日本はインフレ?インフレが生活に与える影響は?投資がインフレ対策に有効な理由をわかりやすく解説 日本はインフレ?インフレが生活に与える影響は?投資がインフレ対策に有効な理由をわかりやすく解説

日本はインフレ?インフレが生活に与える影響は?投資がインフレ対策に有効な理由をわかりやすく解説

インフレとは、物価が上がり続ける状態

「インフレ」とは「インフレーション」の略で、物価が持続的に上昇することです。主に、景気の過熱、賃金や原材料の価格高騰などによって起こります。

景気の過熱によって起こるインフレを「ディマンドプル・インフレ」といいます。景気が良くなると「商品やサービスの値段が多少高くても買いたい」という人が増え、それに応じて企業は値上げをします。その結果、企業の利益を押し上げ、賃金上昇につながって消費が活発になり、さまざまな企業にも好影響が波及する循環になります。

<ディマンドプル・インフレのイメージ>


※図は筆者作成

一方、賃金や原材料の価格高騰などによるインフレは、「コストプッシュ・インフレ」といいます。こちらは、商品を生産したりサービスを提供したりする側に起因するインフレです。人件費や原材料費が高騰したり、為替相場が円安になりエネルギーや原材料の輸入価格が上がったりすると、企業活動のコストが上昇します。企業がコストの上昇分を商品やサービスの価格に上乗せし、それが長く続くとインフレを引き起こします。

<コストプッシュ・インフレのイメージ>


※図は筆者作成

ほかに賃金アップや原材料の数量不足によってインフレになる場合や、世の中に出回るお金の量が増えてお金の価値が下がった結果、相対的に物価が高い状態になる場合もあります。

反対に、物価が持続的に下落する状態は「デフレーション」の略である「デフレ」と呼ばれます。デフレが起こる要因は、インフレが起こる要因の逆です。

このように、物価は、商品やサービスを購入する側(需要)と提供する側(供給)のバランスによって変動します。需要が多く供給が少なければ物価は上昇し、それが続くとインフレになります。反対に、需要が少なく供給が多ければ物価が下がり、その状態が持続するとデフレになります。

消費者物価指数の特徴

日本国内で物価を表す指標はさまざまありますが、代表的なものが消費者物価指数(CPI)や企業物価指数です。

CPIは小売価格の動きをとらえた指標で、全国の世帯が購入する約600品目の商品やサービスの価格変動について、基準年(約5年ごと、直近は2020年)を100とした指数で表されます。毎月、総務省が調査し、指数の前年同月比や前月比も公表されています。

CPIは、集計の範囲に応じて「生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)」、「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)」、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(新コアコアCPI)」などがあります。生鮮食品や原油などのエネルギーは価格変動が大きいため、物価に大きな影響を与えることが多く、これらを取り除いた指数も併用するのです。

時おり、「CPIは生活実感とのズレがある」と指摘されることがあります。その理由は、CPIが家計全体の平均的な消費を表すために個々の家計が実際に支払っている品目との隔たりがあることや、全体よりもよく購入する品目に目が向きがちであること、また、所得税・住民税や社会保険料等がCPIに含まれていないことなどが考えられます。

なお、物価の動向を見るには、企業間の取引価格である卸売価格の動向を示す「企業物価指数」も重要です。企業物価は、消費者の購入する商品やサービスの価格を示すCPIより先に動く傾向があります。

日米のインフレ率の推移

世界経済は、特に米国の物価の影響を受けています。米国にも物価関連指標は複数あり、最も注目されているのは米国労働省労働統計局が毎月発表する「米国CPI」です。

米国CPIは特に、米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度(FRB)の金融政策に強い影響を及ぼしています。米国の金融政策は世界の株式市場を刺激することが多いため、世界中の投資家が米国CPIの動向を注目しています。

日本は長らくデフレが定着しており、米国など諸外国の水準に比べて物価が低い時期が続きました。しかし近年は、それまでの認識を覆すほどの物価上昇が続いており、2023年以降は、日米のインフレ率は同水準で推移しています。

