年末調整&確定申告で損をしない!iDeCoの税制優遇活用術 年末調整&確定申告で損をしない!iDeCoの税制優遇活用術

年末調整&確定申告で損をしない!iDeCoの税制優遇活用術

iDeCoの仕組みとメリット

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、税制上のメリットを受けながら老後資金を自分で積み立てる私的年金制度です。税制優遇の一つである、掛金を拠出することで所得税や住民税の負担が軽減されるメリットを受けるためには、年末調整または確定申告での適切な手続きが必要です。今回は、iDeCoの概要やメリットをおさえたうえで、年末調整や確定申告の方法を確認してみましょう。

iDeCoとは、老後資金を準備するための年金制度

iDeCoは拠出した掛金を自分で運用しながら老後資金を準備する年金制度です。
職業や企業年金制度への加入状況によって掛金の上限は、会社員なら月2万(または2.3万円)、自営業は月6.8万円などと決められています。
この掛金を、運営管理機関(銀行や証券会社など)が提示する金融商品(定期預金・投資信託・保険など)の中から選択して運用していきます。
なお、原則として60歳までは引き出しができない点には注意が必要です。

iDeCoの特徴!3つの税制優遇

iDeCoは「拠出時」「運用時」「受取時」に税制優遇を受けられます。

・拠出時
掛金が全額所得控除の対象となるので、所得税や住民税の軽減効果があります。

・運用時
通常、運用により生じた利益には約20%の税金がかかりますが、iDeCoで運用して得た利益は非課税となります。

・受取時
60歳以降、運用した資産を受け取る際にも税制優遇があります。一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されることで、受取時の税負担が軽減されます。

所得控除による税額軽減効果とは

iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となりますが、そのためには、年末調整または確定申告をする必要があります。
所得税や住民税は、収入から必要経費や給与所得控除(給与を受けている場合)を差し引き、さらに所得控除(たとえば基礎控除や配偶者控除、扶養控除など)を差し引いた「課税所得金額」に税率を掛けて算出します。
iDeCoで掛金を拠出した場合は、その拠出した掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除となり課税所得金額を下げることができるので、所得税・住民税が軽減されます。

<税金がかかる仕組み>


税金がかかる仕組み

※画像は筆者が作成


たとえば、年収500万円の人が月1万円ずつ掛金を拠出した場合の控除額と、所得税・住民税の軽減額は、次の表のようになります。
年収と毎月の掛金に応じた、1年あたりの所得税と住民税の軽減額の目安(概算)もまとめましたので、参考にしてみてください。

<年収500万円の人が月1万円ずつiDeCoを拠出した場合>


<前提条件>
・給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除以外の控除は考慮していません。
・社会保険料控除は、年収の14.22% として計算しています。
・住民税額は、一律10%として計算しています。

年収500万円の人が月1万円ずつiDeCoを拠出した場合

※画像は筆者が作成

<1年あたりの所得税・住民税の軽減額の合計(概算)>


1年あたりの所得税・住民税の軽減額の合計(概算)

※概算値です。実際の軽減額と異なる場合があります。
※画像は筆者が作成

iDeCoの年末調整の方法と仕組み

年末調整とは

年末調整は、会社が給与所得者(会社員やパートタイマー・アルバイトなど給与を受け取っている方)に代わって1年間の所得税を精算する手続きです。
給与から毎月天引きされている源泉所得税は概算の額なので、年末調整で正しい所得税の税額(年税額)を計算し調整します。納めすぎた税金があれば還付され、逆に少なければ徴収されます。基本的には、会社員は確定申告をしなくても、この年末調整によって税金の精算が完了します。

年末調整でiDeCoの税制優遇を受けるには

年末調整の際に「小規模企業共済等掛金払込証明書」を添付して会社に提出します。「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、国民年金基金連合会から10月以降に送られてきます。なお、令和5年からはマイナポータルを連携して電子データを取得することができるようになりました。

年末調整の書類のうち、「給与所得者の保険料控除申請書」の「小規模企業共済等掛金控除」、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の欄に、前述の証明書に記載されている金額を記入します。その際、既に払い込まれた金額と、10月〜12月に払い込まれる予定金額も併せた合計金額を記入します。

<給与所得者の保険料控除申告書 見本>


給与所得者の保険料控除申告書 見本

※出典:国税庁(令和6年分 給与所得者の保険料控除申告)

証明書を紛失した場合の対処法

万一、証明書を紛失してしまったら、運営管理機関に再発行を依頼します。ただし、再発行には2週間から3週間程度かかるといわれていますので、年末調整に間に合わない可能性もあります。その場合は、確定申告が必要になります。

