執筆者:カブヨム編集部
株式投資によって得られる利益として多くの人が最初に思い浮かべるのは、株価の上昇から得られる値上がり益や、企業から支払われる配当金、そして株主に提供される株主優待などです。しかし、実際にはこれらだけではなく、証券会社が提供している「貸株」というサービスもあります。
本記事では、貸株の基本的な仕組みから、メリットとデメリットについてわかりやすく解説していきます。
貸株とは
貸株とは、保有株式を、証券会社を通じて機関投資家など第三者に一時的に貸し出し、その対価として貸株料(金利)を受け取れるサービスのことです。銀行預金に近いイメージで、銀行にお金を預けると利息が付くように、証券会社に株を貸すと金利を受け取れるという仕組みです。ただし、貸株には金利が受け取れるというメリットがある一方で、デメリットもあるため、利用する前にそれらをしっかり理解しておくことが大切です。
貸株のメリット・デメリット
●メリット
- 金利が受け取れる
先に述べたように、株式を証券会社に貸し出すことで、その対価として金利を受け取ることができます。一般的に、この金利は銀行の預金金利よりも高めに設定されていることが多く、長期間保有を考えている株式については、証券会社に貸し出すことで効率よく収益を生むことができます。いわば、「持っているだけの株式」を収益源に変えられるため、資産形成の観点でも有効な選択肢となるでしょう。 - 柔軟な使い方が可能
「証券会社に株を貸すと、好きなタイミングで売却できないのでは」と心配される方もいるかもしれません。しかし、貸株は柔軟な利用が可能なので、株価が下がりそうだと思った場合には、すぐに売り注文を出すことができ、注文が通れば自動的に貸株は解除されます。また、金利を受け取りたい期間だけ短期間で貸し出す、といった使い方もできます。
●デメリット
- 株主優待・配当金が受け取れない可能性がある
貸株を利用すると、株式の名義が証券会社に移ります。そのため、権利確定日に株を返却してもらわない限り、株主名簿に自分の名前が載らず、株主優待・配当金を受け取ることができません。
証券会社では、このような投資家の不利益を避けるために「自動優待取得サービス*」を用意しています。このサービスを利用することで、権利付最終日に自動的に貸株から返却され、貸株サービスを利用中でも、株主優待の権利を取得することができます。
ただし、「継続保有」や「長期保有」の条件が設けられている場合は注意が必要となります。企業によっては、権利確定日以外の日に株主名簿を確定させるケースがあり、この場合、貸株返却サービスを利用して権利確定日に貸株を返却してもらったとしても、株主名簿に名前が載らず、保有期間に応じた株主優待の対象とならない可能性があります。
株主優待内容は発行会社によって異なるため、事前に確認しておくのが良いでしょう。※三菱UFJ eスマート証券におけるサービス名称。 - 配当金は雑所得扱いになる
貸株中は、配当金を発行会社から直接受け取ることができません。代わりに、源泉徴収後の「配当金相当額」が証券会社から支払われます。ただし、この配当金相当額は雑所得扱いとなり、配当控除や株式等の譲渡所得との損益通算はできません。一方で、自動優待取得サービスの設定をしておけば、株主優待と配当の権利確定日が同じ場合は、通常通り企業から配当金を受け取ることができます。 - 投資家保護基金の補償対象外となる
貸株を利用すると、株主名簿上の名義が証券会社に移ります。そのため、証券会社が自社の資産と顧客の資産を分けて管理する「分別管理」の対象外となり、投資家保護基金の補償対象になりません。万が一、貸し出し先の証券会社が倒産した場合は、貸し出した株式は戻ってこない点に注意が必要です。貸株を利用する際は、このリスクを十分に理解しておきましょう。 - NISA口座で購入した株は貸株の対象外となる
貸株を利用すると、株主名簿上の名義が証券会社に移るため、名義変更が認められていないNISA口座では貸株は利用できません。貸株の対象は、課税口座(特定口座・一般口座)で保有している株式に限られます。また、貸株を利用できるのは原則として単元株(100株)単位となります。
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貸株の上手な活用方法
- 信用取引と組み合わせる
「信用買い」「信用売り」などの信用取引には、担保となる「委託保証金」が必要です。一般的には現金を委託保証金としますが、保有する現物株式を「代用有価証券」として担保に差し入れることもできます。この代用有価証券に差し入れた株式を、さらに貸株として利用することができます。
ただし、対応可否は証券会社によって異なるため、利用前に確認が必要です。 - 一部だけ貸株を利用する
デメリットの説明で述べたように、長期保有が条件となっている株主優待もあります。こうした株主優待は内容が充実しているものも多いため、貸株を利用することで保有期間が途切れてしまい、優待対象外になるのは避けたいところです。
そこで、保有株式のうち長期優待の条件分は保有を継続し、残りを貸株として利用することで金利を得るやり方がおすすめです。これで、長期保有の条件を満たしながら株主優待を受け取ることができます。
まとめ
貸株は、保有している株式から収益を得る方法として有効な手段のうちの一つです。一方で、メリットだけでなくデメリットなど、押さえるべきポイントも多くあるため、始める前には注意が必要です。 貸株の仕組みをきちんと理解して計画的に利用すれば、資産形成の効率を高められるでしょう。





