押し目買いとは?
株式の売買のタイミングを見極める手法の一つに「押し目買い」というものがあります。「押し目買い」とは、簡単に言えば株価が一時的に下がった時を狙って、買い注文を出すことをいいます。
株式投資において「押す」は、株価の下落という意味があります。継続的に上昇トレンドにある銘柄も、株価の上昇や下落を繰り返しながら上昇していくものです。ですから、株価が一時的に下がるタイミングがあり、それを「押し目」といい、そのときに株を買うことを「押し目買い」といいます。
「押し目買い」のメリットとしては、継続的に上昇トレンドにある株を一時的に下がったタイミングで購入するため、その後、再び株価の上昇が続けば利益を出しやすいという点が挙げられます。
一方、デメリットとしては、継続的に上昇トレンドにあるという予想が外れてしまい、思っていたような利益を出せない場合もあるという点です。「押し目買い」のタイミングを見極めるには、さまざまな指標を活用して判断をします。しかし、株価の動きには、投資家の不安心理や想定外のニュースなど、不確定な要素も影響するため、「押し目買い」のタイミングを正確に見極めることは難しいといえます。
押し目買いをするときの注意点とは?
実際に「押し目買い」を行う際には以下のような注意点があります。
●タイミングを見極めるためにはテクニカル指標などの知識も必要
先に解説したように、株価の動きには投資家心理など不確定なものも影響するため、「押し目買い」のタイミングを正確に見極めるのは難しいものです。しかし、チャートやテクニカル指標などを確認して、自分なりの「押し目買い」のタイミングの根拠を持つ姿勢を大切にしましょう。
・チャートをさまざまな期間で確認する
まずは、「押し目買い」を行おうとする銘柄について、株価の動きを確認してみましょう。さまざまな期間でチャートを確認すると、上昇トレンドにあるのか、下落トレンドにあるのかがわかるだけでなく、銘柄特有の株価の動きのパターンが見えてくる場合があります。
・トレンドラインを確認する
トレンドラインを確認してみましょう。トレンドラインとは、高値同士、安値同士を結んでチャート上に引く線のことです。株価の推移が上昇トレンドにあるのか、下落トレンドにあるのかを分析する際に活用されます。
上昇トレンドが発生していると感じた場合には、安値同士を結んでトレンドラインを引いてみましょう。そのトレンドラインまで株価が下がってきたときが「押し目買い」のタイミングといえます。
トレンドラインを引くことに慣れていない場合には、一定期間の株価の推移を見て、安値を全て結ぶように直線を引いてみましょう。
<トレンドラインの例>

例に挙げたチャートでは、トレンドラインまで株価が下がってきた後に、株価が上昇している様子がわかります。矢印で示した場所以外にも、同様の動きが見られます。
・移動平均線の動きを確認する
移動平均線の動きを確認しましょう。移動平均線とは、一定期間における株価の平均値を折れ線グラフにしたものです。移動平均線には、「短期移動平均線(5日など)」、「中期移動平均線(25日など)」、「長期移動平均線(75日など)」があります。
上昇トレンドにある場合、移動平均線も上昇しています。その際、株価が移動平均線よりも上に振れようとしているときが「押し目買い」のタイミングといえます。
<移動平均線の例>

例に挙げたチャートでも、株価が移動平均線よりも下がった後に上に振れようとした後に、株価が上昇している様子がわかります。緑色の円で示した場所以外にも同様の動きが見られます。
また、移動平均線を活用する場合には、ゴールデンクロスにも注目してみましょう。ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が長期移動平均線を下から上に突き抜けていくときのことをいいます。ゴールデンクロスが生じるときは、上昇トレンドに入った可能性があります。「押し目買い」のタイミングを見極めるときにも意識しておきましょう。
●高値で株を取得するリスクがあることを知っておく
「押し目買い」には、高値で株を取得するリスクがあることに注意しましょう。チャートやテクニカル指標等を確認し、上昇トレンドであると予想した場合でも、必ずしもその通りに株価が推移するとは限りません。根拠を持ってタイミングを見極め、「押し目買い」を行っても、すぐに下落トレンドとなってしまう可能性もあります。
●「だまし」があることを知っておく
「だまし」とは、指標が取引のタイミングを示しているのに、予想通りに株価変動が起こらないことをいいます。指標を確認する期間が短いと「だまし」が出現しやすくなりますので、さまざまな期間のチャートで分析するようにしましょう。
合わせて知っておきたい「戻り売り」
「押し目買い」と合わせて知っておきたい手法に、「戻り売り」があります。
「戻り売り」とは、株価が継続的に下落トレンドにある中で、一時的に株価が上昇するタイミングで売り注文を出すことをいいます。「押し目買い」の逆手法になりますが、主に空売り(株を借りて売却する方法。決済期日までに株を安く買い戻すことで利益を狙う方法)で使われる手法になります。
下落トレンドが継続している中で、一時的な株価の上昇のタイミングで株を空売りした後、再び下落トレンドが継続したときに安く株を買い戻せれば利益を出すことができる点が「戻り売り」のメリットです。
一方、継続的に下落トレンドにあると予想しても、その予想通りに株価が推移しない場合もあります。予想通りに株価が下落しなければ、安く株を買い戻すことができず、利益が出ない可能性もあります。
失敗したときの対応はどうしたらいい?
「押し目買い」を行っても、必ず成功するとは限りません。もし、「押し目買い」を行った後に「失敗した!」 と感じた場合、どのような対応すればよいのでしょうか。
●売却を検討する
「押し目買い」で失敗した! と感じたときには、売却を検討しましょう。売却して、損失を確定させて気持ちを切り替えたほうがよいとわかっていても、「今回は、予想に反して上昇トレンドに戻らなかったものの、また上がるかもしれない」と、売却による損失確定をせずにずるずると売り時を見失う可能性もあります。そうならないためにも、「押し目買い」をする前に、失敗した場合の売却ラインをあらかじめ決めておくことが大切です。
●損失が出たとしても慌てない
失敗した!と感じても、慌てず、冷静な行動を心がけましょう。損失を急いで取り返そうとするかもしれません。しかし、慌てているときには冷静な判断がしづらくなり、さらに失敗を重ねて損失が膨らんでしまうことにもなりかねません。
多くの投資家が活用している「押し目買い」の手法ではありますが、「押し目買い」にかぎらず、株式投資に絶対はありません。どれだけチャートやテクニカル指標を確認しても、予想に反した値動きをすることもあると認識しておきましょう。もしも失敗してしまったと感じた時にも慌てないように、前もって売却などのマイルールを決めたり、余裕資金で投資をするという意識をもったりすることも、考えておきたいですね。