鈴木一之の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」2020年11月号(COOLな銘柄編) 鈴木一之の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」2020年11月号(COOLな銘柄編)

鈴木一之の「HOTな銘柄、COOLな銘柄」2020年11月号(COOLな銘柄編)

ここからは値下がりしている銘柄です。

株価下落の理由として、引き続きコロナウイルスの影響が色濃く出ていること、および不祥事に関わる銘柄がいつになく多いように感じられます。

コロナウイルスの影響はより厳しくなりつつあります。
旅行代理店のエイチ・アイ・エス(9603、第13位)、民泊向けシステムのandfactory(7035、第36位)など、旅行関連株は一貫して下落基調をたどりました。

エイチ・アイ・エス(9603)

政府による「GoToトラベル」キャンペーンのような業界を後押しする支援策は様々に講じられています。
9月は悪天候が続きましたが、10月に入って秋晴れの日も多くなり、東京発着分もキャンペーンに加えられるようになりました。

実際に観光地には人出も増えていて、コロナ感染が広がる前の水準まで戻した地域もあるほどです。
しかしそれに伴って新規の感染者数も増加しており、楽観は許されません。

結婚式場のワタベウエディング(4696、第9位)、アパレルのオンワードHD(8016、第11位)、同じくTSIHD(3608、第12位)、スポーツジムのルネサンス(2378、第39位)も軟調な値動きが続いています。

ワタベウエディング(4696)

上昇する銘柄が継続的に値上がりする一方で、下がり続ける銘柄は一貫して売られる、という「物色の二極化」は今も解消しておりません。

企業収益が思っていたほど芳しくない、あるいは期待されていたレベルに届かないという理由で値下がりする銘柄も目立ちました。

eBASE(3835、第4位)が代表例です。
食品トレーサビリティに関するシステムを食品スーパー向けに提供して収益を拡大させてきました。
コロナ禍の巣ごもり消費の恩恵でスーパー各社の売り上げが増えていることから、同社の高収益にも期待が寄せられました。

しかし10月30日に発表された第2四半期決算では、売上高が18.9億円(▲6.9%)、営業利益は3.7億円(▲22.2%)と予想外の減収減益となりました。
コロナ禍によって受注、納品、検収に遅れが生じたことがその理由です。

eBASE(3835)

同じように、映画コンテンツの松竹(9601、第32位)、雑貨のトランザクション(7818、第31位)、迷惑電話警告システムのトビラシステムズ(4441、第19位)、コンサルティングのプロレドパートナーズ(7034、第23位)、自動運転システムのヴィッツ(4440、第24位)、なども、良好な業績が期待されていたところへ、思わぬブレーキがかかったことから株価は下落した模様です。

松竹(9601)

このような業績重視の傾向は11月以降の相場でもも続くと見られます。
株価水準との兼ね合いで業績面への評価は今後もさらに強まるものと予想されます。

また10月は不祥事による株価下落も目に付くようになりました。

ネットワンシステムズ(7518、第1位)は10月末に決算発表の延期を再び発表して急落しました。
同社は今年1月に取引実体のない不正取引に関する疑いから内部調査を行い、過年度の決算修正を実施しました。

その際に提出した書類から不正取引はない、との結論が得られましたが、その際の報告書に関して再び疑義が指摘されたことから第2四半期の決算発表を延期すると明らかにしました。

いったんは否定された決算データに関する疑義が再び浮上したことで、株式市場では売り物が広がったことになります。

ネットワンシステムズ(7518)

同じように理研ビタミン(4526、第7位)も、中国の連結子会社が行った過年度の実体のないエビ取引に関して、監査法人より限定付き適正意見の監査報告書が送付されてきたことを明らかにしました。

理研ビタミン(4526)

ハイアス・アンド・カンパニー(6192、第6位)も同様です。
7月末に不正会計の疑いが指摘され、過年度の決算修正を行った上で9月末に経営陣の入れ替えと自主再生委員会を立ち上げました。
株価は月初に大きく下落しその後も軟調な推移をたどっています。

ハイアス・アンド・カンパニー(6192)

ESG投資を意識する流れが定着しており、「S=社会」の部分で信頼を損なうことは株式市場での厳しい評価に直結するようになっています。

株価の上昇には「新鮮な驚き」が欠かせません。
どんなに業績モメンタムの強い企業でも、どれほどの需要増加が予想されても、驚きに満ちた材料としての新鮮さがなくなると株価の動きは止まってしまいます。

コロナ危機が表面化してから半年が過ぎました。
「新しい日常」が本当の日常生活として定着しつつあります。
米国の大統領選挙も決着し、ここでも新しい秩序が創り出されます。
新たな変化を探して、2020年の残り2か月も株価は大きく変動してゆくように思えてなりません。

以上

図10月値下り率ランキング

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鈴木一之

鈴木一之

株式アナリスト

1961年生。1983年千葉大学卒、大和証券に入社。
1987年に株式トレーディング室に配属。
2000年よりインフォストックスドットコム、日本株チーフアナリスト
2007年より独立、現在に至る。
相場を景気循環論でとらえるシクリカル投資法を展開。

主な著書
「賢者に学ぶ 有望株の選び方」(2019年7月、日本経済新聞出版)
きっちりコツコツ株で稼ぐ 中期投資のすすめ」(2013年7月、日本経済新聞出版社)

主な出演番組
「東京マーケットワイド」(東京MXテレビ、水曜日、木曜日)
「マーケット・アナライズplus+」(BS12トゥエルビ、土曜13:00~13:45)
「マーケットプレス」(ラジオNIKKEI、月曜日)

公式HP
http://www.suzukikazuyuki.com/
Twitterアカウント
@suzukazu_tokyo

呼びかける時は「スズカズ」、「スズカズさん」と呼んでください。

当コラムは投資の参考となる情報提供を目的としており、特定の銘柄等の勧誘、売買の推奨、相場動向等の保証等をおこなうものではありません。
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