米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社「バークシャー・ハサウェイ」が5月に、バフェット氏の居住地でもある米ネブラスカ州オマハで年次株主総会を開催しました。
今回は日本の商社株への投資などもあり、日本の投資家の関心も高かったことが特徴です。
総会では、日本企業への投資についての質問も出たと報じられています。
海外投資家が日本株を注目するきっかけにもなりました。
「オマハの賢人」ともいわれるバフェット氏は「わかりにくい企業には投資しない」、「バリュー株(割安株)を好む」などと言われてきました。
日本の5大商社(
三菱商事<8058>、
三井物産<8031>、
伊藤忠<8001>、
住友商事<8053>、
丸紅<8002>
)への投資が初めて明らかになったのは2020年8月。
当時は5%超の保有が明らかになりましたが、今年4月時点では7%台に引き上げたことを明らかにし、8月には8.5%以上になっています。
20年8月時点では配当利回りが高く、PBRが低いいわゆるバリュー株だった商社の株価は今年6月にかけて上昇を継続しています。
まさにバリュー株投資で成績を上げている格好に見えますが、長くバークシャーの動向を見てきた外資系金融機関のストラテジストは「バークシャーの投資方針は明確で、キャッシュフローの創出力のみといっても過言ではない」と指摘しています。
キャッシュフローとは、わかりやすく言えば現金の入り繰りで、創出力は現金を稼ぎ出す力。決算発表で注目される営業キャッシュフローは本業のビジネスでどれだけ現金を生み出したかの指標です。
確かにここ数年の大手商社は業績を拡大させるとともに、キャッシュフローも改善傾向にあります。
ただ、金融危機時に金融株を購入するなど、割安株の投資にも定評があることも事実。
キャッシュフローで選別した銘柄が、結果的にバリュー面でも魅力的に映っている可能性もありそうです。
こうしてみると、バフェット氏の投資手法が改めて注目されそうです。
そこで、今年3月末時点でのバークシャー・ハサウェイの保有株の多い銘柄をチェックします。
第1位 アップル APPL
世界最大のテクノロジー企業。時価総額3兆ドルと世界首位。
スティーブ・ジョブズ氏がパソコンで起業し、音楽プレーヤーiPodやスマートフォンiPhoneなどヒット商品を続々と打ち出し躍進。決済などにも展開。
毎年多額のキャッシュフローを生み出す。
直近で2,042万株を追加取得。今回の買い増しで、バークシャーの全ポートフォリオに占める保有割合は昨年末の39%から46%にまで上昇。旗艦銘柄となっている。
ビッグテックといわれるGAFAM(グーグル=アルファベット、アップル、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフト)の中で、仕事の中身がわかりやすい点が評価材料ともされる。
第2位 バンク・オブ・アメリカ BAC
米銀行で世界最大級。2009年にリーマンショック(金融危機)時で経営危機となったメリルリンチ(現BofA)を買収し、証券・投資銀行でも大手に。
3月のシリコンバレー銀行の経営破綻を背景とした金融不安が広がる中でバークシャーは世界最大の信託銀行であるバンク・オブ・ニューヨーク・メロンと米金融持ち株会社大手のUSバンコープを売却したと伝わっている。
こうした中で保有株比率を維持しているのは、BACへの信頼の高さを示しているといえそう。
第3位 アメリカン・エクスプレス AXP
クレジットカードの大手。アメリカン・エクスプレス・カードを発行。
世界各地に進出。決済システムにも展開。
歴史書によれば、バークシャーは同社株への投資を1964年に開始。
当時は詐欺事件に巻き込まれて経営存続の危機にあったが、大量購入し、現在まで保有し続けている。
割安株投資の典型例に。
第4位 コカ・コーラ KO
世界最大級の飲料メーカー。世界200以上の国・地域に展開。
「コカ・コーラ」のほか、「ファンタ」、「スプライト」など炭酸飲料に強み。
スポーツドリンクやコーヒー、オーガニック製品なども手がける。
バフェット氏は大のコカ・コーラ好きとして知られている。
第6位 オキシデンタル石油 OXY
独立系のエネルギー企業で、業界大手。米国を軸に中東、アフリカなどで石油・天然ガスを開発、生産。
バークシャーが筆頭株主。
シェブロンを含めエネルギー企業はキャッシュフローが高水準の傾向。
※参考・第6位日本の5大商社(合計で145億ドル、4%)
今後もバークシャーの投資動向に注目しておきたいところです。