュータとは、物質を構成する原子や電子などの「量子」の持つ性質を利用して情報処理を行うコンピュータのことです。
一般的なコンピュータのビットは「0」か「1」の値で認識しますが、量子ビットは「0」でもあり「1」でもあるという認識(重ね合わせ状態)で、計算量が飛躍的に増加します。
現在1チップに100量子ビット搭載が先端とされますが、これは2の100乗の計算ができるということを意味するそうです。
一方、実用化に向けての課題は、量子ビットは壊れやすく、計算に使うとエラーが起きてしまうことです。
計算が迅速になる分、一つのエラーが大きな問題となります。
正確さを得るために必要なのがエラー訂正です。
具体的には、計算に使う量子ビットに隣接して設置する補助役の量子ビットを用いて、エラーの有無をチェックして見つけます。
解決には技術的なハードルが高いとみられていたましたが、これを乗り越えつつあるようです。
米アルファベット(GOOGL)アルファベット(GOOGL)傘下のグーグルやアマゾン・ドット・コム(AMZN)アマゾン・ドット・コム(AMZN)はいずれも先ごろ、計算エラーを訂正する新型チップを開発しました。
グーグルは2024年12月に新型チップ「ウィロウ」を開発し、実機に搭載したと報じられています。
従来のスーパーコンピュータで膨大な時間(10の25乗年)を要した計算をわずか5分以内で実行したそうです。
また、量子ビットの数を増やしてもエラー率を半減できたということです。
アマゾンが開発した専用チップ「オセロット」の試作品は、エラー訂正のコストを最大9割削減する可能性があるとされます。
マイクロソフトやIBMも対応するチップを開発しています。
今年3月に米テキサス州で開催されたイベント「SXSW」の講演に登壇したIBMのクシュナCEO(最高経営責任者)は、2030年ごろの実用化に向け技術改良が進んでいるとの見解を示しました。
マイクロソフト(MSFT)マイクロソフト(MSFT)も数年内に実用的な量子コンピュータの実現を予想しており、2月には高性能な新型プロセッサを発表しています。
量子コンピュータを巡っては、エヌビディア(NVDA)エヌビディア(NVDA)のファンCEOが年初のイベントで早期の実用化に懐疑的な見方を示し、関連銘柄の株価が一時急落した経緯があります。
計算エラーを克服できれば、実用化が近いことが徐々に明らかになりつつあります。
大手調査機関によれば世界の量子コンピュータの市場規模は2023年の9億米ドルが、2032年までに90憶米ドル(約1兆3,500億円)に達するとみています。
年平均成長率は29.5%で、急速な拡大となる見通しです。
高性能半導体や生成AI(人工知能)との融合が進めば、画期的な技術開発なども進むことが期待されます。
関連銘柄をピックアップ。
クオンタム・コンピューティング QUBT クオンタム・コンピューティング QUBT
統合フォトニクス企業で、廉価版の量子マシンを手掛けている。量子コンピュータの提供に加えて、量子周波数変換器、振動計などにも展開している。
同社製品は常温で動作し、低消費電力であることに強みがある。

週足表示、2025年4月14日まで
価格はNYSEBQT参照
リゲッティ・コンピューティング RGTI リゲッティ・コンピューティング RGTI
量子コンピュータと、量子コンピュータシステム向けの超電導プロセッサの自社開発を手掛けている。
量子チップの設計・製造のほか、傘下のクラウド企業を通じて量子コンピューティングサービスも提供。
顧客には大手クラウド企業のほか、米政府機関も名を連ねる。

週足表示、2025年4月14日まで
価格はNYSEBQT参照
イオントラップ技術を基盤とした量子コンピュータの開発を推進している。
AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やマイクロソフト「アズール」、グーグルクラウドなどのプラットフォーム上で提供されている。
自社で独自のクラウドサービスも展開している。

週足表示、2025年4月14日まで
価格はNYSEBQT参照
アーキット・クアンタム ARQQ アーキット・クアンタム ARQQ
英国を拠点とするサイバーセキュリティ企業。
量子暗号化サービスを提供している。
主力製品はネットワークデバイス間の通信リンクを量子コンピュータの攻撃から守る「クアンタム・クラウド」プラットフォーム。

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ハネウェル・インターナショナル HON ハネウェル・インターナショナル HON
米国の多国籍企業で、航空機部品や関連サービス、商用などのセキュリティ、センサーなど幅広い事業を手掛けている。
量子コンピュータ分野にも積極的。
M&Aで単独型量子コンピューティング企業を設立し、サイバーセキュリティの強化にも取り組んでいる。

週足表示、2025年4月14日まで
価格はNYSEBQT参照