グランビルの法則とは?
移動平均線は古くから統計分析に活用されていますが、米国の有名な証券アナリストであるグランビル氏が「グランビルの法則」を提唱したことによって、株式投資におけるテクニカル分析にも広く活用されるようになりました。
移動平均線そのものは、過去の株価の流れをもとに今後の傾向をつかむためによく利用されています。
移動平均線が右上がりなら株価は上昇傾向、右下がりなら株価は下降傾向と見ることができます。移動平均線には短期(5日など)、中期(30日など)、長期(100日など)があり、前提としている投資期間によって利用する移動平均線は異なります。
この移動平均線に株価の動きを重ねたときに示す信号によって、売り時なのか、買い時なのかを判断する目安として活用できるのが、「グランビルの法則」です。
グランビルの法則の8つの信号
グランビルの法則には、移動平均線に株価の動きを重ねたときに見えてくる8つの信号があります。買い時の信号と売り時の信号に分けて、それぞれの信号とその意味をご説明します。
<グランビルの法則の8つの信号>

※画像は筆者が作成
〇買い時の信号
買い時の信号は以下の4つです。
【買い時 信号1】
移動平均線が右下がりを続けたあと、横ばいか上向き状態で、株価が移動平均線を下から上に突き抜けたとき。
移動平均線が右下がりをしているということは、過去の株価が下落傾向にあるといえます。その移動平均線を株価の動きが突き抜けるわけですから、大きく上昇する勢いが予測され、重要な買い時と仮定することができます。
【買い時 信号2】
移動平均線が右上がりをしているところで株価が移動平均線を下回ったとき。
移動平均線が右上がりをしているということは、過去の株価が上昇傾向にあるといえます。株価の下落が一時的であれば、「押し目買い」のタイミングです。
【買い時 信号3】
右上がり中の移動平均線より上にあった株価が下落してきたものの、移動平均線を下回らずに再び上昇したとき。
移動平均線が右上がりしているということは、過去の株価が上昇傾向にあるといえます。株価が下落しても、その移動平均線を割り込まないということは、上昇傾向に変化がないため、比較的安値のときに買えるタイミングといえます。
【買い時 信号4】
右下がりを続けている移動平均線を、株価が下回って急激に下落したとき。
移動平均線が右下がりを続けているということは、過去の株価が下落傾向にあるといえます。しかし、株価の急激な下落の後は反発も予測されるものの、依然として下落傾向が予測されるため、短期的な買い時と仮定できます。
〇売り時の信号
売り時の信号は以下の4つです。
【売り時 信号1】
右上がりとなっている移動平均線が横ばいか下向きになったところで、株価が移動平均線を上から下へ突き抜けたとき。
移動平均線が右上がりとなっているということは、過去の株価が上昇傾向にあるといえます。その移動平均線を株価の動きが突き抜けるわけですから、大きく下落する勢いが予測され、重要な売り時になる可能性があります。
【売り時 信号2】
移動平均線が右下がりをしているところで、株価が移動平均線を上回って上がったとき。
移動平均線が右下がりをしているということは、過去の株価が下落傾向にあるといえます。株価の上昇が一時的であれば、「戻り売り」のタイミングかもしれません。
【売り時 信号3】
右下がりをしている移動平均線に向かって株価が上昇してきたものの、移動平均線を超えずに再び下がったとき。
移動平均線が右下がりをしているということは、過去の株価が下落傾向にあるといえます。株価が上昇しても、その移動平均線を超えないということは、下落傾向に変化がないため、信用取引でさらなる売り注文を出すタイミングといえるかもしれません。
【売り時 信号4】
株価が大きく上昇し、右上がりをしている移動平均線から大きく乖離したとき。
移動平均線が右上がりを続けているということは、過去の株価が上昇傾向にあるといえます。しかし、株価の急激な上昇の後は反発して下落することが予測されるため、短期的な売り時と仮定することができます。
グランビルの法則はシンプルだけど注意点もある
グランビルの法則の8つの信号は、とてもシンプルです。しかし、以下のような注意点もあります。
〇信号は遅れて出てくる
グランビルの法則の信号は、過去の株価の平均値を折れ線グラフ化している移動平均線を活用しているため、信号は遅れて出てきます。信号に気づいた時には、すでに取引のピークを越えていたという可能性も考えられます。グランビルの法則の信号は遅れて出てくるという点に注意しながら活用するようにしましょう。
〇投資スタイルや主観によって見極めが異なる
グランビルの法則は主観によって、見極めが異なる場合があります。
数ある移動平均線の中で、どの移動平均線を活用するのかは投資スタイルや主観によって異なります。また、移動平均線の角度を右上がりと見るのか、横ばいと見るのか、右下がりと見るのか、その判断には大きく主観が入ります。
このように同じチャートを見ていても、各投資家の投資スタイルや主観が各信号の見極めに影響するという点には注意が必要です。
〇株価の動きの予測が難しい
株価の動きについて大まかな傾向をつかむことはできても、細かな株価の動きを予測するのは困難です。そのため、株価の上昇や下落が一時的なのか、それとも継続していくのかを正確に予測することは難しいでしょう。
例えば「押し目買い」や「戻り売り」のタイミングとなる信号(買い時 信号2や売り時 信号2)を見極めるためには、株価の下落や上昇が一時的なのか否かを判断する必要があります。
過去のチャートから、「押し目買い」や「戻り売り」のタイミングだったなと検証はできます。しかし、実際には「押し目買い」や「戻り売り」のタイミングであったと思っても、そのまま株価が下落や上昇を続けるというケースもあります。
どれだけ分析を重ねても、株価の動きを正確に予測するのは難しいという点には注意をしておく必要があります。
〇すべての信号をキャッチするのは難しい
チャートを見ると、グランビルの法則の8つの信号は至る所に発見できることがわかります。
<チャートに現れるグランビルの法則の信号>

※画像は筆者が作成
しかし、そのすべての信号をキャッチして取引するのは、常にチャートに張り付いている必要があるため一般的には難しいといえます。
例えば、まずは重要な買い時、売り時としてご説明した「買い時 信号1」、「売り時 信号1」に注目するなど、自分はどの信号に焦点をあてて分析するのかを決めた上でグランビルの法則を活用してみるようにしましょう。
グランビルの法則以外にも目をむける
グランビルの法則は、とてもシンプルな分析手法ではありますが、信号が現れたからといっても必ずしも法則どおりの結果が生じるとは限りません。グランビルの法則に活用される移動平均線はあくまでも過去の株価の推移をもとにした株価の傾向です。また、株価はリアルタイムで動いており、企業業績のみならず、投資家心理や突発的なニュースなどが、大きな影響を生じさせる可能性もあります。
グランビルの法則は、取引における目安の一つです。グランビルの法則に限ったことではありませんが、テクニカル分析を行う際には、他の分析手法も組み合わせながら、冷静に自分なりの根拠をもって取引を実行する姿勢が大切です。