GDP・GNPとはどのような指標? GDP・GNPとはどのような指標?

GDP・GNPとはどのような指標?

GDP(国内総生産)とは (GDPの求め方)

GDP(Gross Domestic Product)は「国内総生産」のことで、国の経済活動の規模を示す重要な指標です。一定期間内に国内で生産された商品やサービスの付加価値の総額を指し、経済成長の度合いを測る際の基準となります。

付加価値とは、商品やサービスの販売価格から原材料費や流通費用などのコストを引いたもので、簡単にいえば「儲け」の総額です。

例えば、企業が商品やサービスを提供して得た利益のほか、政府が提供する公共サービスなどが含まれます。

経済が成長すると、消費者の信頼が高まり消費が増加します。この消費の増加は、企業の売上を押し上げ、結果として利益が増加します。企業はこの利益を再投資して、新たな設備投資や雇用の拡大を行うことで、さらなる経済成長を促すという好循環が生まれます。

・GDPの計算方法
GDPは、次のように算出されます。

GDP=消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)

消費:家庭が商品やサービスに使った金額
投資:企業が新しい設備や建物に使った金額
政府支出:政府が公共サービスやインフラに使った金額
輸出:商品やサービスが海外で販売された金額
輸入:海外で生産された商品やサービスが国内で消費された金額

消費、投資、政府支出が増えるとGDPも増加し、逆に輸入が増えるとGDPは減少します。輸出が増えると、国内で生産された商品やサービスが海外で売れるため、GDPが増加します。

・三面等価の原則
GDPを理解する上で役立つ考え方に「三面等価の原則」があります。
これは、GDPを生産、支出、分配の3つの側面から見たとき、どの側面から計算しても同じ金額になるというものです。

例えば、自動車の製造で考えてみます。

生産面:自動車メーカーが車両を生産し販売することで得られる収益
支出面:消費者や企業が商品やサービスに対して支出した金額
分配面:生産活動から得られた収入が労働者の賃金、企業の利益、政府の税収などに分配される

生産が増えれば支出が増え、支出が増えれば分配が増えるという経済の循環が成り立っているため、3つの側面から算出されるGDPは常に一致するのです。

GNP(国民総生産)とは?GDPとの違い

GDPと似た言葉にGNP(Gross National Product;国民総生産)(以下GNP)という指標があります。GNPは、国民が生産したすべての商品の価値を示します。「国民」とは、その国の国籍を持つ人々を指し、国内外での活動が含まれます。

GNPは、国民の生産活動に焦点を当てたもので、国内外での日本人の活動を含むのに対し、GDPは、国内での生産活動に焦点を当てたもので、外国企業の日本国内での生産活動の収益も含む一方で日本企業が海外で行う生産活動の収益は含まれません。

例えば、日本人の野球選手が米国のメジャーリーグでプレーして得た収入は、日本のGNPには含まれますが、日本のGDPには含まれません。外国籍の選手が日本のプロ野球で得た収入は、日本のGDPには含まれますが、日本のGNPには含まれません。

GNPはGDPに海外からの純所得を加えたものと考えることができ、具体的には次のように表されます。

GNP = GDP + (海外からの純所得※)

※国民が海外で得た所得を加え、外国人が国内で得た所得を引く。

日本の多くの企業は海外に進出しており、特に製造業やサービス業は海外市場で収益を上げています。GNPは海外で生産した製品の収益も含まれるため、国民の経済的な豊かさをより正確に反映する指標といえます。

一方、GDPは国内経済の成長度合いを示す指標として重視されています。

GDPの種類

GDPには主に次の2つの種類があります。それぞれの特徴を見てみましょう。

・名目GDP
名目GDPは、実際に取引された価格を基に計算されます。そのため、物価の変動(インフレやデフレ)の影響を受けます。
例えば、ある年にパンの価格が上がった場合、その年の名目GDPは前年よりも高くなるかもしれませんが、それが実際の生産量の増加によるものなのか、単に物価が上昇したためなのかは分かりません。

・実質GDP
実質GDPは、物価変動を調整したGDPで、経済成長の実態をより正確に反映します。
実質GDPは、基準年の価格を用いて評価します。
これにより、物価の影響を排除し、実際の生産量の変化を把握することができます。

実質GDPは、名目GDPをGDPデフレーター(※)で割ることで求められます。 例えば、名目GDPが264万円で、GDPデフレーターが1.1の場合、実質GDPは以下のように計算されます。

264万円÷1.1=240万円

※名目GDPと実質GDPの比率を示す指標で物価の変動を把握するために使われます。具体的には、名目GDPを実質GDPで割ることで算出されます。この指標は、経済全体の物価動向を把握するために用いられ、GDPデフレーターが、1以上あれば物価が上昇していることを示し、1未満であれば物価が下落していることを示します。

