「ラッセル2000」に投資をしよう 「ラッセル2000」に投資をしよう

「ラッセル2000」に投資をしよう

小型株に注目!「ラッセル2000」とは?

米国株式の指数といえば、NASDAQ、NYダウ、S&P500などが有名ですが、これらの指数は時価総額が大きい銘柄、いわゆる大型株が大半を占めるため、大型株の値動きに左右されがちです。

一方で、大型株を含まない小型株を中心とした指数もあります。特に注目されているのが「ラッセル2000」という指数です。「ラッセル2000」は、1936年にフランクラッセル氏が米国で創業したラッセル社が提供している指数の一つです。

同社は「ラッセル・インデックス」と呼ばれる主に米国市場を対象とした株価指数を提供しており、「ラッセル2000」以外にも、米国市場の時価総額上位3000銘柄を対象とする「ラッセル3000」、その中の上位1,000銘柄を対象とする「ラッセル1000」といった大型株を含む指数も提供しています。これらの株式指数は、時価総額などのルールに基づいて毎年6月に銘柄の入れ替えを行います。

小型株で構成されている指標には、「ラッセル2000」以外にも、スタンダード&プアーズ社が提供している「S&P小型株600」があります。「ラッセル2000」は時価総額に基づいて、機械的に銘柄が選択されるのに対し、「S&P小型株600」は、企業の収益性や安定性などをスタンダード&プアーズ社が厳格な基準で選定しています。「ラッセル2000」は、「S&P小型株600」と比べると、より広範囲な小型株全体を網羅しているため、ETFやインデックスファンドの指標として広く利用されています。

<図表① 米国株式の指数>


米国株式の指数

※上記の図表は筆者が作成

「ラッセル2000」の過去のパフォーマンスは?

「ラッセル2000」の過去の動きを見てみましょう。

図表②のチャートは、「ラッセル2000」を対象としたETFである「iShares Russell 2000 ETF」(ETF:IWM)の動きです。これはNY証券取引所に上場しているETFで、日本においても米ドルベースで1株単位から購入可能です。

比較のために、もう一つの「SPDR Portfolio S&P500 ETF」(ETF:SPLG)のチャート(図表③)も見てみましょう。こちらは、「S&P500」を対象としたスパイダー社のETFで、米国の大型株500銘柄に投資しています。

両者とも米国株式を対象としているため値動きは大きいのですが、その特徴に違いがあります。

まず、小型株は、アメリカ経済の拡大局面で特に強いパフォーマンスを発揮します。2020年初めのパンデミックでは、どちらの指数も同様に大きく下落したのですが、その後、経済回復や政府の財政刺激策などにより急速な回復を見せました。特に「ラッセル2000」(ETF:IWM)は、「S&P500」(ETF:SPLG)に比べて回復の期間が非常に短いことがわかります。(図表②③の赤丸の中)
一方で、2022年以降の金利の引上げ局面でのパフォーマンスは米国株価全体が右肩上がりに上昇しており、「S&P500」がその動きをしっかり捉えて堅調に推移している(図表②③の赤矢印)にもかかわらず、小型株の上昇は少し弱いことがわかります。

<図表②iShares Russell 2000ETFの動き>


iShares Russell 2000ETFの動き

<図表③ SPDR Portfolio S&P 500 ETFの動き>


SPDR Portfolio S&P 500 ETFの動き

※月足表示、2024年10月4日まで

「ラッセル2000」に投資するメリット・デメリット

では、「ラッセル2000」に投資するメリットは何でしょうか。
一般に、小型株は景気の回復局面では大型株よりも株価の回復が早い傾向があります。これは、政府の景気刺激策が大きな影響を及ぼしています。
政府の景気刺激策は、国内経済の活性化を促すためのものなのであり、海外に事業展開をしている大企業より、国内市場に依存している小規模の企業が多い小型株には追い風となることが多いのです。
パンデミックの際には、中小企業向けに給付金や給与保護プログラムなどの財政支援がなされ、小型株市場は急速に回復しました。
さらに、景気刺激策としては金利の引下げも行われますが、金利低下局面においては、そもそも財政基盤が強くない小規模企業は、資金調達がしやすくなります。これは、事業拡大のチャンスとして捉えられ、今後の業績拡大期待による株価上昇につながりやすいのです。
また、金融市場全体の流れにとっても、低金利が続くとリスク資産への資金流入が増える傾向にあるため、大型株よりも小型株へ、先進国よりも新興国などリスクが高い市場へとお金が流れ、結果として小型株の株価上昇につながります。 これらのことから、景気回復局面では小型株に特化した「ラッセル2000」に投資するメリットがあるといえます。

