「いつか戻る」は危険!投資の損切りルールで資産を守る方法とは 「いつか戻る」は危険!投資の損切りルールで資産を守る方法とは

「いつか戻る」は危険!投資の損切りルールで資産を守る方法とは

投資をする上で避けられない「含み損」とは

投資を行う上で、値動きを避けることはできません。しかし、値下がりしたときに、「いつか戻る」とそのまま放置してしまうと、気付いたときには大きな損失になっていることもあります。保有資産の現在の評価額が購入時よりも下がっている状態を「含み損」といいます。

その含み損が出たときの対処法のひとつに「損切り」があります。
今回は、投資における「含み損」や「損切り」、その対処法としての「損切りのルール」、投資における心理的な要因について解説します。

景気や経済状況の変化、投資家の心理など、様々な要因が絡み合って株価は常に変動しています。ただし、実際に売却するまでは、損失は確定しておらず、あくまで含み損を抱えている状態です。
例えば、1,000円で購入した株が、現在の市場価格で900円になっている場合、100円の含み損が発生していることになります。この時点では、株を売却しなければ損失は確定しませんが、このまま下がり続けた場合、さらに大きな損失につながる可能性もあります。

もし、含み損が出てしまったら、どのように対処したらよいのでしょうか?
含み損を抱えた場合、売却をするか、そのまま保有し続けるかを選択する必要があります。購入した時よりも価格が上がるのをそのまま待ちたいという気持ちもわかりますが、時には売るという決断をすることも大切です。
投資で損失が発生した際に、売却して損失を確定させることを「損切り」といいます。

含み損対策としての「損切り」とは?~損切りのメリット~

損切りは、含み損を抱えてしまったときに、さらなる損失を防ぐために、また損失を最小限に抑えるためにも重要な戦略といえます。
損切りを行うことで、どのようなメリットがあるかを確認しておきましょう。

メリット① さらに損失が拡大する可能性を避けることができる

損失が発生している資産を長期間保有し続ける状態を「塩漬け」といいます。損切りをせずに塩漬けにすると、損失がさらに拡大するリスクがあります。

メリット② 次の投資機会に資金を回すことができる

資産を長期間保有し続けていると、当然、その分の資金は拘束されています。新たに有望な投資先を見つけた場合、損切りをすることで、その売却資金で有望な投資先に資金を投入することもできます。

<例>損切りをした場合と、損切りをしなかった場合の比較


<例>損切りをした場合と、損切りをしなかった場合の比較

※上の図は筆者が作成

メリット③ 損失を抱えたストレスから解放される

損失が発生している資産を長期間保有し続けることは、心理的なダメージがあるものです。損切りをすることで、そのストレスから解放されることもメリットのひとつといえるでしょう。

初心者が陥りやすい、損切りの心理的ハードル

投資を続けていく上で「損切り」は大切なポイントなのですが、特に投資の初心者は、迷いや不安から含み損を抱え続け、大きな損失につながってしまうことも少なくありません。背景にある様々な心理的要因を探ってみましょう。

「損失を回避したい」という心理(損失回避性)

私たちには、得することよりも損することを避ける傾向があります。これを損失回避性といい、「利益の喜び」よりも「損失の痛み」を強く感じる心理からきています。また、実際の損得と心理的な損得とは一致しない(異なる)ことがあり、こうした非合理的な判断の傾向は、プロスペクト理論として行動経済学で体系的に説明されています。この損失回避性により、できるだけ損失を避け、損失を確定させる「損切り」をせずに、そのまま持ち続けるという選択をしがちです。

<主観的価値と客観的価値を表したプロスペクト理論による価値関数>


主観的価値と客観的価値を表したプロスペクト理論による価値関数

※上の図は筆者が作成

「いつかは戻る」と考えてしまう心理(正常性バイアスと感応度逓減性)