確定申告でiDeCoの所得控除を申告する

年末調整を行わない自営業など国民年金の第1号被保険者や、60歳以降に国民年金保険料の支払いをしている任意加入被保険者は、確定申告でiDeCoの所得控除を申告します。
また、会社員で確定申告をしている場合(医療費控除などを行うケース)や、年末調整でiDeCoの掛金の所得控除の申告が間に合わなかった場合も確定申告で対応することができます。

確定申告でiDeCoを申告するには

確定申告は、1月〜12月の1年間の所得を計算し、納める税金(所得税)を確定させる手続きです。
申告期間は、通常、翌年2月16日から3月15日(※)ですが、納めすぎた所得税を還付する申告の場合は、翌年1月1日から提出することができます。

※令和6年分の申告期間は、令和7年2月17日(月)~3月17日(月)

①必要書類を準備する
小規模企業共済等掛金払込証明書、源泉徴収票(会社員の場合)、マイナンバーカードなどと、還付金を振り込む口座情報がわかるものを準備します。

②申告方法を選ぶ
●e-Taxで申告する(電子申告)
国税庁の確定申告書作成コーナーを利用して、インターネットで申告をすることができます。
マイナンバーカード方式またはID・パスワード方式でログインし、所得税の確定申告書作成コーナーへと進みます。そこで必要事項を入力した上で、送信をすれば完了です。スマホのカメラ機能で源泉徴収票を読み込めば自動入力されます。

●税務署で申告する(書面提出)
確定申告書を作成し、税務署の窓口に持参する、もしくは郵送により提出します。
申告用紙は、税務署や確定申告会場、申告相談会等の窓口で受け取ります。国税庁のWEBページからダウンロードして自身で記入することも可能です。ちなみに、前年に郵送または窓口で申告している人には、12月〜1月頃に税務署から申告書が送付されます。
国税庁の確定申告書作成コーナーで、入力フォームに従って必要事項を入力する、税務署の申告書作成会場にあるパソコンで作成をすることも可能です。

③申告の方法と還付
確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、送られてきた証明書に記載された金額(払い込んだ掛金の全額)を記入します。
なお、年末調整を受けた人が確定申告をする場合、優先されるのは確定申告の内容です。年末調整ですでに記載した内容も含めて、あらためて全ての収入や控除の記載が必要ですので、注意しましょう。
確定申告後、1~2か月後に還付金が指定口座に振り込まれます。

<確定申告書 見本>


確定申告書 見本

※出典:国税庁(令和6年分 確定申告書)

確定申告も忘れてしまったら?

iDeCoの掛金を拠出しているのに、年末調整や確定申告を忘れてしまっても、還付するための申告は、申告する年の翌年1月1日から5年間は受け付けられます。たとえば、2024年分のiDeCo控除を申告し忘れた場合、2029年12月31日まで申告が可能です。
ただし、この期間を過ぎると税制優遇を受けられなくなりますので注意しましょう。

iDeCoの税制優遇をしっかり活かそう!

iDeCoは、掛金が全額所得控除による所得税・住民税の軽減や、運用益の非課税など、税制優遇のメリットを受けながら、公的年金の上乗せとして自分で老後資金を準備するための仕組みです。
税金の負担を軽減しつつ、老後資金を準備することができますから、全額所得控除のメリットをしっかり活かしていただきたいと思います。

ただし、税制優遇というメリットがある一方で、60歳までは資金を引き出すことができません。その点も考慮したうえで、無理せずに、少額からでも掛金の拠出を続けることをお勧めします。

秋山友美

秋山友美


湘南・藤沢・茅ヶ崎の家計コーチ代表。
2005年よりファイナンシャルプランナーとしての活動を開始。
湘南に相談室を構え、20代から80代までの幅広い世帯に家計のアドバイスをおこなう。特に子育て世帯からの相談が多く、コーチングスキルも活かして女性の働き方や子育てなど総合的に相談にも乗っている。
家計相談、住宅購入相談、教育資金プランニング、退職後の人生設計、資産形成、保険見直しなど地域密着型の情報提供、アドバイスをしている。
男女共同参画センターや市町村主催の講座依頼が多数あり、家計管理やライフプラン、人生100年時代の資産形成、キャッシュレス決済などのテーマで講師としても活動中。また、地域情報誌にて「家計簿コーチング」連載中。

<保有資格>
CFP®(日本FP協会認定)(財)生涯学習開発財団認定コーチ
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)

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