一方、デメリットもあります。

景気の過熱やインフレが進む局面では、小規模企業にとっては厳しい状況になります。
原材料価格が上昇すると、小規模企業は大企業に比べて規模のメリットがなく、値上げをするまでの体力(財務力)がないなどコスト管理が難しく、特に製造業はインフレの影響をより強く受ける可能性があります。
また、政府はインフレを抑制するために金利を引き上げます。金利上昇局面では、小規模企業では資金調達コストが上昇するため、設備投資がしにくくなるなど業績を伸ばすことが難しくなります。また、金利の上昇により借入金の返済額(金利分)が増え、大企業より体力がない小規模企業は業績が悪化しやすいと判断され、売られる傾向が強くなります。

金利上昇により投資家がリスク回避の姿勢を強める、いわゆるリスクオフとなった場合、小型株から資金が流出する可能性もあり、株価は下落傾向となります。このように行き過ぎた景気の過熱局面や景気後退期は小型株にとっては逆風となります。過去の値動きを見ても、大型株より小型株のほうが乱高下が大きい、つまりリスクが高いということになりますので、値動きを踏まえた上で投資判断をしてください。

冒頭でお伝えしたように小型株を対象としたインデックスには、「S&P小型株600」や、ほかにも「CRPS US small cap」 など多くのインデックスがあり、そのインデックスを参照するETFが数多く上場しています。ですから、小型株のインデックスに投資するのなら、「ラッセル2000」以外の小型株インデックスを参照するETFでもいいのでは、と思う方がいるかもしれません。

しかし、ETFは、出来高が少ないと、インデックスとのずれが大きくなったり、自分の売買したいタイミングに売買ができないこともあります。そういった意味では、業界内で小型株インデックスとして一番注目されている「ラッセル2000」のETFであれば安心でしょう。ただし、「ラッセル2000」を参照指数としているETFもいくつかありますので、投資の際は、出来高が少ないものは避けるようにしてください。

「ラッセル2000」を構成する時価総額上位銘柄

「ラッセル2000」においては、一つの企業またはトップ10の銘柄の占める割合が、ほかの株価指数ほど大きくはありません。
上位銘柄は下表のとおりですが、あまり聞いたことのない企業が多いかもしれません。

<ラッセル2000の上位銘柄>


ラッセル2000の上位銘柄

※出典:https://www.blackrock.com/us/individual/products/239710/


  • Vaxcyte,inc.(PCVX)
    カリフォルニア州のヘルスケア企業で、近年は感染症の予防または治療のためのワクチン開発などを行っています。現在NASDAQに上場しています。
  • FTAI Aviation Ltd.(FTAI)
    航空機や航空機エンジンなど、航空関連資産のリース・販売だけでなく、アフターマーケット部品の開発・製造・修理・販売なども行っています。
  • Insmed inc.(INSM)
    バイオ医薬品企業で、特に希少な肺疾患に焦点を当てた研究開発を行っています。
  • Sprouts Farmers Market,inc.(SFM)
    カルフォルニアを中心としたナチュラルスーパーマーケット。オーガニック、植物由来、グルテンフリーなど様々なライフスタイルに合わせた食品を取り扱う、健康志向の米国人に人気のお店で、近年、店舗数を伸ばしています。
  • Fabrinet(FN)
    高度な精密工学・電子・機械製造サービスを提供する企業。高い製造技術が求められる電子機器(擬態的には、光通信・車載・医療など)の受託生産を行っています。

このように、まだあまり知られていない小型株は、大型株に比べて大きな成長が期待できます。その分リスクもありますが、株価の上昇を期待して購入することも面白いでしょう。
ただし、海外の小型株の銘柄選定は、情報も少なく、とても難しいものです。
特になじみのない海外銘柄を購入するのは勇気が必要になりますので、「ラッセル2000」のような小型株インデックスに連動するETFを利用して投資を始めてみるのもよいでしょう。S&Pなどの大型株に投資をしている方にとっては、同じ米国株式でも株価の動きが異なるので、分散投資にもなります。

髙木典子

髙木典子

証券会社・銀行勤務を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立
個人のマネー相談だけでなく、大学の非常勤講師、専門学校・高校向けの授業、企業向けマネーセミナーや、PTA向けから子供向けおこづかい教室などのあらゆる世代の人たちに向けた金銭教育・投資教育を行い、中立公正な立場からお金についての知識を広げる活動を行っている。

保有資格
ファイナンシャル・プランナーCFP®
証券外務員
DCプランナー

合同会社HAL FP OFFICE

最短10分で申込み完了!
無料口座開設はこちら

ページの先頭へ戻る