シャープレシオとは?
シャープレシオとは、1990年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者、ウィリアム・F・シャープ氏が考案した指標で、投資がリスクに対して効率よくリターンを得られているかを測ります。リスクを抑えながらより大きいリターンを得られているかを評価できます。
たとえば、同じリターンの商品があった場合に、どちらを選べばよいかの判断は難しいでしょう。しかし、そのリターンに対するリスクがどれほどであったのかを比べることができれば、商品を比較検討しやすくなります。シャープレシオを使えば、リターンとリスクの両面から商品比較をすることができます。
シャープレシオは、平均リターンから無リスク資産のリターンを引いた超過リターンを、リスク(標準偏差)で割ることで求められます。
<シャープレシオの計算式>

※図は筆者作成
ある投資のリターンの中で、リスクがゼロと仮定した資産(例えば普通預金)の金利を超えた部分(超過リターン)がリスクの何倍かを示した数字がシャープレシオです。ちなみに標準偏差とは、ある期間の価格変動の大きさの程度(ブレ幅)を表す数値で、リスクを意味します。シャープレシオが1を超えていればリスクに見合ったリターンを得ており“優秀”といえます。
例えばある3つの投資信託の直近5年間の超過リターンとリスクが下表のような結果だった場合を、見てみましょう。
<3つの異なるファンドのシャープレシオ(5年間)>

※図は筆者作成
AとBはともに12%のリターンでしたがAファンドの方がより小さいリスクで12%のリターンを得た結果になっています。またCファンドは17%のリターンがあったものの、シャープレシオはBファンドと同じ結果でした。効率性でみると、Aファンドが最も優秀だったことがわかります。
なお、これら数値は過去のデータであり将来の成績を保証するものではありません。
シャープレシオの活用方法
●投資信託を比較するときに活用
シャープレシオは投資信託やETFを選ぶときに大変役に立ちます。投資信託は難しい運用をプロに任せる商品ですので、商品は運用成績で選ぶのが基本です。その指標のひとつがシャープレシオです。例えば国内株式へ投資するファンドを比較する場合、リターンだけをみるとそのリスクはわかりません。シャープレシオもあわせて比較することで、効率のよい上手な運用をしているファンドかどうか客観的に比較することができます。
●ポートフォリオを比較できる
投資対象が異なる投資信託を組み合わせて投資を行うなど、そのポートフォリオ(資産の組合せ)の効率性を比較することにもシャープレシオは役立ちます。ポートフォリオのパフォーマンスは資産の組み合わせ方で大きく変わります。例えば、できるだけ低リスクで目標とするリターンを期待できるポートフォリオを探すときにシャープレシオが役立ちます。また単一の投資信託を比較するときと同様、見かけのリターンの高さに惑わされることなく効率的なポートフォリオを見極めることも可能です。
シャープレシオを用いたパフォーマンス比較
では、実際に以下5つのファンドのシャープレシオを比較してみましょう。同じ期間内の結果で比較しますが、短期の相場の良し悪しの影響を受けないよう、期間は5年以上が好ましいでしょう。
※ご注意事項※
- 本コラムは特定の銘柄に対する投資勧誘を意図するものではなく、あくまで銘柄選びの参考までに作成しています。適合性、有用性、正確性、完全性を担保するものではございませんので、あらかじめご了承ください。
- 2026年5月22日時点の内容です。
<5つのファンドの比較>

出所:三菱UFJeスマート証券取引サイトを参考に筆者作成(※リターンは信託報酬控除後)
A、B、Cは「コモディティ」という大きなカテゴリーでは投資対象が同じですが、その内容を確認すると、Aはエネルギー関連へ、BとCは金へ投資するファンドで、投資対象が異なります。直近5年では、A、B、Cともにリターンも高く、シャープレシオは数値が1を超えるすばらしい成績を出していますが、10年で見ると、リターンは下がりAはシャープレシオが1を切っています。金へ投資するB、Cは成績が似ているのは当然ですが、若干Bの方がよい成績といえます。
一方、投資対象を三菱グループ企業の株式に特化したD、日経平均採用銘柄でかつ高配当な株式に特化したEは、両者とも同じ国内株式へ投資するファンドです。Eは運用開始からまだ10年が経過していないので、5年のデータで比較をしてみると、Dの方が成績は良いといえます。
このように、同じ投資対象、同じ期間で比較すると、ファンドのパフォーマンスの違いがよくわかります。
シャープレシオの注意点
シャープレシオは便利な指標ですが、使い方を間違えないよう注意しましょう。
●同じ資産・カテゴリーで比較する
シャープレシオは同じ資産や同じカテゴリーで比較することが大切です。たとえば株式と債券、先進国と新興国では投資対象のリスクや市場の性質が異なるため、合理的かつ客観的な評価が得られなくなります。
●同じ時期・同じ期間で比較する
シャープレシオは同じ時期の同じ期間で比較します。その年によって市場環境が良かったり悪かったりするなど、時期や期間によって価格変動の違いが起こるため、それがシャープレシオに影響して正確な比較ができなくなります。
●シャープレシオだけを判断材料にしない
シャープレシオは運用成績の評価や比較には大変便利な指標です。ただし、シャープレシオだけに偏ると、目指していたリターンや自分が取ることができるリスクを無視した商品選びとなり、満足のいく結果にならない可能性もあります。自分の目指すリターン、リスク許容度、他の指標もあわせて活用することにより、より効果的な比較ができるでしょう。
シャープレシオと他の指標との違い
シャープレシオは値動き全体(リスクの総合)に対する運用の効率性を測る指標ですが、それとは別の切り口で評価をする指標があります。
<投資信託・ポートフォリオ運用で使う主な4つの指標>

※図は筆者作成
●ソルティノレシオ
シャープレシオはプラスもマイナスも含めたリスクに対する運用の効率性を測る指標であるのに対し、ソルティノレシオはマイナスのリスクのみに着目した指標です。同じシャープレシオであればソルティノレシオが高い方が値下がりリスクに対して効率的にリターンを上げていることを意味します。数値が1を超えていれば優秀といわれています。
●トレイナーレシオ
市場のリスクにどれくらい影響を受けるかを示した数値(ベータ値)を基準に市場リスクに対してどれだけ効率的に運用ができているかを測る指標です。分散投資をしても市場のリスクは完全に排除できないため、広く分散されたポートフォリオの評価に有効です。ベータ値が高いほど市場の影響を受けやすく、トレイナーレシオが高いほど、その市場のリスクに対して効率よく運用できているといえます。主に機関投資家や運用のプロが使う指標であり、個人投資家が日常的に目にする機会は多くありません。
●インフォメーションレシオ
例えば日経平均、TOPIXといったベンチマークを上回る運用を目指す、アクティブファンドの評価に利用される指標で、どれだけ効率的にベンチマークを上回る成績を出すことができたかを測ります。数値が0.5を超えると優秀なアクティブファンドであるといわれています。
まとめ
シャープレシオは、私たちが資産運用で多用する投資信託を評価する際に使える最も身近な評価指標です。将来の成績を保証するものではありませんが、優秀なファンドは将来も優秀であることが期待できます。
リターンランキングや人気ランキングに惑わされることなく、シャープレシオを積極的に活用して、自分に合った投資信託を主体的に選んでみましょう。