<日米の消費者物価指数変動率の推移>


※グラフは【日本】「消費者物価指数 総合 前年比 (%)」(総務省)、【米国】「消費者物価指数 前年比 (%)」(米労働省)のデータを基に筆者作成

インフレが私たちの生活に与える影響

日本がデフレからインフレに転じた当初は、背景に輸入価格の上昇があったと見られています。「コストプッシュ・インフレ」の説明の中で、為替相場も国内の物価に影響すると述べました。実質実効為替レートと消費者物価指数の推移を並べてみましょう。

※実質実効為替レート:貿易量に応じて複数の国の通貨の価値を計算し、物価変動を考慮して調整した値。高いほど輸入品を割安に購入できる。

<消費者物価指数(総合)と実質実効為替レートの推移>


※グラフは「消費者物価指数 総合」(総務省)、「実質実効為替レート指数」(日本銀行)のデータを基に筆者作成

実質実効為替レートの下落は、海外通貨に対して円の購買力が低下していることを意味します。円の下落が輸入物価を押し上げ、例えば私たちの生活に身近なところではガソリン代や電気・ガス、食料品の値上げとして現れます。

さらに企業がコスト上昇を販売価格に転嫁すると、外食や日用品、サービスなどの価格にも波及します。最近は人手不足よる人件費の上昇も重なり、生活必需品の価格上昇が家計を圧迫しています。

ただし、賃金が上昇し、家計の収入が増えるならば、物価上昇の痛みは和らぎます。次は消費者物価指数と賃金指数の推移を並べて、賃金の伸びが物価上昇に追いついているかを確認してみましょう。

<消費者物価指数(総合)と賃金指数の変動率の推移>


※グラフは「消費者物価指数 総合」(総務省)、「賃金指数 現金給与総額」(厚生労働省)のデータを基に筆者作成

物価上昇局面で現金給与総額(名目賃金)の伸びの方が低い場合、実質賃金は低下しています。2022年以降、消費者物価指数が上昇基調を保つのに対し、現金給与総額の伸びは波が大きく、総じて低い水準にとどまっています。これは、賃上げが行われても物価上昇に相殺され、実質的な購買力が伸びにくいことを示しています。家計にとっては「給料は増えても生活は楽にならない」という状況といえます。

今からできるインフレ対策

こうした環境での家計の防衛策は、「お金にも働いてもらう」という発想です。銀行預金の金利がインフレ率より低い状態が続けば、現金の価値は実質的に目減りします。少しずつでも投資を取り入れると、物価上昇に負けない資産形成を目指すことができます。

「長期・分散・積立」を意識すれば、日々の値動きに振り回されず、時間を味方につける運用が可能です。

長期・分散・積立投資を実践している代表的な例が、公的年金の年金積立金です。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が管理・運用している公的年金の年金積立金は、長期的な運用目標を「賃金上昇率+1.9%」と定めています。運用資産は2025年6月末時点で「国内債券」「外国債券」「国内株式」「外国株式」にそれぞれ4分の1ずつ振り分けており、2001年度~2025年6月末までの運用実績は、年率+4.33%となっています。

個人の資産形成においても、これをひとつの目安にしてはいかがでしょうか。資産価値の増減が受け入れられないという方もいらっしゃるかもしれませんが、 「資産と物価が同程度の範囲内で価値の上下動をしている」という状態を保ちながら資産を保有するという発想を持つことも大切です。これは長期的に「お金の価値を守る」ことでもあるのです。

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石原 敬子

石原 敬子

大学卒業後、証券会社に営業職で約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使し、対話を重視し行動を起こさせるコミュニケーションを心がけている。「資産形成はライフプランありき」がモットーで、ご本人が納得してお金を使うことをゴールに据えるスタンス。主な業務は個人相談、金融関連の執筆、セミナー等の講師、マネー座談会やワークショップのコーディネイター。

<資格> CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、終活アドバイザー®

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