経済成長を評価する際には、経済の実態をより正確に反映する実質GDPの動向を注視します。

GDPが変化する要因

GDPは次のような要因によって変化すると考えられます。

1. 人口の増減
人口が増えると労働力が増え、より多くの人々が経済活動に参加します。それにより商品やサービスの生産が活発になります。若い世代が多い国では経済が活性化しやすいのですが、少子高齢化が進むと働く人が減り、GDPも減少する傾向があります。

2. 投資の変動
企業の設備投資や住宅投資はGDPに大きな影響を与えます。
新しい工場や機械の導入により生産能力が向上し、関連産業も活性化します。
これにより経済全体が潤い、GDPが押し上げられます。

3. 消費の変化
個人消費はGDPの中で最も大きな割合を占めています。
私たちが日常的に行う買い物やサービスの利用が、経済の動向を大きく左右します。

4. 物価の変動
物価の変動もGDPに影響を与えます。
インフレが起こると、名目GDPは増加しますが、実質GDPは物価の影響を受けないため、経済の実態を反映しません。物価が上昇しても生産量が変わらなければ、実質GDPは変化しません。したがって、インフレやデフレが名目GDPと実質GDPの差を生む要因になります。

これらの動きを追うことで、経済の変化に柔軟に対応することができ経済状況の先行きを予想しやすくなります。

投資家はGDPをどう活用する?

経済成長に伴い企業の利益が増加すると、株価が上昇する傾向があります。
特に、GDP成長率が高い国では消費が活発化し、企業業績も向上するため、株式市場にもポジティブな影響を与えることが多いです。
このことからGDPの成長が期待できる地域は投資妙味があると考えられます。

2024年の世界のGDPランキングを見てみましょう。

<2024年世界の名目GDP 国別ランキング>


2024年世界の名目GDP 国別ランキング

出所:国際通貨基金(IMF)2025年4月版

<2024年世界のGDP国別比較>


2024年世界のGDP国別比較

※図は筆者が作成

日本は2023年まで世界第3位でしたが、2024年にはドイツに抜かれ4位に転落しています。さらに、2025年4月にIMF(国際通貨基金、以下IMF)から発表された世界経済見通しによれば、2025年に日本の名目GDPはインドに抜かれ5位にランクを落とすと見られています。このランキングの変動は、国際的な経済環境の変化を反映しています。

2025年の世界全体の成長率が2.8%(※)であるのに対して、インドは6.2%と予測されています。これは主要な先進国や新興国の中で最も高い成長率です。インドは世界第2位の人口を有し、急速に中間所得層が増加しています。このため、内需の拡大が期待され、投資家にとっても魅力的な市場といえます。セクター別に見ると以下のような産業が注目されるでしょう。

(※)実質GDP年間の変化率 国際通貨基金(IMF)2025年4月世界経済見通しより

<経済成長や消費動向に密接に関連したセクター例>


経済成長や消費動向に密接に関連したセクター例

※画像は筆者が作成

ただし、投資判断においてGDPの数値に過度に依存することは避けるべきです。
GDP成長率が高い新興国は、政治的リスクや地政学的リスクが高いと考えられます。
投資先を考える際、GDPの成長が著しい国を含めた世界全体に目を向けることで、世界経済の成長に沿った中長期的な収益を期待することができるでしょう。
地域分散や他の経済指標との組合せにより、総合的に判断することが大切です。

豊かさを示す経済指標

GDPは、経済活動を測る指標ですが、家庭内労働やボランティア活動など、市場で取引されない活動は含まれていません。
世界では「Beyond GDP」という考え方が広がっており、代替指標の必要性が高まっています。
代替指標とは、単に経済の大きさを示すGDPだけでなく、国民の幸福や健康、教育、環境などより広い視点から豊かさを測ることを重視するものです。

OECD(経済協力開発機構)が提唱する「Better Life Index」は、収入・健康・教育・環境などを組み合わせ、より包括的な豊かさを示す指標の構築が進んでいます。
日本でも「Well-being」という観点から、GDPを補完する指標「Gross Domestic Well-being(GDW)」「地域幸福度指標(Regional Well-Being Index)」が注目されています。

投資を考える際には、経済の成長だけでなく、国民の生活の質や幸福度も重要です。
健康や教育に力を入れている企業や地域は、将来的に持続可能な成長が期待されます。
このように、経済指標の背後にある人々の生活や幸福を考慮することが、投資においても重要な視点となります。

執筆者:村松祐子

村松祐子


ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)。金融・証券インストラクター。 1987年より、大手証券会社において外国株式の東京証券取引所上場に際し、販売促進に携わる。資料作成、および、顧客向け株式セミナー、社内勉強会の運営に従事。1990年より富裕層向け資産運用コンサルティングに従事したのち、 株式調査部に転籍、経済・株式の調査を経験、機関投資家向け週間マーケットレポートの作成に携わる。資産運用の相談、経済・市場調査の経験を踏まえ、それらを総括したサービスを提供するFPへ転身。現在、資産運用・株式投資の個人レクチャー、セミナーのほか、ライフ&マネープラン相談を実施している。一人ひとりに合った資産形成の提案には定評があり、自立した個人投資家の育成にも力を入れている。『FPコスモス』代表。

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