NISAで迷わない!――分配金の仕組みと再投資型・受取型の選び方 NISAで迷わない!――分配金の仕組みと再投資型・受取型の選び方

NISAで迷わない!――分配金の仕組みと再投資型・受取型の選び方

分配金とは?――NISAで積立投資を始める前にチェック!

NISAを始めるにあたり「分配金」についても知っておきましょう。
分配金とは、投資信託やETF(上場投資信託)などを運用して得た利益の一部を、投資家に支払うものです。
積立投資だけでなく、成長投資枠や課税口座で投資信託を購入した場合も同様に支払われます。

●「配当金」と「分配金」の違い
配当金は、株式投資において企業が得た利益の一部を、株主に還元する形で支払われるものです。配当の有無や金額は、企業の業績や経営方針などによって決まり、年1〜2回支払う企業が一般的です。
一方、分配金は、投資信託の収益の一部または、元本から支払われるものです。投資信託ごとに支払いの頻度(毎月、年1回など)や方針が異なり、目論見書やファンド詳細画面などで確認することができます。

●「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」がある
普通分配金は、運用によって得られた利子や配当、譲渡益などが原資となる分配金で、利益となるため課税対象です。それに対して、特別分配金は、運用収益が不足している場合に投資元本を取り崩して支払われるもので、元本の払戻しとなるため非課税です。

図① 普通分配金と特別分配金の違い


特別分配金_普通分配金

※画像は筆者が作成

分配金の再投資型・受取型の違いをチェック!

投資信託には、分配金が「ある」ものと「ない」ものがあり、分配金がある投資信託では、分配金を受け取らずに投資の元本とあわせて再度投資に回す「再投資型(累投型)」か、分配金を手元に受け取る「受取型(一般型)」かを選ぶことができます。
この選択は、資産形成をする上で大切なポイントになります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを確認しておきましょう。

① 再投資型(累投型)とは?

受け取るはずの分配金を自動的に再投資する仕組みです。例えば、1万円の分配金が発生したら、その1万円で買増しをするため、再投資された分、資産が増えます。

●再投資型のメリット
運用で得られた利益を組み入れてさらに運用に回すことで、元本が増え、利益が利益を生む複利の効果が得られます。


複利効果の例:100万円を年利5%で運用した場合、10年後の資産の比較

  • 単利の場合…毎年5万円の利益➡10年後の資産は、利益50万円を加えた150万円
  • 複利の場合…1年目の利益5万円を再投資し、翌年は105万円が5%で運用され、毎年元本が増えていく➡10年後の資産は、約162.9万円

また、自動的に再投資されるので、再購入の手間がかからない、多くの場合は購入手数料がかからない点もメリットといえます。

●再投資型のデメリット
現金として分配金を受け取れないので、資金を使うことはできません。
また、自動的に投資が実行されるので、価値が下がり続けている商品であっても追加で投資を続けてしまう、必ずしも安い時に買えるとは限らないなど、「買い時」をコントロールすることはできません。

●再投資型に向いている人

  • 長期で資産形成をしたい人
    分配金をそのまま再投資に回すことで、手間をかけずに複利の効果を活かしながら資産形成ができるので、老後資金などを長期で準備したい場合に適しています。
  • 当面お金を引き出す必要がない人
    収入が安定していて、投資資金にも余裕があるなど、分配金を必要としない人は再投資型を選ぶとよいでしょう。

② 受取型(一般型)とは?

受け取った分配金は生活費等に充てる、貯めておくなど、自由に使えます。

●受取型のメリット
生活費や趣味の費用など、使いたいタイミングで受け取った分配金を自由に活用できます。
また、たとえ少額でも定期的に現金収入が得られ、投資の実感を得ながら、資産運用ができます。相場が不安定な時期でも、分配金という目に見える収益があることで、精神的な安心感につながります。

●受取型のデメリット
再投資した場合のような複利効果はありません。
特別分配金が支払われるものは、元本を取り崩してしまうリスクもあります。

●受取型に向いている人

  • 生活費の補填や副収入を重視したい人
    分配金を生活費のプラスαとして活用することで、生活にゆとりを持たせることができます。
  • 運用よりも現金収入を優先したい人
    将来のための資金を運用しつつ、分配金を旅行や趣味代などに使うことで、将来と今使うお金の両方の充実を得たい人は、受取型が向いているといえるでしょう。

図表②再投資型と受取型の比較まとめ表


図表②再投資型と受取型の比較まとめ表

※画像は筆者が作成

NISAでのおすすめは「再投資型」?

NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得られる利益が非課税になる仕組みです。
この「非課税」というメリットを活かすには「再投資型」が有利といわれています。
分配金も非課税扱いとなるため、税引き後ではなく受け取った金額そのままが再投資され、「増えたお金がさらにお金を生む」という複利の力が働き、資産が効率よく増えていくためです。
ただし、分配金の再投資も非課税枠を利用するため、非課税枠が残っていないような場合には、課税口座での投資となり、再投資分に課税されることがある点には注意が必要です。

NISA制度は、長期的な資産形成を支援するために設計されているため、分配金を受け取らずに増やす再投資型は、長期・積立・分散投資の考え方と非常に相性が良いといえます。

図表③ 再投資型(累投型)と受取型(一般型)の資産推移比較グラフ
元本100万円を年5%で20年間NISAで運用した場合のシミュレーション


図表③ 再投資型(累投型)と受取型(一般型)の資産推移比較グラフ
		元本100万円を年5%で20年間NISAで運用した場合のシミュレーション

※画像は筆者が作成

あくまでもシミュレーションではありますが、分配金を受け取った場合と、再投資したことによる複利効果によって、20年後に65万円の差が出ていることがわかります。

購入前のチェックポイントは?

投資信託によっては、再投資型か受取型を選べないケースもあります。購入する際には、目論見書などで事前に確認しておきましょう。

<目論見書で確認しておきたい項目>


目論見書で確認しておきたい項目

※画像は筆者が作成

このほか、「ファンド詳細画面」でトータルリターン(分配金込みの成績)の確認もできますので、あわせてチェックしてみましょう。

再投資か受取型にするかは、購入時に決定する必要があります。どちらかを選ばないと購入に進めないため、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、どちらを選択するか決めた上で購入手続きを行なってください。

<購入時の選択画面例>

購入時の選択画面例

※画像は、三菱UFJ eスマート証券の投資信託購入手続き画面より

運用目的とライフプランに合わせて賢く選ぶ

投資信託の分配金の受取り方は、資産形成の方向性を左右する重要な要素です。再投資型と受取型には、それぞれに異なるメリットと注意点があります。長期的な資産形成を目指す方にとっては、複利効果を活かす再投資型が有利な選択肢となるでしょう。
一方、日々の生活のゆとりとして分配金を活用したい場合は、受取型も魅力的です。
「将来のためのお金なのか」もしくは「今使うお金なのか」、どちらを重視するかを明確にし、運用の目的やライフプラン、NISAの活用など、ご自身のプランに合った分配金の受取り方を選ぶことで、納得感のある投資が実現するでしょう。
分配金の仕組みを正しく理解して、上手に活用していきましょう。

秋山友美

秋山友美


湘南生まれ、湘南育ち
学習院大学経済学部卒業後、総合量販店・学習塾に勤務しサービスの精神を学ぶ。
2002年からコーチとして活動を開始。
経営者・会社員・投資家・FP・主婦・学生などのパーソナルコーチとして数多くの目標達成をサポートする。
2005年よりFPとしての活動を本格的に開始する。湘南を拠点にFP相談・家計診断・パーソナルコーチを行い、ライフプラン・住宅取得・資産運用などの講師としても活動をする。
趣味:サーフィン、スノーボード、南国旅行、喫茶店めぐり
保有資格:CFP®(日本FP協会認定)
(財)生涯学習開発財団認定コーチ
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
・J-FLEC金融経済教育推進機構 認定アドバイザー(令和6年認定)
・日本学生支援機構認定スカラシップ・アドバイザー(平成29年認定)

最短10分で申込み完了!
無料口座開設はこちら

ページの先頭へ戻る