正常性バイアスとは、予期しない事態に直面すると、心の平穏を守るために「正常」と認識してしまう心理的メカニズムで、都合の悪い情報を無視したり過小評価してしまう現象です。「今は一時的な下落だから、そのうち戻る」と楽観視してしまうために損切りができないといわれています。
また、利益や損失は金額が大きくなるほど、変化への感覚がにぶるという心理の特徴(感応度逓減性)があります(図参照)。損失が大きくなればなるほど、リスク管理を怠り、そのまま放置してしまいがちです。

「手放したくない」という心理(保有効果)

自分が所有したものを、実際の価値よりも高く見積もったり、高い評価をしてしまう現象を保有効果といい、一度手に入れたものは手放し難くなります。
そのため、一度購入したものは、含み損がある状態でも、手放せなくなってしまいます。

ナンピン買いの罠(サンクコスト効果と追認バイアス)

株価が下がったときに、さらに同じ銘柄の株を買い増して平均購入単価を下げる投資手法を「ナンピン買い」といいますが、損切りをしないだけでなく、その含み損を抱えている商品をナンピン買いすることもあります。

この背景には、サンクコスト効果と追認バイアスという心理的な現象があるようです。
サンクコスト効果とは、すでに自分が投資したコストを惜しんで、合理的な判断ができなくなってしまう心理状態をいいます。これまでの投資コストを惜しむという気持ちだけで、根拠なく買増しをしてしまうようなケースです。

追認バイアスとは、都合のいい情報だけを追加で集めてしまい、都合の悪い情報を排除する心理です。含み損を抱えていても、「この銘柄は将来上がるはず」という都合のいい情報だけで、ナンピン買いしてしまうことが考えられます。

損切りルールを守って心理的負担を減らす

人は感情や心理に左右されるものですが、損切りをする上では、この感情をできるだけ排除できる仕組みを整え、冷静に判断することが大切になります。
そのために、損切りに関するルールをあらかじめ設定しておくとよいでしょう。

例えば、損失率や損失額を基準にして事前に損切りルールを決めておいたり、保有商品を見直すタイミングを決めて、そのタイミングで商品の見直しに合わせて損切りをする、テクニカル分析を活用して損切りラインを決めるなどが考えられます(表参照)。

一定のルールで自動的に損切りをするのであれば、逆指値注文を活用してもよいでしょう。

<損切りルールの例>


損切りルールの例

※上の表は筆者が作成

心理に惑わされず、冷静な投資判断を!

投資を続けていく上では、いかに損失をコントロールするかが重要なポイントとなります。
損失を確定する損切りには、心理的に難しい側面もありますから、自分なりに損切りのタイミングやルールを設定しておき、そのルールにそって冷静に対応することが重要です。

ただ、どうしても迷ってしまいルールが守れないこともあります。その場合はルールが守れない原因を分析し、その上で、ルールを見直して再設定するとよいでしょう。
また、投資経験者やFPなどの専門家に相談をし、第三者からの客観的な意見も踏まえてルールを設定することもひとつの方法です。
冷静な判断に基づいて、大切な資産を守っていきたいですね。

秋山友美

秋山友美


湘南・藤沢・茅ヶ崎の家計コーチ代表。
2005年よりファイナンシャルプランナーとしての活動を開始。
湘南に相談室を構え、20代から80代までの幅広い世帯に家計のアドバイスをおこなう。特に子育て世帯からの相談が多く、コーチングスキルも活かして女性の働き方や子育てなど総合的に相談にも乗っている。
家計相談、住宅購入相談、教育資金プランニング、退職後の人生設計、資産形成、保険見直しなど地域密着型の情報提供、アドバイスをしている。
男女共同参画センターや市町村主催の講座依頼が多数あり、家計管理やライフプラン、人生100年時代の資産形成、キャッシュレス決済などのテーマで講師としても活動中。また、地域情報誌にて「家計簿コーチング」連載中。

<保有資格>
CFP®(日本FP協会認定)(財)生涯学習開発財団認定コーチ
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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