米の主要企業の7~9月期決算が出揃いました。
特にGAFAM(グーグル<現アルファベット>(GOOGL)、アマゾン(AMZN)、フェイスズック<現メタ>(META)、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT))といわれる巨大ハイテク企業に注目が集まりましたが、結果はアップルが健闘したものの、その他の銘柄は決算発表を受けて株価が軟調に推移しています。
利益が市場の期待に届かなかったことが失望された格好です。
巨大ハイテク企業を取り上げるときにGAFA(ガーファ)、あるいはGAFAM(ガーファム)と呼ぶのは、いずれの企業もITサービスのプラットフォーム(サービスの基盤)を抑えていることで、圧倒的な競争優位性があることが要因です。
情報の検索にはグーグル、アップルはiPhoneやパソコンで基本的なソフト(OS)を持ち、情報交換にはフェイスブック(FB)に加入する必要があります。
買い物はアマゾンが圧倒的に便利です。
つまり、日常生活を送るために不可欠な基盤があるがゆえに、世界でも類をみないほどの高収益を誇ってきました。
一方、こうした利益独占ともいえる状況に世界各国が警戒し、欧米などは課税を増やすなどの措置に進むとみられています。
また、個人のパソコンなどで管理できるブロックチェーン(分散型台帳)やNFT(代替不可能なトークン)の登場により、プラットフォームを必要としない個別のビジネスネットワークが台頭してきました。
これらは仮想通貨(暗号資産)を皮切りに、金融や不動産、ゲームなどに領域を広げています。
GAFA(M)の時代は過ぎ去るとの声も出始めています。
ただ、アナリストの中には「ビックテック(巨大ハイテク企業)の力は揺るがない」とみる向きも少なくありません。
直近の利益鈍化が研究開発費の増加が要因だったり、一時的な景気悪化の影響とみられるものだったりと、コスト削減を進めれば23年は回復基調に向かう可能性もあります。
最近はこれらの企業でリストラの報道も目立っています。
ただ、実際に不振に陥っているような企業もあり、株式市場でも選別が進む可能性もありそうです。
そこで今回は、5社の7~9月期決算をチェックしてみます。
GAFAM決算概要
インターネットによる検索(Google)で世界首位。
付随した広告収入が主柱となっている。
7~9月期決算は売上高690億9,200万ドル(前年同期比6%増)、純利益139億1,000万ドル(同27%減)。
傘下のグーグルなどインターネット広告需要は堅調だったが、ユーチューブの売上高は同2%減。
これは一部広告主による支出削減が要因。
ローン(含む住宅)、暗号資産(仮想通貨)関連の広告が減少という。
ドル高が逆風で研究費の増加も要因とみられる。
クラウド事業の売上高は同38%増と順調。
スマートフォンiPhone、パソコンMacなどで著名なIT機器大手。
半導体も自前で開発。
7~9月期の売上高901億4,600万ドル(前年同期比8%増)、純利益207億2,100万ドル(同1%増)となった。
売上高の5割近くを占めるiPhoneは同10%増。
定期課金サービスの利用者が前四半期から1億5000万人超の9億人に増加したとのこと。
アップルは9月期が本決算。
会社側では今期の第1四半期(10~12月期)は7~9月期を下回るとの見方。
前年に好調だったMacの反動減、マクロ環境悪化でデジタル広告収入減が要因と。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェイスブック(FB)で世界を席巻。
広告収入で稼ぐ。
インスタグラムなどM&Aも。
メタバース(仮想空間)ビジネスに舵を切る。
7~9月売上高は277億1400万ドル(前年同期比4%減)、純利益は43億9500万ドル(同52%減)。
FBの利用者は9月末で前年比2%増の29億6000万人。
育成中のリアリティラボ(メタバース)関連売上高は同49%減の2億8500万ドル。
営業赤字は36億7200万ドル。
消費者向け端末、新製品投入で23年も同部門の投資は拡大することを示唆。
EC(電子商取引)の世界最大手企業。
幅広い品揃えに強み。
クラウドの「AWS」サービスが収益柱。
音声認識のアレクサなどにも展開。
7~9月期の売上高1271億100万ドル(前年同期比15%増)、営業利益25億2500万ドル(同48%減)だった。
各部門の売上高が鈍化傾向にあり、ドル高も損益悪化要因。
AWSの北米部門の営業損益は赤字に。
年末商戦を含む10~12月期の売上高予想は1400億~1480億ドルと市場予想1550億ドル程度を下回る。
ソフトウエア開発で世界最大手。
パソコン用OS(基本ソフト)「Windows」やオフィス向け「Office」が著名で高シェア。
ゲームコンテンツも手掛ける。
7~9月期の売上高501億2200万ドル(前年同期比11%増)、純利益175億5600万ドル(同14%減)。
けん引役である「企業向けクラウド」部門の売上高は同24%増、粗利益率73%と高水準を維持。
PC向けの減速やドル高が利益を圧迫し、前期にあった資産移転による税効果がなくなることも響く。