PERから読み取れるもの
株式投資で株価の値上がり益を得るには、できるだけ安い株価で購入したいと考えるでしょう。そこで、今の株価が買い時なのかどうか株価の水準を図る方法を探ってみましょう。
その方法の一つがPER(株価収益率/Price Earnings Ratio)です。
株価がその企業の1株当たり当期純利益(EPS:Earnings Per Share)に対してどれくらい買われているかを示す指標です。
つまり、企業の株価がその企業の利益に見合った水準かを判断します。数値が高ければ割高、低ければ割安と解釈されています。
具体的には、以下のように計算されます。
PER(株価収益率)倍 =株価÷1株当たり当期純利益(EPS)
ただし、すべての企業に共通して、何倍以上なら割高、何倍以下なら割安という一定の基準値はありません。
そのため、同じ業種の平均や市場全体の平均と比較する、または、同企業の過去3年間の平均値と比べて、現在は割安か割高かを評価します。
なお、企業の将来を期待して、株式がたくさん買われていれば高く、買われていなければ低い数値を示すため、PERは人気度を示すともいえます。
成長期待の高い企業はPERが高いことが多く、将来的に大きな発展が見込まれる企業はPERが高くても投資価値があると判断されます。一方で、成熟企業は一定の範囲内で安定したPERを示す傾向があります。
PERで株価の水準を知っておく
では、投資判断には、PERをどのように活用するとよいでしょうか。
具体的な企業のデータを用いて、1株当たり当期純利益と株価の関係を時系列で見てみましょう。
トヨタ自動車(7203)の2021年3月から2024年3月までのPERは安定した範囲に収まり、過去4年間(2021年3月期から2024年3月期)の平均PERは10.6倍です。
日経平均株価が4,451円という史上最大の下げ幅を記録し、3万1,458円をつけた2024年8月5日、同企業のPERは8.42倍になりました。
<計算方法>
2024年8月5日の同企業の終値2,232円、1株当たり当期純利益は2025年3月予想の264.95円で算出
2,232円÷264.95円=8.42倍
過去の水準と比較するとこの日(8月5日)の株価水準は割安と判断できます。
仮に業績に悪影響がおよび1株当たり純利益の予想が大幅に下方修正されると、割安という判断は変わってきます。
つまり、株価が割安か割高かの判断は、来期の1株当たり当期純利益が伸びるかどうかにかかっているということです。
<トヨタ自動車のPERの変化>
投資する前後や保有している間にもPERを継続して見ていくと、株価が短期間で急降下する場面では、PERが低くなり割安のサインを示すことがあります。急上昇の場合も然りです。
売買のタイミングを計る際に参考にすることができます。
なお、PERだけではなく、他の投資指標により企業の収益性、成長性、財務の健全性と合わせることで総合的な投資判断が可能になります。